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幻の名酒
青森空港で落ち合い、海辺の温泉へむかう車の中、どこへ行きたいか友達に聞かれた。名所と食べ物と酒と答え、今までで一番美味かった酒の話になった。いろんな話をしているようで、互いに話してないことはたくさんあるのかも知れない。
私は 遠州の「花の舞」で、浜名湖花博で国賓をもてなした料理人が料理長をつとめるホテルの結婚式で飲んだ。好き嫌いも無く、味にこだわるほうでは全くないけど、この酒だけは肴を選ぶ。よい酒は水に似るの言葉どおり、限りなく水に近い酒だった。
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友達は自営業で、仕事で全国をまわっている。海外に行くこともあり、さぞうまい酒の銘柄が聞けると期待していたら、運転しながら気がなさそうに話した。
田舎の村で仕事が終わった後、ちょうど今日 寄り合いがあるから、よかったら一緒に来いって言われてさ。
その人 お坊さんで、お寺に地元の人が集まってて、いろんな酒を飲ませてくれたんだよね。
中に一本、銘柄の貼ってない瓶があってさ。
これ何って聞いたら、密造酒だって。
それ、美味かったよ。
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今度の旅で飲んだ酒はどれも美味く、帰ってから普段飲んでた酒が飲めなくなるほどだった。念のためだが、飲んだ酒にはどれも銘柄が貼ってあり、友達の仕事は正業で、密造酒の村は青森じゃない。