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2022.3.22 ふきのとうとじゃがいもの味噌汁、はじめての本を出したときに支えと教えをくれた編集者

春だけの香り、ふきのとうを味噌汁にあしらって。鮮烈な苦味をうまく受け止めてくれそうなじゃがいもと組み合わせました。ふきのとうは包丁で刻むと黒ずみやすいので手でちぎって最後入れ。しっとりした雨の朝に合う、大人の味噌汁です。

ふきのとうはあんまり煮すぎないで

今週末の25日に今井真実さんをゲストに迎え「私はこうして料理家になった」というnoteのトークイベントに出ます。告知は一番下に貼っておきますね。

私のデビューはちょうど6年前の今ごろで、毎年この時季になると懐かしく当時を思い出します。2016年3月に出した『365日のめざましスープ』は、デビュー作にありがちな“熱量異常本”でした。
140以上のスープのレシピ、コラム、料理写真、タイトル文字からイラストまですべて自分でやって、さらにデザインレイアウトの指示も私からデザイナーに出していました。企画が通ったのが1月過ぎで発売が3月半ば。このすべてを2か月弱でやりました。控えめに言ってめちゃくちゃです。

当時の自分にできませんはありませんでしたから、体を動かしながらどうやっていくかを計画しました。当時の私は傍から見ても、きっとアドレナリンが出まくっていたと思います。ですから作業そのものに対する不安はあまりなかったです。

といっても、本が出るまでの、版元の編集者Tさんの支えは絶大でした。ベテランの料理編集者で、知人を介して引き合わせてもらったのが12月半ば。出合って軽く話をした数日後にはもう、これで企画を出してみようと思いますがどうでしょうかと企画書の添付されたメールをくれ、実際に会議で企画を通してしまったのです。ちなみに私のTwitterのフォロワーは当時3000人ぐらいでした。

Tさんは1回会っただけの私のキャラクターを的確につかんでいて、レシピだけではなく、生活提案をするような本にするという明確な企画意図を持っていました。コラムや手描きの文字やイラストも入れて欲しいと最初から頼まれ、さらに、雑誌のようなつかみのあるタイトルを80本ぐらい考えてくださいと言われました。80本…?

新宿の喫茶店で考えてきたネタをふたりで選びながらも、これはダメです、これは弱いですと、私がいいなと思っていたアイデアを容赦なく切り捨てます。本人は見た目もしゃべり方もふんわり柔らかいので、斬られたのに斬られてないみたいな、あれ、おかしい、なんで血が出てるんだろうみたいなことを繰り返しつつ、構成をまとめあげていきました。

この最初の作業を通じて彼女が本の向こう側にいるリアルな読者をしっかり認識させてくれたことは、私のその後の活動に非常に大きな影響を与えました。当時の私も含め、多くのアマチュアは自分の素敵料理を認めてもらえさえすれば、それがそのまま素敵本になって多くの人に素敵な感じで受け入れられると勘違いしているからです。実際は全然そうじゃないのです。

その後もレシピ、コラム、写真と作業は続きました。ベテラン編集者の彼女には教わることばかり。でも私の発言を柔軟に取り入れてくれるところも多く、とくにデザインについては私のセンスを買ってくれてかなり自由にやらせてもらいました。表紙にスープの絵を使ってはどうかというようなことも提案したらすっと通ったのです。

自分が自分のテリトリーを出て世の中にポンと出たとき、それがどれほどの人に受け入れられるかはまるで想像がつきません。そうした不安定な中にあって、友達でも家族でもなく、料理書を何冊も作ってきたプロの編集者に自分をきちんと信じてもらったことが、どれほど心の支えになったか。彼女が担当でなければあんな熱量のこもった本は作れなかったと思います。

無事発売した手作り感満載のその本は幸運なことに版も重ね、私自身もスープ作家として良いスタートが切れました。幸運はないですね。編集者の力量です。彼女は今も同じ会社で、料理本から違う部署に移って、そちらでもヒット作を続々生み出しています。

さて、週末のイベントではゲストの今井さんの担当編集者にもお話を聞く予定です。とても楽しみです。お時間あれば、みなさんも聴いてみてください。

こちらもよかったら。



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有賀 薫
読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。