不動産取引の合理化について
不動産業界は、アナログで労働集約的な体質が依然として残っているようである。すなわち、合理化・効率化を図る余地が十分にあるということになる。
コロナ渦を受けて、従来は対面でなければ絶対にダメであった不動産取引における宅建士による重要事項説明もリモートで対応可となった。必要十分な情報さえきちんと洩れなく提供できれば済むのだから、そもそも対面にこだわる必要などない。そんなことさえ、つい最近まで公式には認められていなかったような古い体質の業界ということである。
「RESTAR」(リスター、東京・港)というスタートアップ企業は法人向けに、不動産投資に必要な物件稼働率などを集約したウェブサイトを運営している。従来はアナログだった業界の情報収集手段を効率化し、顧客の人手や時間を売買業務に振り向けられるようにするのだという。
同社が運営する「REMETIS(レメティス)」というサイト上で、オンラインの地図上で選んだエリアの賃料相場や稼働率、法規制といった情報を閲覧できる。顧客の持つ情報を追加し、独自のデータベースを構築することも可能で、物件に関わる資料作成や調査の時間を従来に比べ9割ほど削減できるそうである。
こういう情報収集も、従来であれば、担当者が役所に行ったり、現地を訪問したりして、コツコツと地味な作業をやっていたと思う。そうした手間を省くことができるのは大きい。定額制のサービスというのも良い。不動産会社や金融機関など約140社が既にクライアントであるというのも理解できる。
円安の影響もあり海外の投資家による日本の不動産の「爆買い」がしばらく続きそうである。英語に対応したサービスも23年春以降に投入する計画とのことである。
不動産物件の臨検や内覧もリアルに現地に行くのが最善であることはわかるものの、ヴァーチャルな臨検や内覧も代替手段としてはきわめて有効であろう。機関投資家であれば、膨大な数の候補物件から実際の投資対象を絞り込むのであろうから、候補物件のすべてをいちいち現地調査していたら人手がいくらあっても足りない。ネットであればオフィスに居ながらにして、ほとんどのリサーチ業務が完結するようになるであろう。
Googleのストリートヴューとの連携についても、写真の撮影時期にもよるが、初動段階での現地調査では十分に利用可能であろう。
前にも書いたが、空き家、空き地の他、建物が老朽化して十分に土地のポテンシャルを有効に活用し切れていないような物件は東京や大阪の都市部においてさえ少なくない。そうした物件を抽出して、リサイクル、つまり活きた使い方が実現できるようにすることは社会的にも意義があるし、大きなビジネスチャンスになり得る。
旧態依然とした仕事のやり方が根強いローテク業界ほど、合理化・効率化による「伸び代」は大きい。
不動産業界などは、その典型と言えるであろう。
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