屋久島 1 - 縄文杉と苔むす森を見たい
今年2月下旬に仕事を辞めて自分の時間が自由に使えるようになったとき、「日本の中で一番最初に行きたいのはどこ?」と自分に尋ねたら、「屋久島」だった。世界自然遺産の縄文杉を見てみたいと。それが過酷なトレッキングになるとは、その時はわかっていなかったのだ。
屋久島については深掘りして長期滞在したいところだが、とにかく一度行ってみたいと焦燥感に駆られ、今回は短いイントロ的な旅になった。さっそく3泊4日の旅を計画して、3月中旬に出発した。到着の翌日に縄文杉のトレッキングツアー、その翌日に、苔むす森として有名な白谷雲水峡の半日ツアー、4日目にゆっくり帰ってくるという旅程。ツアーに参加することにしたのは、やはり縄文杉までの道のりは結構きついといわれていたからだ。
島に到着する
大阪空港からは意外と近く、2時間弱の直行便で屋久島空港に到着する。途中、鹿児島南端に富士山のような形の美しい山が見えて、あれが開聞岳なんだろうな、近づいてきたなとワクワクしていると、すぐに細長い種子島が見えてくる。さらに地図を見ていると硫黄島が近くにあるとわかった。歴史に残る地を目の前にするとそこに生きた人々や出来事が頭をよぎる。
そして次に目に入るのがハワイのような緑に覆われた円形の島。屋久島はトロピカルアイランドだと思ってしまう。ただし、「洋上のアルプス」といわれているように、険しい山々が連なって海からポコンと浮かび上がったというような形状だ。島の90%が森だという。
空港はレトロな昭和ムード。予約していたレンタカーを空港の道向こうのオフィスでピックアップして、ドライブを始めるのだが、丸い島をぐるっと時計回りか逆時計回りかで移動するだけなので、これは楽勝だと嬉しくなった。
安房を歩く
まずはホテルのある安房方面に向かう。そこは島の南西部にあたる安房港という古い港がある町だ。ここに2泊した後、北部にある宮之浦港近くのホテルに移動する。これらの港には鹿児島から高速船で渡れるようで、それも面白そうだ。
安房でチェックインしたホテルは、これまた昭和レトロで、その昔、作家の林芙美子さんが逗留して「浮雲」を執筆されたということで有名だそうだ。その彼女が「月のうち35日、雨が降る」と言われたのが定着しているように、屋久島は雨が多い。
安房川沿いに建つ眺めの良いホテルで、私の部屋は特に眺めの良い角部屋だった。山並みをバックにした安房川の見える西側と、遠方に海と直下に赤い橋が見える北側との両方に大きな窓があって、部屋からの眺めは圧倒的に素晴らしかった。
ただ、このレトロ感に慣れなくて、部屋にいるよりは少し周辺を探索してみようと散歩にでかけた。遠方に高い山々がそびえる緑の中から流れ出ている安房川の光景は、なんだか東南アジアを彷彿させる。目の前にかかる赤い欄干の橋を渡り、堤防沿いに歩いて行くと、如竹という江戸時代の屋久島聖人といわれる人の碑があって歴史をちょこっと学ぶ。平日のためか、ただ人口が少ないためか、人通りがない。そんな静かな安房川河口を港方面にブラブラ歩いて行くと、ふっと昭和にタイムスリップしてしまいそうになる。
癒しの空間に浸る
しばらく行くと素敵なハープのような音が聞こえてくる。その方向にカフェがあって、惹かれて入っていった。Smiley という看板が出ていた。生演奏の最中で、声を出さずにタンカンジュースと屋久島バナナのタルトを注文して静かに音楽に浸る。窓からは海が見える。癒される音。突如として至福の空間に迷い込んだのだ。屋久島のライアー奏者の宮田さんという方の演奏だった。
タンカンというのは屋久島のミカンで、濃厚で甘い。島バナナも有名らしい。どちらも最高に美味しかった。
素敵な癒しのカフェだ。突然現れたこのスピ空間と昭和レトロとのギャップが屋久島なんだろうなと、ニヤリとする。
トレッキングの準備をする
屋久島は水も美味しい。軟水だ。
水は小分けしてウォーターボトルに入れる。トレッキング用のザック、レインウェア、トレッキングポールなどのレンタル品を受け取って、翌日早朝の出発の準備をする。朝と昼のお弁当もホテルで準備してくれるので予約しておく。いよいよ縄文杉に会えるのだ。
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「屋久島 2 - 縄文杉まで歩く」
「屋久島 3 - 苔むす森に浸る」
「屋久島 4 - 島を去る前に」