エスパー博士

 やはり! 私は世界で唯一の人間なのだ。勿論、世界経済は動いている、総理大臣や大統領も存在する。だが、私は世界で唯一の人間なのだ。昨日、私は人間の心を読む能力を手に入れた。神からの贈り物などではない。科学の力、そう、私の力でこの能力を手に入れたのだ。そして今! 私はその能力を使った。だが、何も起こらなかった! 科学の力を信じていない奴らは、「あんたの実験は失敗だ」と私を揶揄うだろう。だが! 気にしないでいい。何故ならそいつらに心はないからだ。そいつらに限らず、私以外の人間に心はないのだ。心が無い人間は人間とは言えぬ。ではアイツらは何なのか? ——ロボットだ。そうだ、アイツらはロボットなのだ。ついさっきまでは仮説だった私の説が今や確固たるものになっている。これほどまでの喜び! これほどまでの喜びを! ロボット達は味わうことができないなんて!
「そこの君!」
実験の成功を喜ぶ私を怯えながら見ている——いや、怯えながら見るというプログラムに沿って行動しているロボットに私は声をかけた。そして、能力を使った。
「やはり! 何も聞こえん!」
そのロボットは逃げ出した。
では、では一体このロボット達を作ったのは誰なのか? それは私だ。人間だ。人間は生命に限りなく近いこのロボット達を生み出した! 科学の力で! だがロボットに人間は越えられぬ。ならば、私は世界で一番の天才ということになるのだ。
科学万歳! 科学万歳! 科学万歳!

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