添削屋「ミサキさん」の考察|2|「『文章術のベストセラー100冊』のポイントを1冊にまとめてみた」を読んでみた②
2⃣1文の長さの目安は、「60文字」以内
論者によってばらつきはあるようですが、本書の著者が精査した結果「1文の長さは『60文字以内』が好ましい」そうです。
同時に、「80文字だと長すぎる」というのが多くの論者の意見だったといいます。
劇作家の井上ひさしさんは「分けて分けて分けて、単純にして、それをつないでいけばいいんです。それが基本です」(『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室」/新潮社)と述べていたそうです。
実用的な文章はそう言えると思います。また、一定のタイプの小説やエッセイもそうかもしれません。
ただ、私の場合、ここにかんしては手放しで賛成とは言えないものがありますね。
論理性を求められる文章(学術論文・哲学書・思想書)や小説の文章では必ずしもそうは言いきれないのではないかというのが私の意見です。
ただ、実用的な文章、解説本・ノウハウ本は確かに短い文章の方が断然読みやすく読み手のためにもなります。
さて、それではいくつかの文章を見てみましょう。
といいましても、私の手持ちの本からです。
東野圭吾さんの傑作『白夜行』の出だしです。
いや、実にうまい。うますぎる。話は少しそれますが、最初の段落であえて主語を入れず、2段落目のはじめに名前を出す。それだけでもテクニックを感じます。
それはさておき、1文1文がとても短いですね。このなかのいちばん長い文章でも48文字です。たたみ込むような短い文の積み重ねでリズムもある。すばらしいです。
中村文則さんの芥川賞受賞作『土の中の子供』の一節。
わりと悪文と言われる作家ですが(私は嫌いではないです)、このなかでいちばん長い最後の文章が54文字。読んだときの印象より意外に短いですね。
あまりリズミカルとは言えないけれど、1文は短いものが多いです。
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