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「マイナ保険証」について

現在の健康保険証が24年の秋にも廃止となり、マイナンバーカードに一体化されるという話については、前にも別の記事で紹介した。

本来、個々人に帰属するべき「PHR(personal health record)」が十分に活用できるようになること、またそれによって、重複投薬や重複検査が排除され保健医療支出の削減も可能となるという観点から、このこと自体は大賛成である。

問題があるとすれば、1つは医療機関の負担の問題、2つめは「医療記録」へのアクセス権限の管理の問題であろう。

医療機関の負担の問題については、マイナンバーカードで患者の保険資格を確認できる「オンライン資格確認」システムの導入が、20年9月に省令改正で義務化されたことにある。全国ほぼ全ての病院・診療所、歯科、薬局計21万施設が対象となり、期限は23年3月末までと随分と性急な話となっている。

カードを読み込む「顔認証付きカードリーダー」は無償支給されるが、専用端末購入、ネットワーク構築、運用サポート費用等は医療機関側の負担である。零細な町医者には馬鹿にならない。廃業するところも出てくるかもしれない。

尤も、この点に関しては、僕はあまり大した問題ではないと思っている。前にも書いたが、日本は医師が少ないわりに、民間の中小病院が多く、見せかけの病床数が過剰である。これを機に、中小病院が整理・淘汰されるのは仕方がない。

それよりも問題なのは、2つめの「医療記録」へのアクセス権限の管理の問題であろう。

読売新聞の記事によれば、医療のデジタル化で日本に先行するドイツでは、「資格確認」と「医療記録」へのアクセスを明確に切り離した制度設計を進めており、どちらもICチップ搭載の電子健康カードを使うが、「資格確認」はカードを窓口で読み取るだけ、一方で「医療記録」にアクセスする際は暗証番号の入力など厳格な認証を求め、患者自身がデータごとに誰にアクセスを許可するか設定できる仕組みになっているという。

「医療記録」はプライバシーそのものである。近所のかかりつけの医者に、過去の病歴や処方歴の全部は見られたくないと思っても、その判断を自分自身で行えないとなれば、やはり抵抗があると思う。そういうデリケートな部分に関するきめ細かい配慮とそれに基づく作り込みを抜きは避けて通れないのではないか。

だが、繰り返しになるが、総論としてはマイナンバーカードと健康保険証が一体化することに関して、何ら異論はない。本人確認資料としてかなり問題がある現行の健康保険証の不正利用だって撲滅されるであろうし、何よりも、「PHR(personal health record)」が、医療機関のカルテの中にバラバラに保管され、名寄せもされず、自分自身で活用できない状況から脱却して、自分たちの手元に取り戻せることの意義は大きい。


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