イタリアでラーメン
「あ〜 〇〇が食べた〜い!!」
みたいな感覚がないなあって自覚して数年は経ってると思う。美味しいものは好きだし、主人はシェフだし、食にこだわる友人もいるので食べたり飲んだりする機会はある方だと思う。
実家にいた頃も、母は手際もよく味付けも上手で失敗のような料理を食べた事がないし、バランスにもうるさかった。私が幼い頃から小さな家に似合わない大きなオーブンでパンやケーキ、ピザ等を作ってくれていた。
自由学園という私の母校では、毎日生徒が昼食を作っていたので、家でも外でも恵まれた食生活を送っていたと思う。
では何故食への拘りがなくなったのか?正確には美味しければ、なんでもいいという諦めかもしれない。イタリアは食に関してはとてもコンサバなので、基本的にはイタリアン、中華、近年増えた寿司以外の選択肢が小さな町にはない。
生春巻きやタイカレーは自分で作るしかないので、私は自分の店でもアジアの食材を取り扱っている。
それでも「どうしても〇〇が食べたい!」がなかったかを考えていて思い出したが、イタリアに住み始めて数ヶ月経った頃無性にラーメンが食べたくなった事があった。
実家でもお店でもラーメンを食べた記憶はあまりないので、特にこだわりは無いのだが、どうしても食べたくなって大学の昼休みに近くの中華料理屋に行った。
日本の中華料理屋ではないのでメニューにはもちろんラーメンなんてなくて、一生懸命説明して長い麺をスープに入れたものが食べたいと言ったら、スープにスパゲティを入れたものが出てきた。かなり微妙な一皿だったけど、断らずに作ってくれたので残さず食べたのを覚えている。
20年近く経った今、大きな街にはラーメン屋があるが、カップラーメンの作り方を日々説明するような、インスタントラーメンすらまだ浸透していないイタリアで、私の店にはきちんとスープからラーメンを仕込んで作りたいといって、材料を求める人が来店するので日本製のラーメン丼も取り扱っている。
1度も食べたことがない人には、日本人も使うんだしインスタントを試してみてはどうかと聞くが、首を縦に振ることはまずない。正直な所、そこまでの情熱には頭が下がるが、閉店間際に何が必要かから聞かれると、その後無事夕飯が食べられたのか気になってしょうがない。
あと結構よく聞かれるのが、「このパスタ入れていい?」と蕎麦やうどんを指す人。好きなパスタ入れればいいけど、中華麺ではなくそれを使うと料理名がラーメンではなく蕎麦やうどんになるという事を伝えるが、和風パスタやカリフォルニアロールが間違っている訳では無いしなあと思うと、どんな風に仕上がったのかとても気になる。
シエナも少し涼しくなってきたので、この秋はじっくり煮込んだスープで「あ〜また食べたい!」と思えるようなラーメンを作ってみようと思う。