添削屋「ミサキさん」の考察|41|『文章の書き方』を読んでみた⑪
――匂いの表現について
香りの研究家、中村祥二氏(資生堂香料研究部長『香りの世界をのぞいてみよう』)における、匂いの分類。
「例」にあるキンモクセイの香りの描写はすごいですね。もし自分が同じことをやろうとしても、どう表現したらよいのかはた、ととまどってしまいます。
「描写は(視覚だけでなく)五感でやること」とはよく言われますが、この五感を働かせてとらえるというのはけっこう難しいもので、とくに「匂い」「臭い」「香り」、つまり嗅覚にかかわるものは難しいと感じています。
さらに、辰濃さんは、石牟礼道子『椿の海の記』から、香りの表現をたくさん紹介しています。
これが『苦海浄土』では鼻を突く臭気の描写に変わっていくわけですが、それはともかく、上のような豊かな香りの描写は、生活スタイルの異なる現代人にはなかなかに困難になってきているのかもしれないとも思いました。
そう考えると、現代は何と「匂い」とも「臭い」とも遠ざかっているのか。
いやいや、たとえそうだとしても、この描写は文章の鍛錬になることは間違いないと思います。
嗅覚は、五感のなかでもっとも原始的なものであるとも言われますね。
科学的にも、五感の中で嗅覚だけは唯一、「古い脳」である大脳辺縁系に直接伝わると解明されています。
「におい」によって深く眠っていた記憶や感情が鮮明に呼び起されるなど、嗅覚の本源性を思い知らされる体験は、誰でも思い当たることではないでしょうか。
たとえば梅の香りを描写するとしたら、どうすればよいかなぁ?
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