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2022.2.25 オニオンスープ、料理の時間

ひたすらたまねぎを炒めてブイヨンで伸ばしただけのシンプルなたまねぎスープです。粉チーズと胡椒を振って、薄切りバゲットを添えました。ブイヨンは顆粒をごく少量使っています。もちろんオニオングラタンスープにしてもおいしい。作るということからいうと、ゆっくり炒めるとたまねぎが別のものになっていくところが面白いのです。


昨晩は、樋口直哉さんの新刊記念イベントをオンラインで視聴しました。今回の本のデザインと写真を手がけた装丁家・鈴木成一さんとの対談です。樋口さんの新刊『ぼくのおいしいは3でつくる』はレシピ本としてはかなり異色で、実用本のセオリーと違ってなぜこういう表現なの?みたいなことがあちこちで起こっている本なのですが、樋口さんの考え方を伝えることにお二人が全力を尽くしていたことがわかり、本を眺めながら聴くとあちこちでなるほど!と思えて非常に面白かったです。絵画展の音声ガイドみたいな。

樋口さんがこの本の後書きで、料理の時間について書かれています。「料理は自然の摂理。人間の都合で時間を短くしたり、長くしたりはできないのです」
私は料理家として時短料理を求められて作ることも多いのですが(というか、だからこそ)この言葉にはとても共感するものがあります。
たとえば今朝私が作ったオニオンスープは、たまねぎを弱火でじわじわ、40分くらい炒めました。強火で炒めるともっと早く茶色くなりますし、レンジにかけてたまねぎを早く煮たスープもできるにはできますが、それはいい悪いはともかく「別のもの」なのです。

多くの人は食事のために生きているわけではありませんから、短い時間でできる料理を求めることはあって当然です。本当にお腹を空かせているときにおいしいもの作るからと言われても、それならカップ麺のほうがその人にとってはおいしいものになる。だからリアルな暮らしに近づきながら目の前の小さな幸せを生み出す手伝いをすることは、料理家の仕事のひとつだと思います。まさに『きょうの料理』です。

ただ、その一方で、料理の本質を教わったり、料理の未来を考えていくことも私たちにとって欠かせないことで、だからこそ樋口さんのような方がこの時代にいてくださることの有り難さを感じているんですよね。神様の贈り物です。

さて、今日は午後からちょっと面白い場所に出かけます。

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有賀 薫
読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。