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手をつないで

玄関を出て、今日も当たり前のように手を繋ぐ。
私の右手は自然といつもの左手に収まり、どうでもいい話をしながらいつもの駅に向かう。

34歳と46歳になった私たちは、本日で結婚して10年目になった。
ずっと同じ人といるのは不思議な気分だ。

大学進学とともに一人暮らしを始め、大学を卒業してからも数年間、京都のヴィレヴァンで働きながら一人で暮らしをしていた頃に出会ったが、ふと気付いたら二人で住んでいる期間の方が長くなっていて驚いた。

ついつい“私なんか”と一緒にいてくれる人、と未だに思ってしまうところがあるのは、母親から「あんたなんか...」と子供の頃から呪いをかけられていたからか。
もうすっかり解けたはずなのに、「私なんかと一緒にいてくれてありがとう」と今でも言ってしまうことがある。

そんなことを言うたびに、面倒くさがらずにこにこしながら「“なんか”じゃないよ。こちらこそだよ」と言ってくれるから、私はこの人と結婚して本当に良かったと心から思っている。

「記念日だし、何か欲しいものはある?」と聞いてみたものの、特にないと言われたので無印良品のレトルトカレー数点とポタージュやお菓子を買った。

きっと喜ぶだろう。
基本なんでも「ウマイ!」だし、無印の食品は特にウマイのだ。

普段二人でいて何をしているかって、
近所で猫を見つけて喜んだり、真剣に漫画の話をしたり、もんじゃを食べたり、昼寝をしたり、そんな感じなのだから本当に子供みたいだと思う。
ただそんな日々が続いていることがとてもありがたく、こういった日常により自分が構築されていると感じる。

ふと見るとテーブルの上にはこぢんまりとしたかわいらしい花束が置いてあって、これを買いに行く姿を想像したらちょっと面白かった。

そろそろ小腹が空くだろうから、買ってきたお菓子を渡してこよう。

「ジジイとババアになるまでよろしくな」
と一言添えて。

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