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古民家のリノベーションについて

築80年超の古民家を、住宅ローンまで組んで、新たに取得した話の続きを書いておきたい。

知り合いやら、ネットでやり取りした(今は、リフォーム専業の会社の比較サイトまである)業者やら、複数の「専門家」に現地を見に来てもらい、いろいろと提案やら見積もりやらを依頼している最中である。

それでわかったことの1つは、こういう昔の建物というのは、「伝統工法」と呼ばれる建築手法に基づいて建てられているということである。

「伝統工法」というのは、日本に古来から伝わる建築工法で、木組みの柔軟性を活かした木造工法を意味する。金物を使わず、木の特性を活かす仕口、継ぎ手で組み上げられており、柱の結合部がボルトなどの金物で固定されていないため、地震の際には建物全体がわずかに変形し、揺れを吸収・受け流す働きを可能としている。揺れのエネルギーを受け流す構造であるので、揺れの際には壁にひびが入ったり、瓦が崩落したりはするものの、揺れのエネルギーが許容範囲を超えた場合も、建物は大きく歪む物の、全壊倒壊しにくい特徴がある。神社仏閣の建造物をイメージしてもらうとわかりやすい。

これに対して、「在来工法」とは、建築基準法制定時に、戦後復興期以降の西洋建築のシンプルかつ大量生産の思想を取り入れた木造構造のことを意味する。「伝統工法」との大きな違いは、結合部にボルトやプレートなどの金物を使い、柱同士を強固に固定する。また、壁面に筋交いと呼ばれる斜めの板を通している事も大きな特長である。そのため、地震の際の揺れにはその堅牢さで真っ向から抵抗して、揺れの衝撃を受け流さず、受け止め耐える構造となっていることから、揺れのエネルギーが建物の抵抗力を上回ると一気に倒壊するリスクもある。

どちらもメリットもあればデメリットもある。建築の専門家(一級建築士とか)でさえ、真逆の意見を言ったりするから、我々のようなシロウトは、右往左往するばかりである。

いろいろな業者の話を聞けば聞くほど、何が正しいのか判断できず、沼にハマりそうな気配もしてきたのであるが、それはさておき、わかったことがある。

まず、リノベーションとリフォームは決定的に異なるということである。リノベーションというのは、基本構造の補強や修復にまで踏み込んで、建物の価値そのものを改良するところまで想定している。したがって、古民家としての住宅の耐震補強等まで視野に入れるのはリノベ業者ということになる。

ただし、「伝統工法」に対するスタンス・思想の違いによって、どうやって補修・補強するのかに関する具体的な取り組み方が大きく異なってくる。

リフォーム業者は、そういう建物構造に関する根本的なところにはタッチせず(というか、タッチするだけの知見を有さず)、単に表面的な改修・改装とか体裁面のお化粧のみに専ら関与することになる。

業者を呼んで話をしていると、リノベまで踏み込む覚悟がある業者なのか、リフォームにとどまらずリノベまで、しかも古民家のリノベまでやれる業者なのかは、おぼろげながらわかるものである。

リフォームだけにとどまらず、リノベまでやるとなれば、予算も確実に1ケタはね上がる。

先日、大阪府内某所にある築50年超の古い住宅を、賃貸物件として活用することを目的として修復したということで、内覧会が開催されていたので興味半分に参加してのであるが、ハッキリ言って、僕には何の関係もなさそうな物件であった。

建物自体は、70年代初めの高度成長期に日本中のあちこちで建てられたような普通の一般住宅である。それを表面的に内装を小ぎれいにしているだけ。主催者に確認したところ、耐震補強などはまったくやっていないし、そもそもやる気もない様子であった。

彼らの発想としては、できるだけ安い値段で小ぎれいにリフォームして、収益物件として高い利回りを稼ぎたいということであるから、目に見えないところにおカネをかけるだけ無駄なのである。どうせ自分が住むわけではないし、いくら耐震補強したところで、南海トラフ地震のような大地震が来たら、それに耐えられるかどうかなんて誰にもわからない。

僕としては、最終的に自分自身が住むことになる以上、そういう無責任な発想で片付ける問題ではないし、予算の制約はあるにせよ、可能な限り良心的な提案をしてくれる業者に依頼をしたいものだと考えるのは当然のことである。

もちろん、空き家のまま朽ち果てるよりは、こうやってリフォームして、誰かに住んでもらった方が社会的にも有意義なのであろう。だが、どうせならば、もう少し長期的な視点で取り組んでもらえたらと思う。

知人を介して、「全国古民家再生協会」という団体が存在することを知り、こちらに加盟している業者に現地を見てもらうことを考えている。

もしかしたら、ますます何が正しいのやら、いま以上に混沌として来るのかもしれないが、ここまで来たら、とことん悩んでみようと思う次第である。

この記事を読んでいる人で、古民家再生に関して知見をお持ちの方がいたら、是非ともご教示賜れれば幸いである。

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