【小説】 白(シロ) もうひとつの世界 第25話
第25話
帰り道、すれ違う人たちが会話している声が僕の耳を掠めた。
道を歩く人、店先で話している人、友達同士での会話。単なる会話だ。けれど、そうだ、この違和感。
何かがこちらの世界に来た時から引っかかっていた。
僕が店に帰ると、意外な事にリリーが来ていた。
「おかえり。遅かったわね」
まさか、リリーが来ているなんて。僕に怒っていたんじゃ無いのか?
「怒ってなんかないわ」
その一言にギョッとした。
今日のリリーは、こちらの世界に来てすぐに会った彼女だ。
いちいち僕の心の声に反応してくる。
僕は、またおかしくなりそうだった。
けれど、はっきりした。さっきの違和感。
前にも同じ事が起こっていた。そうだ、彼女が現れる時は、決まって同じ数字をよく聞く。一とか百とか千とか。1と0だけで作られた数字。
何のルールだか知らないけれど、僕をからかっているならやめてくれ。
「……君は、誰?」
「誰って? 私は、リリーよ」
「リリーにそっくりだけど、偽物だろう?」
「偽物ってなに? 私は、私。どうしちゃったの、ジャン」
「それはこっちのセリフだよ!」
僕は、つい大きな声を出した。
「怒らないで。……ジャンは気づいちゃったのね」
「やっぱり、君はリリーじゃないんだね」
そう尋ねると、リリーの姿をしたその者は羽根を羽ばたかせ近くの棚へと腰を下ろした。
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