正義について
正義という言葉を使う時には、注意を払う必要がある。というか、僕は軽々に使えないと思っている。
絶対的な正義というものはない。所詮は、相対的なものにすぎない。絶対的な正義もなければ、絶対的な悪もない。立場が変われば、ぜんぶひっくり返るものである。
昨今の中東情勢に関しては、「またか」という感じしかしない。イスラエルも、パレスチナも、どちらも自分たちが正しいと思っているだろうが、それも相対的な話でしかない。
大国もなかなか扱いに苦慮しているのが明らかである。
米国は、ユダヤ人が強い権力を有しており、ユダヤ人を敵に回したら選挙で勝てなくなるから、絶対にイスラエルに対して強く出れない。
英国などは、そもそも中東の混迷の原因を作った張本人であり、下手に関わると藪蛇になるから、あまり関わり合いになりたくないというのが本音であろう。
手塚治虫の『アドルフに告ぐ』という晩年の傑作漫画がある。ヒトラーがユダヤ人だったという話をベースに、アドルフという名前の2人の幼馴染が敵味方に分かれて争うようになり、最後の場面では、パレスチナ・ゲリラとイスラエル軍という敵対する立場で、1対1で殺し合いをすることになる。ネタバレになるので、これ以上は書かないが、勝った方も負けた方も、どちらも幸せにはなることはないし、争いは果てることなく続くという、救いのない結末で終わっている。
40年以上前に書かれた漫画であるが、いま読み返しても、内容的にはまったく古びてはいないし、古典としての価値を燦然と放っている。ここに書かれていることは、いまもまさに起きていることと同じだと思う。