![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160346255/rectangle_large_type_2_d4a1ed37117a508ff6ae9b2bc9682b5f.jpeg?width=1200)
自閉症のある青年と海が描かれた映画
自閉症のある青年が主人公の映画「ぼくはうみがみたくなりました」(2009年)の、突き抜けたような爽快感が忘れられない。映画の舞台は湘南(三浦)だが、作品の生まれた町田市の人々のネットワークがうらやましくて、その勢いで書いた、2011年4月のブログ記事を転載する。
「ぼくうみ」のサイトはこちら。劇映画ですが、自閉症のある息子さんがいた脚本家の山下久仁明さんが企画された作品です。
「ぼくはうみがみたくなりました」(2009年、ぼくはうみがみたくなりました製作実行委員会)
それから、東日本大震災の前に見た「海洋天堂」。自閉症のある息子の「親亡き後」を案じる余命わずかな父親が主人公の、これも海がモチーフの幻想的な劇映画。水族館が舞台で、魚のように泳ぐ息子。穏やかな生活の一分一秒がまぶしい。
「海洋天堂」(2008年、クレストインターナショナル)
また見てみたいけど・・・2024年現在、「ぼくうみ」も「海洋天堂」も配給元の事情で上映が難しいようだ。「ぼくうみ」を製作した山下氏は放課後等デイサービスを立ち上げ、既に代表を引退されたようだ。放課後等デイサービスなんてなかった時代に、並々ならない苦労があったと思う。
「海洋天堂」は、海の描写があるということで、東日本大震災直後の上映会は延期された。映画を鑑賞できることは、実は一期一会の奇跡だと思う。オンラインもよいですが、街の映画館、また公民館などの施設でわいわい言いながらの再上映を期待したいです。
この記事のトップ画像は、本文と関係ないですが!JR横須賀駅近くの風景です☆
2011年4月にブログに書いたこと
4月2日は「世界自閉症啓発デー」。2007年に国連が定め、今年で3年目。日本委員会が企画したシンポジウムは東日本大震災の影響で延期となったが、横須賀市にある国立特別支援教育総合研究所と、自閉症を専門とする筑波大学附属久里浜特別支援学校の共催のイベント(啓発研修会)は予定どおり、先の週末(4月16日)に開催された。その名も「世界自閉症啓発デー 2011 in 横須賀:自閉症の世界を知ろうよ」。
*世界自閉症啓発デー日本実行委員会のWebサイト URL(2024年11月確認済み)
残念ながら参加できなかったが、当日、やはり災害時の自閉症児者支援がテーマの講演があったという。そして映画上映と参加者のトーク。映画は『ぼくはうみがみたくなりました』(2009年)。湘南、三浦が舞台だ。脚本の山下久仁明氏は、自閉症をもっていた息子さんとの体験をもとに同名の物語を書いた原作者でもある。
成人の自閉症者を描いた作品は意外に少ないと思う。たしかにダスティン・ホフマンが「レイモンド」を演じた『レインマン』(1988年)は、自閉症の存在を世に知らしめた。社会から隔離された施設で暮らし、無表情で単調なことばを繰り返し、薄ら寒くなるほど記憶力抜群・・・・・と、俗世にまみれた「普通の」弟のトム・クルーズと対照的な「純粋さ」=「異質さ」が描かれていたと思う。
大人の知的障害者を描いたアメリカ映画には、弱冠18歳のレオナルド・ディカプリオが主人公の弟を(兄、ジョニー・ディップの影を薄くするほど)怪演した『ギルバート・グレイプ』(1993年)がある。また『アイ・アム・サム』(2001年)も好きだ。ショーン・ペンが「7歳」の知能をもち、スターバックスで陽気に働く「サム」を演じた。「7歳」の娘との親子関係、また法的な親権を、弁護士のミシェル・ファイファーの助けを借りて社会的に認めてもらう物語。
しかし、『・・・・・サム』にいたっては、かなりファンタジックな作品と言える。障害をもつ大人がテーマであるが、「上から目線」と言われても否定はできないのではないか。「普通の」人々の社会生活や価値観からはみ出した「純粋な人」を、幸運が幸運を呼んで皆で温かく見守る・・・・・。この意味で『ぼくはうみがみたくなりました』(「ぼくうみ」と呼ばれている)は、障害をもつ大人とその周りの大人の目線にあると思う。
「ぼくうみ」は「ありえない」設定満載である。アイドルのような看護学校生が通りすがりの青年主人公をドライブに誘う、旅先で青年の恩師に突然再会する、いきなり外泊するという息子の電話を母親は自然に受けとめる、など・・・・・。しかし、自閉症をもつ青年の日常を「ありのまま」に描いている。主人公(伊藤祐貴)はきわめて自然で、違和感がない。パニックになった時は・・・・・といった説明(うんちく?)など豆知識的な要素も随所に盛り込まれているが、とにかく楽しい。わくわくして素敵な車に乗って、海へ・・・・・。そうした気持ちのままに物語がスムーズに展開していく。自閉症をもつ大人や家族が楽しめる映画だと思う。忠実に現実と向き合った上での、大人のファンタジー。
知的障害をもつ兄がいるが、グループホームの生活は「楽しい」らしい。30~50歳代の仲間で、一緒に『宇宙戦艦ヤマト』を見に行ったりしている。「かわいそう」な体験や日常(就業、いじめなど・・・・・)を超えて、実は「楽しい」世界が見える、または見ようとしているのかもしれない。
今年は、いくつかの映画の封切りが待たれる。カンフー映画の印象が強すぎる(!)ジェット・リーが自閉症をもつ息子の父親を演じる『海洋天堂』。長崎、雲仙の和太鼓チームのドキュメンタリー作品『幸せの太鼓を響かせて:INCLUSION』。「かわいそう」ではなく、とびきりファンタジックで、「インクルージョン」の姿を見せてくれるような映画を見てみたいと思う。