トマト大集合!2015.3.9 スープラボ・レポート
今回で5回目を迎えるスープ・ラボ。今回のテーマは「トマト」です。
えっ、トマトって夏の野菜じゃないかって?
実はトマトが一番おいしい時期は、春なんです。トマトはもともと、アンデス山地生まれの高原野菜。だから、あまり高温多湿の日本の夏には向きません。少し涼しい、今ぐらいの気温が一番よいそう。
と、いうことでトマトとトマトスープの食べくらべ、スタートです。
まずは、フレッシュトマト。今回、5種類用意しました。
右①大玉トマト(桃太郎)
中上②ミニトマト(アイコ)
中下③フルーツトマト(清涼)
左上④フルーツトマト(レトロトマト)
左下⑤中玉トマト(桃太郎)です。
④と⑤は神楽坂の美味しい八百屋・瑞花の商品。今回、店主の矢嶋文子さんが自慢のトマトを持って来てくれました!
今回の味見の基準は、もっともポピュラーな桃太郎。甘みと酸味のバランスがよく、熟した状態でも割としっかり固めなのが特長です。今店に出回っているトマトは桃太郎の品種改良されたものが多いとのこと。①は、ごく普通に八百屋に売っていて、みなさんもよく見かけるタイプのトマトです。
トマトを分類する引き出しは「色」と「大きさ」
トマトを大別すると、真っ赤な「赤系」と完熟しても薄い色の「ピンク系」があります。欧米では赤系トマトが中心ですが、日本では最初にピンク系のトマトが受け入れられ、今も店に並ぶトマトの多くがピンク系です。桃太郎や、ファースト(お尻がとんがってるやつです)がピンク系トマトの代表品種。
赤系トマトは栄養成分のスター“リコピン”が多く含まれ、その機能性によって最近人気が高まってきました。ただ販売はまだほんの一部。スープなど加熱料理には赤系トマトのほうが向いていますし、実際缶詰のトマトは赤系なのでみんな食べているのですが、フレッシュトマトはサラダなど生食で食べることが多いからです。価格を見ても、あまり大量に煮込みに使う値段ではない感じがします。
トマトを買うときの次のポイントは、サイズです。
トマトは、サイズによって150g以上の大玉、40g以上の中玉(ミディトマト)、それ以下の小玉(ミニトマト、プチトマト、マイクロトマト)にざっくり分かれます。
矢嶋さん曰く、木の上と下、同じトマトからできても大きさ違いで大玉、中玉として別々に売らこともあるとか。箱に詰める関係上でしょうか。今回試食した桃太郎の大玉中玉は、別の畑のものです。
そのほかに、これって何?と思うトマトについて。
「フルーツトマト」は栽培方法によって甘く仕上げたトマトのことで、トマトの品種ではありません。
「塩トマト」も、塩分の多い畑で獲れるトマトなので、品種というよりは栽培法ですね。私の用意したフルーツトマトは酸味が控えめ。
トマトの人気が高まり、ブランドトマトがたくさん生まれました。「徳谷」や「アメーラ」など有名ですね。今回味見した瑞花の「レトロトマト」は甘味も酸味もギュッと詰まっていて、ザ・トマト!という味わいです。
桃太郎、アイコ、光樹、フルティカ、サンマルツァーノなど、どれもトマトの品種名ですが、トマトの品種は毎年増え続けていて、名前も覚えきれないほど。プチトマトには色も赤だけでなくオレンジや黄色、黒なんていうのもありますね。
ただ、品種ひとつずつは覚えていなくても、最初に説明したとおり、サイズや大きな種類で分類の方法をある程度知っていれば、選ぶ時の目安になるかと思います。
高いトマトの水煮缶はほんとにおいしいの?
これら生トマトに加え、スープに使うトマトということで、水煮缶も試食!
この3つ、何が違うというと、お値段が違います。左から、96円、510円、238円。手に入るものの中で一番安いものと高いものです。どこでも手に入るカゴメのカットトマトは基準のために入れました。510円のトマトは、AFELTRAというメーカーのもの。サンマルツァーノ種です。ほかのものは、「サンマルツァーノタイプ」。おそらくサンマルツァーノの亜種でしょう。
甘味、酸味、うまみ、香り、それぞれ違いますが、基本的には値段なりに美味しくなっていくようです。AFELTRAは、味もさることながら、缶を開けたときのトマトの香りもよい!という参加者の声が。やっぱり高い缶詰はおいしかったという、当たり前の結果が出ました。カゴメのトマトは、バランスのとれた使いやすいタイプと思います。
トマトの酸味を穏やかにする6つの方法
さて、ここからは、スープの調理の話に入ります。トマトの特長といえば、あの酸味。でもそれがスープにすると少し気になることがあります。いろいろな調理法で酸味やうまみが変わるかを試してみました。
トマトのピュレ3種。右から、桃太郎カット→10分加熱。中、桃太郎カット→30分加熱。左、フルーツトマト10分加熱。
フルーツトマトを使えば簡単に甘いピュレができます。でも酸っぱいトマトを使うときは工夫が欲しいところ。
今回「トマトの酸味を消してうまみを増やす方法」として、ラボ前にいくつかの実験をしました。
①トマトをじっくり、沸騰させないように静かに煮詰める。
②オイルを加える(オリーブオイルやバターなど)
③砂糖(はちみつ、メープルシロップなど糖分)を加える。
④炒めたまねぎ(あるいはソフリット)を加える。
⑤重曹を加える。
⑥種を抜く。
どの方法でも、基本的には酸味がやわらぎます。一番シンプルなのは①の煮詰めるですね。何も加えなくても、ただコトコト静かに似るだけで酸味が飛びますし、何より味がギュッと詰まって美味しくなります。②~⑤は、作りたいスープによってはいいかもしれません。また、⑤と⑥は確かに酸味はなくなりますが、トマトのうまみという点ではやや欠ける気がしました。特にピンク系トマトで種を抜くと、うまみが全くなくなってしまいますので、きれいに仕上げたい場合は別ですがおすすめしません。
皆さん熱心!あれこれ感想を述べつつトマトやピュレを試食。ピュレに加糖するという話では、麹由来の甘酒を混ぜて食べてみたりしました。
まるで天使のしずく。トマトのエキス
味比べの最後に、面白いものをご用意しました。「トマトのエキス」です。
これは、トマトを皮や種ごとミキサーにかけ、できたものにほんの少し塩を加えてさらしの布に入れ、漉したもの。
透明なのに、飲んでみるとトマトのうまみがギュッ!と凝縮された、すごい液体になっています。神様の水みたい。
専門料理の雑誌などあたって作ってみました。料亭や、あるいはフレンチのレストランなどでゼラチンで固めて出されることがあるそうです。時間があれば安いトマトで簡単にできるものですが、その手間を考えると、お店でもあまり簡単には出せないものかと思います。参加者の皆さんも驚かれていました。
*****
こんな風に味比べタイムは終了し、ここからは本日のスープの試食タイム。
最初のスープは、トマトのポタージュ。オリーブオイル、にんにく、バジル、たまねぎと、トマトと本当に相性の良い仲間たちを一緒に煮込んでミキサーにかけた、なんのてらいもないシンプルなトマトポタージュです。
トマトソースのようでもあり、パスタが欲しくなるところです。今回はスペルと小麦という原種の小麦をゆでたものを入れて煮込んであります。プチプチ食感が楽しいのです。作り方はこちら!
そして2番目はトマトのダブルコンソメ。まずは写真をご覧ください。
どこにトマトが?という見た目ですよね。実はトマトを水から弱火で煮込んだ野菜だしで、もう一度トマトを煮てとった、贅沢な贅沢なコンソメです。
普通は肉のコンソメに野菜を浮かせます。これはトマトのコンソメに肉を浮かせる逆バージョン。あくまで、トマトが主役のスープです。見た目は肉のスープみたいでも、食べるとトマトのうまみがたっぷり。1キロのトマトから、10人にほんの少しずつしかとれません。作る勇気のあるかたはレシピをどうぞ。
ワイワイスープを食べながら、ラボはなごやかに終了。あとは例によってビールなど飲みつつみんなで食の話を。
今回もとても面白い実験になりました。ご参加のみなさま、ありがとうございました。
2015.3.9(月)19:00~ @湯島イワシハウス
写真ご協力:ソメカワノブヒロさん、飯坂麻里亜さん、三輪聡美さん
瑞花HP:http://www.suika.me/
読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。