【小説】 猫と私 第4話
第4話
そんな事をしていると、
「はい、お待たせしました」
と言って、向かいの席にカレーが置かれた。そして私の目の前には、グラスに入ったお水が置かれた。
「お決まりですか?」
と聞かれて、慌ててオススメの一番人気のカレーを注文した。
向かいからは、とてもいい香りが漂ってきた。
あまりお腹は空いていなかったはずなのに、急にお腹が空いてきた。
私はジロジロ見ない様にさりげなく、チラリと向かいのカレーを見てみた。
とても美味しそうだった。
向かいの男の人は、礼儀正しく両手をきちんと合わせてペコリとして、食べ始めた。
口にカレーを運ぶと、うん。うん。と頷いていた。
とにかく美味しかったみたいだ。
納得の味らしい。
彼の口元には米粒が付いていた。
先ほどの不機嫌そうな顔とのギャップが、とても可愛かった。
こっそり笑ってしまった。
ずっと口元に付いているのに気付かず食べているから、教えてあげたくなってムズムズした。
程なくして自分にも同じカレーが運ばれてきた。
一口食べて彼が頷く様子に共感した。
多分、私も頷いていた。
来て良かった。
お宝を見つけた探検家の気分だった。
食べ進めると、口の中がピリピリしてきた。後から少し辛さがくるこのカレーは、とてもお水がすすんだ。
気がつくと私のグラスはほとんど空になりかけていた。
テーブルにおかわり出来る様にお水が置いてあったけれど、彼のほとんど真隣にあった。
私は手を伸ばす勇気が無かった。
お水は大事に少しずつ飲んだ。それでも、もう無くなってしまう。
そう思った時、向かいの彼が自分のグラスにお水を注いだ後、さりげなく私の近くに置き直してくれた。
何も言わずに置いてくれたけれど、彼はきっと良い人だ。
私は、助かった。と思いながら自分のグラスにお水を注いだ。
少し辛いけれど、美味しいカレーだった。
そして氷が沢山入ってキンキンに冷えたお水もいつもより美味しく感じた。