日本のカレー

職場の近くにネパール料理屋さんがあって、そこをよく利用している。私はナッツアレルギーがあるからなかなか行けないんだけどね。美味しいものにはだいたいナッツが練り込まれているから。
『今日ヤバい奴にあった』というYouTubeチャンネルでインドの屋台や日常に触れた動画を観てそこから出版された本を読み、推しが出ているスパイストラベラーという番組を観て他のスパイス料理の奥深さを知った。その上でネパール料理屋さんで出されるカシミールナンに驚いたりする日々だ。サモサ好きだサモサ。あれもナッツペースト練り込んであるけどね……!
日本のカレーとは? って思ったんだけど、要するにカレールーを使ったあれのことだった。奥さまや子供さんが食べてみたいと言っている・自分でカレールー買ってもアレンジしちゃうんだって話を聞いた職場のスタッフが答えてきた。「あいつに作ってもらいなよ」……家庭用の両手鍋とカレールー。玉ねぎと人参ときのこ類。トマト缶とブロッコリー。鶏もも肉。何で私が渡されるんだよおかしいだろ。しかも完全にうちでカレー炊く時の材料じゃん。いつか話したよね確かにさ。カレーって何入れる? ルーはどこのやつ? ってさ、みんなで話したよ確かに。

よく覚えてるなぁ!!!

ブロッコリーは日本のアチャールにしてくださいってなんの事かと思ったら、胡麻和えだった。あなたはセサミシードをホールで炒りますね! って言われた。うちは生胡麻炒りますからね。よく覚えてるなぁ! セサミシードをホールでって面白い表現だね。きちんと硬いところだけ切り取った軸も茹でてまるっと胡麻和えにした。醤油はあご出汁醤油。胡麻多め。……これアチャール名乗らせてええんか?
いつものように人参は一部お花にして、ざっくり玉ねぎたくさん入れて、トマト缶の水分と野菜の水分でコトコトする。きのこはマッシュルームと舞茸としいたけとひらたけ。種類混ぜた方が美味しいらしいよきのこは。別でぱりっとさせたチキンを添えたい気持ちもあったけどそれは諦めた。ご希望はさりげなく作るおうちカレーらしいからね。お肉も煮溶けそうなくらいにして、カレールーを二種類混ぜる。煮汁にはハーブソルトとガーリックパウダーとパセリ。ブーケガルニは使いませんでした。そのまま冷蔵庫へ鍋ごと入れて馴染んでもらって出来上がり。
久しぶりにカレー作ったand白米炊いた。迷ったんだけどあのお店には日本米はないだろう。硬めに炊いた白米を一人分ずつアイラップに入れて、食べるごとにレンチンしてもらうことにした。自分でも少し食べてみたけど、まぁ及第点でしょうと結論づけた。久しぶりに食べたからちょっとお腹壊した……カレーって胃腸に重たいの忘れてたわ。

そして朝鍋ごと車で拾われて職場へ。何だこのシチュエーションは。いつも美味しいご飯を提供してくれる料理屋さんのためにここまでやるところは好きだな。好きだけど私はカレーがぎっしり入った鍋を持ってマンションの階段降りるのめちゃくちゃ大変だったよ……! 骨折してみなきゃわかんないことだなこれは。それも含めて楽しい。
開店直後の料理屋さんに鍋を渡す。冷え冷えなのに驚いていた。冷蔵庫から出してそのままだからね。アイラップご飯を見てはしゃいでいる。レンジアップしたご飯にカレーをかけて、まず一口食べたのは待機してたお子さんだった。でらかわちい。その後奥さま。oh! って言った後ご本人に皿が回った。あーあーあー、何言ってるかもう聞き取れないよ。うんうんどうやらお口に合ったんだね。作り方は紙に書くよ大丈夫だよ簡単だよ。あー胡麻和えね。甘いよね。セサミシード最高かい? 大丈夫ほらここに持ってきたよ。ジップロックに200gほど。そうそう炒って……そうそう。わーわー言うから普通にお客さんが気になってんじゃん。いや、みんなは食べ慣れてるから分けなくていいよ。やめな? あー面白いなぁ。こんなに喜ぶとは思わなかったな。

今日はみんな嬉しそうだ。最近いろいろあったから事務所が殺伐としてたけど、完全に和んでいる。おうちカレーの匂いってそれだけで心が子供に戻るよね。「美味しいものを食べさせるってそれだけでギフトになるよね」って聞いたことがある。一番分かりやすくて気持ちもこもる。作る工程でこちらは気が済んだりもする。やれることをやらせてもらえるのって、幸せだから。職場のみんなもそういう気持ちなんだろう。肉はどれでも大丈夫なのかとか、美味しい玉ねぎがいいよねとか、トマト缶はホールがいいかなとか、考えまくって買い物していたらしいことは聞いた。
悲しかったり落ち込んでいたりするひとりひとりを、ほぼ毎日美味しい料理で救ってくれるネパール料理屋さん。今回喜んでくれたから次はおでんかな? じゃないのよ職場の人たち……!
帰宅したら部屋はまだカレーの匂いに満ちているだろう。ほよほよとした気持ちで過ごせそうだな。

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