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料理に合うバターはどれだ。2016.9.14 スープラボ・レポート(料理編)

前回の、バター味比べのリストいかがでしたでしょうか。

ふだん、バターをそのまま食べることはあまりないと思います。パンに塗るか、あるいは料理に使うか。バター食べ比べの続きは、料理編です。

バターの料理といえば、コーンバターやじゃがバター、プレーンオムレツに魚のムニエルなど、シンプルにバターで炒めるだけの料理がおなじみですね。バターの風味を調味料として利用したものです。こうした食べ方でバターを変えるとどう違うかを試してみます。

3種のバターで、きのこバター

今回は秋の味覚、きのこを使ってみました。

 しめじ、舞茸、なめこ、椎茸。4種をミックス。これをバターで炒めます。

使ったバターは、右からグランフェルマージュ、木次、エシレ。同じきのこを同じフライパンで炒めます。味付けはバターのほかは、塩を少し足すだけ。

まず、グランフェルマージュ。バイオグラスフェッド(牧草を食べた乳牛)の発酵バターです。今回集めたフランスのバターの中では、比較的穏やかでクセの少ないバターで、料理に向くのではないかと想定しました。

発酵バターと普通のバターの一番の違いは、炒めているときの香り。ミルクのような香りが立ちのぼります。出来上がりは、バターの風味がしっかり備わった、濃厚な味。リッチなきのこバターソテーになりました。

次は、木次バターです。今回食べた中でも最もすっきりしたバターですが、グランフェルマージュと大きな差が出ました。バターの風味はさほど表に出ていませんが、きのこの風味がはっきりと際立つのです。なおかつ味に深みも出ています。ミルクの香りよりきのこの香りが強く出ています。

フレンチと日本料理の大きな差が、このふたつのきんこバターに現れています。フレンチは構造が立体的で、素材に調味料やソースを次々とたし算していって作る料理。一方、日本料理は最低限の調味料やだしでメインの素材の味を導き出す引き算の料理。調味料は味の呼び水のような役割を果たします。

日本のバターはフランスのバターに比べて全体的にあっさりしているのですが、やはり日本では、雑味がなくクリアな味を好む日本人好みのバターが作られるということだと思います。

最初のふたつに対して、エシレを選んだのは、バターが主役のきのこソテーができるかなと考えたのですが、まさにその通りになりました。エシレのショップではフィナンシェは売ってもきのこバターは売らないと思いますが、食べた人が、あ、エシレのきのこ、と思うような料理になりました。

このように、同じきのこを使っても3様のきのこバターができます。

パンに塗って食べて美味しいバターと、料理にしておいしいバターが違うということもありますが、それ以上にどんな味を求めるかによって、選ぶバターは違ってくるように思います。デイリーに使うには、バランスの良いタイプがいい気がしますが、目的がはっきりしているときは個性的なバターを選ぶほうが効果が高いのです。

発酵バターと普通のバターでかぼちゃのポタージュ

さて、スープラボですから、もちろんスープも。作るのは、バターが味の決め手となる、かぼちゃのシンプルなポタージュ。皮をむいて薄切りにしたかぼちゃを、バターで焦がさないようひたすら炒めます。途中水も少しずつ足してやりながら炒め、ほぼ煮溶けたところに水と塩少々を加えます。

鍋も同じサイズ、かぼちゃとバターも同じ重量。同じレシピで作りくらべ。

普通のバターと発酵バターといっても、違うメーカーだと比較になりません。そこで今回は、よつ葉乳業のバターと、発酵バター(いずれも業務用)を使って比較します。前回のリストには入っていません。

(下)よつ葉フレッシュバター(無塩) 450g 817円(181円/100g)
(上)よつ葉発酵バター(無塩) 450g879円(195.3円)
値段が高めの発酵バターでも、業務用なら一般普及品のバターと同じぐらいの価格で買えます。

バターでかぼちゃを炒めていくのですが、水分が抜け、鍋底にうっすらかぼちゃがついて茶色くなっていきます。その場合は水を少量(大さじ1~2)加えてやるとゆるむので、それを木べらなどでこそげます。かぼちゃは水を加えるごとに煮溶けていきます。多少粒が残っても構いません。

さて、作っている間も発酵バターは普通のバターよりミルクの香りが強く、普通のバターとはかなり差があります。炒め具合にはあまり差は出ません。出来たポタージュがこちら。生クリームも牛乳も使わないかわりに、使ったバターをそれぞれちょっぴりトッピングしました。

見た目はまったく同じ!

さて、味はどうでしょうか。きのこのソテーと同じように、やはり普通のバターの方がかぼちゃの味がしっかり出る結果となりました。発酵バターを使ったポタージュは、バターとかぼちゃのハーモニー、という感じの味わいです。さらにトッピングに加熱しないバターを使ったので、発酵バターのほうはそこでも香りがプラスされます。

これは、好みが分かれるところかなと思います。ポタージュはきのこソテーとは違い、ミルクを足すことが多いので、よりミルキーな味わいの発酵バターが合うという気もしますし、やはりかぼちゃの風味を存分に味わいたいという人なら、普通のバターのほうがよいでしょう。

レシピによっても差が出そうです。このかぼちゃをベースに、昆布だしでのばしてお醤油などをちょっと使った和風のかぼちゃポタージュなら普通のバターが、一方たまねぎやにんじんなども加えて少し粒をのこした野菜たっぷりの田舎風ポタージュだったら発酵バターがいいかもしれません。

バターを使った簡単アップルソース

バターといえば、バターをたっぷり使った肉のソースも連想しますが、家庭でフレンチのようなバターソースを作る方はあまりいないのではないでしょうか。そこで鶏肉にも豚肉にも合う、りんごを使った手軽な肉のソースを作ってみることにしました。

ブラムリーアップルを刻んでシードルを加えて煮て、そこにグラニュー糖少々、そしてバターをたっぷり加えます。使ったのは、イズニーのバターです。鶏のソテーに添えました。

バターを控えめにしたところ、りんごの味が強いソースになったので、さらにたっぷりバターを加えたものも作ってみました。バターを入れるとクリーム成分が高くなるのでりんごの風味は消えていきますが、ソースとしては、ある程度バターの量があったほうがよいようです。

使用したブラムリーアップル。すぐに煮溶けるので料理向きです。カルピス発酵バターを使って、甘いバターソテーも作ってみました。

3つの料理を通して、バターの味の差、量の差、発酵か普通のバターかなどで、料理の印象ががらりと変わることがわかりました。おいしいバターの料理はたくさんあると思いますが、今回はスープラボということで、なるべく比較がしやすいよう、シンプルな調理法を選んでみました。

バターの世界、まだまだ入口です。実験はこの後もう少し予定しているのですが、今日はひとまずここまで。

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スープ・ラボ#14 バター 2016年9月14日(水)17時~



 

読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。