フルーツからだしをとる!2015.11.20 拡大版スープラボ・レポート<晩秋のスイート・スープ>
11月の週末の夜、神保町LAB&Kitchenにて開かれたスープ・ラボ。テーマはスイート・スープです。季節の果実で甘いスープを作るという、かなりマニアックな今回のテーマに、食いしん坊の面々が集まりました。
ところで、フルーツのスープを日常食として食べている人はあまりいないんじゃないでしょうか。甘いの? 甘くないの? デザートなの? ごはんなの? そんな疑問に応えるべく、今回のラボではこんなプログラムをご用意しました。
ウォーターからポタージュまで。フルーツ5変化、味くらべ!
フルーツといえば、ジュースを思い浮かべますが、ジュースとスープって何が違うの?ということを感じていただくために、フルーツをこの5つの液体にしたものを、飲み比べてもらいました。
●フルーツウォーター
●フルーツジュース
●フルーツスムージー
●フルーツコンソメ
●フルーツポタージュ
味の違いがわかるように同じ果物を使います。今回は紅玉、ブラムリーアップル、洋梨をミックス。ブラムリーはクッキングアップルの一種で、酸味が強いりんごです。洋梨はラ・フランスを使用。甘みと酸味をバランスよく配合しました。
①フルーツウォーター
最近はやりのフルーツウォーター。デトックスウォーターとも呼ばれています。生のフルーツを水に漬け込んだもので、5~6時間ぐらい経つと水にフルーツのエキスが移ります。しっかり味がつくというほどでなく、フルーツフレーバーの水という感じです。
ただ水に漬けただけなのに、思ったより果物の味が移っているのには驚きました。一晩漬けるともっと味は濃くなります。昆布の水だしに近いですね。
赤いりんごの皮を入れて一晩ぐらい置くとうっすら色づきます。オレンジ、いちご、ぶどう、レモンなど、さまざまな季節の果物でどうぞ。
②フルーツジュース
ジューサーで作るジュースです。ジューサーで作るジュースはすりおろされ、遠心分離の働きで皮や種などが分けられて、さらりとしたクリアなのどごしのジュースになります。
泡が目立ってますが、その下は透明なジュースです。
最初の写真だと量が少なすぎてわかりにくいのでもう一枚。ふじりんごだけでつくったジュースです。透明感のあるきれいな味。
③フルーツスムージー
フルーツジュースのもうひとつのスタイル。ブレンダー(ミキサー)を使って作るため、ややもったりしています。ジューサーで作るジュースと比べて繊維などをそのまま摂れるという利点があります。ハンドブレンダーでもできる手軽さもあり、最近はこれが主流です。
ミキサーにフルーツと少量の水、氷を入れてガーッとブレンダーにかけるだけ。甘みが足りないときはハチミツなど入れると美味しいです。
今回のラボでは生のフルーツに、水と氷を少し入れたスムージーを作りました。
ジューススタンドで出てくるようなジュースですね。
今回はやりませんでしたが、最近耳にする「コールドプレスジュース」についても少し。こちらは、低速のミキサーを使いゆっくり果物や野菜をすりつぶすことで、ビタミンなどの栄養価が壊れず酵素も残されたジュースです。水を使わず果物だけでできるのだそう。
④フルーツコンソメ
カットフルーツを、水からコトコト煮出して、漉します。“フルーツだし”のようなものです。ただフルーツを漬けただけのウォーターとは明らかに違い、果物の甘みや酸味、香りなどのエキスが水に十分溶け出しています。
紅玉の皮の赤が煮出されて色づきます。
はちみつを加えて冷やし、りんごを浮かせたフルーツコンソメ。
煮出した後の果物は出しがらのようなもので、美味しくありません。もったいないけれど、贅沢さは肉のコンソメと同じ。逆に、時間が経って生で食べにくくなった果物の救済で作るのが良いでしょう。
⑤フルーツポタージュ
最後は、水煮したフルーツをミキサーにかけたピュレです。ラボではハンドブレンダーでその場でポタージュになるところを実演しました。ポタージュについてはりんごや梨の皮を取ってむいてあります。
水を足しポタージュ状に。果物のうまみが濃縮された感じです。
5つのスタイル、それぞれの良さがあります。フルーツの香りやフレッシュさを優先するならウォーターやジュースやスムージー。加熱したフルーツのうまみや深い甘みを求めるならコンソメやポタージュ。生の方が栄養は高いですが、冷えた時や、風邪気味のときなどは暖かいものが良いと思います。
さて、フルーツの味の引き出し方を知ったところで、本日最初のスープです。コンソメで濃さを調節したフルーツポタージュ。はちみつで甘みをつけ、ゆるく泡立てた生クリームとシナモンをかけて、カプチーノ仕立てにしています。
フルーツポタージュの詳しいレシピは、どうぞこちらで。
乗せて和えて混ぜて。砂糖を使わないスイート・スープ3選
ラボ後半では、秋冬の果実の様々な美味しさを引き出す、トッピングにこだわった、ラボのオリジナルスープを3種類お出ししました。
【皮も使って、みかん甘酒】
最初はみかん甘酒。スープというよりホットドリンクに入るでしょうか。甘酒には酒粕由来と麹由来のものがありますが、今回は麹の甘酒を使います。水で適当に伸ばせばそれだけで飲めますが、カットしたみかんの実を入れて軽く煮たて、しばらく漬け込むと適度な酸味とみかんの香りが移ります。カットが面倒な人は、みかんを横半分にカットして、スプーンですくいましょう。
試しに洗ってちぎったみかんの皮をほんのちょっぴりのせてみてください。みかんの香りは皮の油の中にたっぷり詰まっています。たったこれだけでみかんのフレッシュな香りと味がパッと立ちます。
寒い日に温まりますし、暖房のきいたお部屋で冷たくしたのを飲んでも良いものです。レシピは、こちら。
【効能強化トッピング!紫いものポタージュ】
次は色あざやかな、紫いものポタージュ。この、紫芋の栄養に注目しました。さまざまな機能性を強化したトッピングを使って味にも変化をつけてみます。
まずは、パソコンやスマホで疲れ目の方に。紫芋のアントシアニンに含まれる「眼精疲労の回復効果」を強化するためにトッピングに選んだのは、赤いクコの実。クコの実は、薬膳でも腎を補い、目の健康によいとされています。紫と赤のはっきりした色合いがきれい。
2番めは、便秘気味の方に。紫芋の「整腸作用」に注目。繊維質の多いさつまいもは、便秘気味の人も積極的にとりたい食材。成長作用のあるヨーグルトを紅いもポタージュにかけて混ぜながら食べます。ヨーグルトは火にかけてしまうと善玉菌も死んでしまうので、生のままトッピングするのがぴったり。水切りヨーグルトにしてもよかったかも。
最後は、肌荒れや肌老化の気になる方に。やはりアントシアニンに含まれる「抗酸化作用」を強化します。同じく抗酸化作用のあるビタミンEをたっぷり含んだクルミをトッピングします。味の相性もばっちり。
気になる健康の悩みに応じたトッピングをどうぞ、と言ったのですが、あるからには全部かけてみたくなりますよね。
【フレッシュな柿の甘さを活かす、白和えポタージュ】
最後は、柿のスープです。柿の甘みはすっきりと上品な質の良い甘みですが、加熱すると色も悪くなり味がぼやけてしまいます。そこで、主役の柿は生で使うことにしました。ベースは豆腐と煮詰めた豆乳と白のすりごまでできたポタージュ。これを賽の目にした柿にたっぷりとかけます。柿にはほんのわずかの塩をし、柚子の皮をパラリとかけて。
塩味のスープが、柿の甘さをひきたてます。レシピはこちらで。
お気づきかもしれませんが、ここまで出したスープにはお砂糖が一切使われていません。秋の果実は甘みがたっぷり。自然の甘みを利用し、甘酒やナッツや豆乳などの副素材を使ってヘルシーで食べ飽きないスープに仕上げています。
亥の子祭りの、ぜんざいバイキングで締めくくり
さんざん甘いスープを食べてきましたが、まだまだ入りますという顔のみなさんのために、最後は、日本の行事「亥の子祭り」にちなんだ楽しいぜんざいバイキングを。小豆を使ったぜんざいは、まさに甘いスープといえるもの。
亥の子祭りは旧暦10月(亥の月)10日(亥の日)に無病息災や子宝を願う年中行事。(新暦に直すとこのラボの翌日11月21日でした)
昔は亥の刻(午後10時ごろ)になると、子供たちが村じゅうの家を回ってお餅や菓子をもらう習慣があったそう。日本型のハロウィンなんですね。
7種類の新穀で作ったお餅がふるまわれるのが決まりで、それが、小豆、ささげ、大豆、栗、柿、ごま、砂糖(蜜・飴)でした。今も時季になると和菓子屋に猪形のお餅が並びます。
ということで、今年の小豆で炊いたぜんざいです。軽い甘みのココナッツシュガーであっさり仕上げ、甘さはトッピングの黒糖で調整します。ささげは逆に塩味で煮て、味のアクセントに。大豆はきなこ、ごまは黒すりごまを使いました。切った柿はオーブントースターで軽く焼いて甘みを引き出します。
やはり全部のせの人続出!
甘いスープにトッピングしながらワイワイ盛り上がって終わった今回のスープラボ。フルーツ・スープの世界を少し覗いていただけたかと思います。
こんなスープだったら、おやつやデザートだけではなく、朝食や夜食ににもよいのではないでしょうか。興味のある方は、ぜひお試しください。
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拡大版スープラボ「晩秋のフルーツ・スープ」
2015.11.20(金) 19:00~21:30 神保町LAB & Kitchen
写真協力:島影真奈美さん、蔵満麻里亜さん、凛福子さん、松田公代さん、杉浦葉子さん
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読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。