|2|からつづく
もう少し私の独断でチョイスした例文を見てみましょう。
大岡昇平『俘虜記』の一節です。大岡昇平というと、日本文学には珍しい極めて硬質で端正な文体が印象的です。
引用の一段落目は1文のみです。96文字ありました。
現代に比べ昭和中期くらいまでの文章は長めの印象がありますよね。
読者層が少数のインテリを想定していたことと関係があるのかもしれません(この辺りは私の勝手な推測です)。
かつこの作品はノンフィクションですし。
長いけれど、文章が上手いためか、あまり長さは感じませんでした。
今度は文学ではない文章です。ルポライターの石井光太さんのルポルタージュ作品『遺体 震災、津波の果てに』(新潮文庫)の一節。
ルポルタージュ・ノンフィクションに関しては詳しく述べられませんが、文字数だけで見るなら、冒頭の一文がいちばん長くて67文字でした。ただ経路を伝えるような文章なので、長くても気にはなりませんね。
他の文章はやはり短めで端的な文章です。
たまたま私が今読んでいるキャリアコンサルティングの教科書から引用してみました。『キャリアコンサルティング 理論と実際』(木村周著)。論文に近いですね。
冒頭の1文で99文字ありました。やはり論文は長くなる傾向があるのでしょうか。
いろいろな文章を探してみました。これは東京都庭園美術館が展示品について論じたパンフレットの一節です(「東京都庭園美術館ニュースNo.43」)。
何というか、要を得たてきぱきとした文章ですよね。いちばん長いところで74文字でした。やや長めの文章もこのような短い文章の中に入るとかえって文章全体を引き締め、アクセントになる効果があるように感じました。
まったくの私見ですけど。
|4|につづく