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過去形と現在形を織り交ぜて書く効果
では、例文をあげてみます。
東野圭吾さんの傑作『幻夜』。終盤のクライマックスに向かうシーンの記述です。過去形を基調とした中に、ところどころ現在形を入れて、読みやすいですね。落ち着いた感じで場の雰囲気を伝えています。
恩田陸さんのデビュー作『六番目の小夜子』の一節です。無理なく過去形と現在形が織り交ぜられていて読みやすいですね。
話題の今村昌弘さん『兇人邸の殺人』の出だしです。
過去形、現在形を織り交ぜるほかに、体言止めを使うのも文章のリズムをつくるのに効果がありますよね。
では、翻訳小説ではどうでしょうか。
ひとつだけ、挙げてみますね。
カミュ『異邦人』の一節。窪田啓作訳。
翻訳のあれこれについては詳しくはないのですが、日本語として読みやすく書かれているとほっとします。翻訳は翻訳者自身の文学センス・文章力が問われるのでしょうね。
さて、「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた」をテキストにして、私自身の見解も交えてこのエッセイをつづってきました。
今回で最終回です。
自分でも、いろいろと勉強になりました。
小説にかんするものが多くなってしまったのは、申し訳なかったです。
私自身は、言葉や文章についての勉強を引き続きやっていくつもりです。
お読みいただき、ありがとうございました。