かがちはかおる

BL小説書き。INTJ(16性格/ネット診断のみのため未確定)、3w4(エニアグラム/…

かがちはかおる

BL小説書き。INTJ(16性格/ネット診断のみのため未確定)、3w4(エニアグラム/ワークショップ受けたので確定)。 個人サイト:https://kaoruwonderland.wixsite.com/home

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こたつとノートパソコンと猫のマール【短編小説】

 そろそろあたたかくなってきたので、こたつの布団は片付けた。  冬の間、主に猫の寝床として大活躍してくれたこたつだが、春になれば普通のローテーブルに戻る。そこに座ってノートパソコンで原稿を書いていると、猫のマールがやってくる。マールはあぐらをかいた俺の膝に乗って、丸くなって、大抵すぐ寝てしまう。俺はしばらくマールをそのままにしておいて、脚が痺れてきたらどいてもらう。マールは不満そうに「まおー」と鳴きつつ、俺に寄りかかってまた眠る。  夏が来るまでは、そんな光景が繰り返される。

    • デスゲーム味で(レトルト三角関係)【#毎週ショートショートnote】

       はい! いまから御三方にはデスゲームならぬ関係修復ゲームをしていただきます!  赤井君、白川さん、桃田さん。  本日お呼びしたのは同僚一同の総意と思っていただいて結構です。赤井君と白川さんの場をわきまえないイチャイチャも桃田さんがそれ見てグギギしてるのもこっそり赤井君が桃田さんにも気のある素振りしてるのもひっじょーにウザいです。会社で何をやっとんねんお前ら。  なのでとっととその三角関係をなんとかしてくれないと3人まとめて加圧加熱殺菌してレトルトパウチに入れます。我が

      • ひととあらし【短編小説】

         いまから話すことは、与太話みたいなもんだから、聞いたら忘れてほしいんだけど。  ガキの頃、俺は田舎の村に住んでた。全部で1000戸もなくて、近所中全部親戚か知り合いかみたいな、狭くて古い村だ。まだゲームなんて一般的じゃない時代でな、ガキの遊びといえば川で泳ぐか、虫を捕まえるか、そんなようなことしかなかった。  学校なんて中学までしかない村だった。その中学校も、俺が村を出た後で廃校が決まったらしい。  進学する子は、町の高校に通った。家から通うのは大変だから町に下宿する

        • 愛読書3選。

          こちらの企画に参加させていただきます。 「特に感動した本を3冊」ということで、選んでみました3冊。 うち2冊はXあたりでさんざん言ってきたものです。 ①アーシュラ・K・ル=グィン『闇の左手』 私がこの世で最も愛する小説です。 初めて読んだ頃から変わらず愛し続けています。 紙で持っていたのに加え電子書籍化されるのもずっと待っておりまして、Kindle版でも購入しました。 SFですがさまざまな伝承や伝説、語り、予言などが登場するためファンタジー色も強いものかと思います。

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        こたつとノートパソコンと猫のマール【短編小説】

          #あなたへの5つの質問

          こちらの企画に参加します。 特にひねらず、設問にそのまま答えるかたちで。 Q.1 あなたがパートナーよりも先に亡くなったとしたら、残されたパートナーに、あなたに代わるパートナーと出会い、幸せになることを望みますか? それとも、ずっと自分がパートナーにとっての最後の人であることを望みますか? A.自分が死んだ後の現世には興味がないので好きにしてもらえればいいです。特に何も望みません。 Q.2 どんなに言葉を尽くしても、結論が出ないであろう哲学的なテーマについて語り合

          #あなたへの5つの質問

          落しものとも言いきれない(着の身着のままゲーム機)【#毎週ショートショートnote】

           突然だが、目の前に着の身着のままの男がひとり落ちていて、そいつがいきなり 「僕はゲーム機なんです」 とか言い出したら、あなたはどうする?  俺は通報する。  警察官が来るまでの間、そいつは喋り続ける。 「ゲームのお好きな博士が、AIと会話しながらゲームするべく僕をお作りになりました。どの媒体のゲームでもプレイ可能なんです。見てください」  と言ってそいつが見せたうなじには、確かにスロット様の細い穴とケーブル接続の端子がついていた。 「嘘でしょナニコレ」 「です

          落しものとも言いきれない(着の身着のままゲーム機)【#毎週ショートショートnote】

          戦場のマザー・グース(強すぎる数え歌)【#毎週ショートショートnote】

          ひとつ、ひとりでねむらない ふたつ、ふりかえらない みっつ、みつからないように よっつ、よるまでかくれて いつつ、いきをひそめて  私が歌ったのを、隣の子が聞いていた。眠っていると思っていたのに。充分小さな声だと思っていたのに。 「なあに、その歌。ちょっと不気味ね」  不気味なのはあなたの顔だ。幾重にも巻かれた包帯で、目しか見えない。 「お兄ちゃんが教えてくれた。お化けを追い払う歌だって。でも、最後まで歌っちゃいけないの」 「どうして?」 「お化けが来るから」  扉

          戦場のマザー・グース(強すぎる数え歌)【#毎週ショートショートnote】

          頭人間が思うこと

          このところ考えている。 好きなキャラクターを3人だか5人だか挙げるとその人の好みの傾向がわかる、みたいな話を聞くが、私は強烈な「頭食い」である。 思考し続けるキャラクターが好きだ。 知識を愛し、データを集め、分析し、予測し、行動する。そこに一切の感情を挟まない。 論理的な思考に感情を排したような冷静さ、非情であればあるほどいい、むしろ「人間の感情なんて理解できない」くらいに思っていてほしいし、その上性格が歪んでいれば最高だ。 なんなら「機械」とまで言われるくらいがいい。

          頭人間が思うこと

          恋を偲ぶ(忍者ラブレター)【#毎週ショートショートnote】

           その男の名は知らなかった。相手は忍びである。父の命に従って敵国へ旅立ち、情報を集め、あるいは暗殺を行うのが役目であったから、名を明かすわけにはいかなかったのだ。  父が亡くなり、跡目を継いで初めてその男と対峙した。それまでは父と短く言葉を交わす姿を、それも遠目でしか見たことがない。こちらまで射抜かれそうな、鋭いまなざしの男だった。  男は父からの最後の命を果たすと言った。こちらが止めるのも聞かず姿を消し、戻ってきたのは苦無のみだった。  仲間が持ち帰ったものらしい。敵

          恋を偲ぶ(忍者ラブレター)【#毎週ショートショートnote】

          心の栄養(数学ダージリン)【#毎週ショートショートnote】

           彼は塾に通ったことがないそうだ。「自分でできるから」「周りに合わせるのが苦痛」「時間の無駄」とその理由を言った時の、怪訝そうな顔が忘れられない。なぜそんな当たり前のことがわからないのだと言いたげだった。  「試験勉強してる?」と訊かれ、同じ顔で「してるけど?」と問い返す彼は、高校二年のいまではすっかり変人扱いされていた。休み時間にまで教科書や参考書を広げ、勉強し続けている姿を見れば、それも仕方がない。あれで彼は「いい大学に入りたい」とはどうやら思っていなくて、ただ一途に、

          心の栄養(数学ダージリン)【#毎週ショートショートnote】

          #哲学問題私の答え

          フォローしている方が参加なさってらしたので。 こちらの企画に参加します。 なんとも答えづらい問題だなあと思いました。 「倫理」というからにはおそらく「善悪」を答えるべきなのでしょうが、善悪の基準ってなんなんでしょうね。 私は善悪というベクトルではあまりものを考えないので、どうにも考えづらいのですけれども。 「倫理」というと「倫理ぃ…倫理倫理ぃ…」という動画しか思い浮かばない。 冗談はさておき。 設問で示されている「善悪」の基準は ●復讐は悪である。 これしかありませ

          #哲学問題私の答え

          秋など幻想なのだ(秋の空時計)【#毎週ショートショートnote】

           北国には秋など存在しない。  今年は例外的に暑さが長引いたから、余計にそう思う。ここは一年の半分近くを雪に閉ざされる極寒の地である。秋だねと言い始めたらあっという間に冬が来る。十一月頭には初雪が降り、十二月には積もる。  九月も過ぎ、十月の声を聞けば、自動車を運転する者が考えることはひとつ。  いつタイヤを交換するか。  雪の降らない地方の方には馴染みが薄かろう。ここ北の国では、冬になれば路面は雪が積もり、固く凍りつくのだ。夏と同じ装備ではたちまち滑って大惨事である

          秋など幻想なのだ(秋の空時計)【#毎週ショートショートnote】

          幼さという檻【短編小説】

           噂話は嫌いだ。ほとんどの場合、それは誰かを傷つけるものであるから。  これまでの経験からエレミアはそう考えていたが、しかしメイドとは往々にして噂好きなものである。特に旦那様や奥様、三人いる坊ちゃまがたの噂は、彼女たちにとって何よりの娯楽だった。母を亡くした十一から勤め始め、二年が経つと、エレミアも主人家族のことはひととおり知るようになってしまった。  たとえばこうだ。旦那様は鳥の皮がお嫌い。奥様はこの世の何よりも小さな羽虫が怖い。その奥様の鏡台に芋虫を忍ばせたのは、一番

          幼さという檻【短編小説】

          こうるさい妖精(イライラする挨拶代わり)【#毎週ショートショートnote】

           ぱぁん! 「うわ! びっくりした!」  彼がとっても驚いてくれたので、あたしは満足。  鼻先で火花を散らしてやったの! 遊びにきたよって、あたしの挨拶代わり。 「ちょっと、やめろよ」  彼がしっしっと手を振る。いつもこうなの。ひどいと思わない? あたしのこと邪魔モノみたいに扱うんだよ。  だから、あたしは言ってやるの。 「なによ! こんなので怒っちゃって、ばっかみたい」 「そっちこそ、普通に来いよ」 「ふん!」  あたしはつんと顔を背ける。その拍子に、背中の

          こうるさい妖精(イライラする挨拶代わり)【#毎週ショートショートnote】

          一切皆苦【短編小説】

           同い年の従妹が急に亡くなった。ここらでは通夜の前に遺体を焼く。焼き場にも来てくれと叔母が言うので、俺と母さん、姉貴と甥とで一緒に行った。 「最後に顔を見てやって。きれいにしてもらったから……」  叔母が言い、小窓が開いた。知らない人みたいな、従妹の白い顔だった。大人になってからはほとんど会うこともなく、どんな娘だったのかもよくわからない。子どもの頃だって特に親しくはなかった。 「まだ二十八だったのにねえ」  母さんが呟く。  姉貴は何の言葉もなかった。四歳の甥は姉

          一切皆苦【短編小説】

          思い出よりも(チクタク水兵さん)【#毎週ショートショートnote】

           父親の記憶はほとんどない。アメリカ海軍の軍人だったらしい。周囲に反対されて入籍できず、俺が2歳になる頃には本国に帰ったのだとか。  5歳の誕生日に置時計が届いた。1時間ごとにセーラー服の水兵が出てきて敬礼するやつだ。カードがついていて、母親が読んでくれた。 「愛する息子へ。お誕生日おめでとう」  それっきり、父親からはなんの便りもなくなった。  たぶん、母親が結婚したせいだろう。それまで何度か会っていた男が新しい父親になり、水兵の時計は片づけるよう言われて、やがて弟

          思い出よりも(チクタク水兵さん)【#毎週ショートショートnote】