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【ニッコールレンズの話】いろいろなニッコールレンズにコンタックスメタルフードを装着して悦に入る俺は「フード病」をこじらせたに決まってる【note改稿版】

【おことわり】
本記事はブログに掲載した記事を加筆し改稿したものです。有料記事に設定していますが、無料で全文をお読みいただけます。もしお気に召しましたら、投げ銭のつもりでお支払いいただけますと、とてもうれしいです。


コンタックスメタルフードを装着したSタイプニッコールレンズ

「コンタックスメタルフード」とは

かつての京セラ・コンタックス(またはヤシカ・コンタックス、略してヤシコンまたはY/C)RTSシリーズ用一眼レフカメラのカール・ツァイス*1交換レンズには、⌀86mmの円筒形で深さ(長さ)が5種類あるねじ込み式メタルフードおよび⌀82mmのW-1、レンズの何種類かのアタッチメントサイズに合わせた各種アダプターリングが用意されていた。

ヤシカ/京セラコンタックスについても説明しておきたい。京セラがカメラ事業を終えたのが2005年でもう20年近くまえになるから、知らないひとも少なくないだろう。

かつてヤシカおよび京セラは「コンタックス(欧文ではすべて大文字の"CONTAX")」ブランドで、一眼レフカメラシステム「RTSシリーズ」を展開していた。正確には1974年(昭和49年)に当時のヤシカがカール・ツァイスと提携し、1983年(昭和58年)にヤシカを吸収合併した京セラが引き継いだ。カール・ツァイスによる設計のレンズとポルシェデザインのカメラボディが特徴の高級ブランドだった。この京セラ・コンタックス、あるいはヤシカ・コンタックス略してヤシコン(Y/C)は高品質で、ライカほどではないにせよ高価格帯の商品展開をしていた。そのためかアクセサリー類も比較的充実していた。

コンタックスメタルフードとはその京セラ・コンタックスブランドのRTSシリーズ一眼レフ用アクセサリーのうちのひとつだった。ただし、AF距離計連動式カメラだったGシリーズと、AF一眼レフだったNシリーズ、645シリーズにはレンズごとのフードが用意されていた。だから、「コンタックスメタルフード」とは通常はRTSシリーズ35mm一眼レフ用のもののみを示す。

Carl Zeissレンズでもカタカナではナカグロ(・)を表記しない、現在のコシナ製一眼レフ用カールツァイスレンズ、およびソニーEマウント用カールツァイスレンズ用レンズフードなどとはことなり、コンタックスメタルフードは固定方法がねじ込み式であるために、他のブランドの交換レンズに転用しやすい。

いくつか所有していたそれらのコンタックスメタルフードとアダプターリングを、用品メーカー製ステップアップリングを介してFマウントニッコールレンズにつけてみたら気に入ったという話を先日ブログに書いた。

コンタックスメタルフード4がDfに似合う(と思っている)

1990年代に思春期を迎えた筆者には、コンタックスメタルフードは重厚ながらもシンプルな意匠で、いまでもカッコよく思える。さらにいえば、限定版のレンズ用以外のものはそれなりの数が流通していて、値も張らないところも気軽に使うことができていい。

フード病との戦い……左舷砲撃手、弾幕薄いぞ! 何やってる!

そういうわけで、手持ちのものを使うだけではなく、カメラ店で傷のある安価なコンタックスメタルフードとアダプターリングをさらにいくつか手に入れて、AI Nikkor 20mm f/2.8S、AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G(Special Edition)、AI Nikkor 85mm F1.4S、そしてAI Nikkor ED 180mm F2.8SおよびAI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-EDにあれこれとつけ替えて用いるようになったというところで、戦争は終結し世界には平和が訪れた。

そのあとしばらくのあいだ、私はカメラ店へは意図的に足を向けなかった。なぜなら、自分のこの「フード病」という病気のひどさを知っているから。どちらかというと金額の問題ではなくて、持ち物を増やすことが自分には問題だ。整理整頓と収納に困るから。

もっとも、カメラ店や大手中古品リユース品販売チェーン店「※ー※オ※」で、3,000円(!)もするようなものはさすがに買わないけどさ。元箱もなしで3,000円は強気すぎだ。自分を統制できなくなることはかなり自分には深刻な問題で、そういう意味では「依存症」といったほうがむしろよいのかもしれない。なにかを見つけてしまうことで、病状が悪化することを私はひどく恐れたのだ。

ドストエフスキー『罪と罰』に、アルコール依存症の患者がいちど立ち直ったと思われたあとに、連続飲酒を始めてしまうシーンがあるのをご存知の方は多いはず。あれは依存症の悲劇をうまく描けている古典的な小説ではないか。

カメラ関連の機材を増やさないもっとも効果的な対処方法は、カメラ店にはオンラインでもオフラインでも近寄らないことにつきる。そう考えてカメラ店にも中古品リユース品販売店にも行かず、Webサイトも見ないでいて私は心穏やかな暮らしをふたたび立て直し始めたはずだった。

しかしその平和な日々は長くは続かなかった。一年戦争終結から3年たった宇宙世紀0083年、デラーズ・フリートは地球連邦に対し宣戦を布告した……みたいなものさ。

敵は※ッ※カ※ラと※タ※ラにあり

ある日のことだ。インクジェットプリンターの交換インクを買うために都心に出た。私の使っているプリンターの専用顔料インクは都心に出ないと手に入らないことが多い。そこで都心の大手家電量販チェーン店に行った。そのさいになにげなくアウトレット・中古カメラコーナーをのぞいたところ、安価なコンタックスメタルフードを見つけてしまった。

南無三。見つけてしまったのだよ、ワトソンくん。

歴史に「もし」は存在しない。だがしかし、「もし」あのとき量販店の中古カメラコーナーを見なかったら、私はコンタックスメタルフードとアダプターリングをさらに手に入れることはなかったかもしれない、といまになってもやはり考えてしまう。

中学校の英語の授業で習った「過去のある時点においての現実とは異なること」を示す「仮定法過去完了」の例文みたいだ。”If I hadn't visited the shop, I wouldn’t have got it.”(もしその店を訪ねなければ、それを手に入れなかったかもしれない→しかし現実にはその店を訪れたので、それを手に入れた)。

まさか、大手家電量販チェーン店「※ッ※カ※ラ」中古コーナーにたいへん安価なコンタックスメタルフードとアダプターリングがあるなんて。1,000円未満なら財布の紐が……いやそのあれだ。

そして悲劇は続いた。翌日にはさらに、郊外のロードサイド型DPE大型チェーン店である「カメラの※タ※ラ」でもたいへん安価な、つまりやはり1,000円未満のコンタックスメタルフードとアダプターリングを見つけてしまった。まさか※タ※ラにあると思わず油断していた。そしてなぜ私は※タ※ラに行ったのかなあ。

これはいわば「連続飲酒」を始めてしまったようなもの。やっちまったわけです。こうなると「カメラ店よ! 私は帰ってきた!」とかいいたくなった。もちろん心の中だけで。

もうあれですよ。地球連邦政府に宣戦布告をしただけではなく、奪った核搭載型ガンダムで地球連邦軍の観艦式を核攻撃しちゃったようなものだね、あの瞬間に私は。いろいろな意味で「ラヴィアンローズ(バラ色の生活)」といえるかな。

こうして、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』を知らない読者を置いてきぼりにしていることにも私がふと気がついたときには、当初は想定していなかったAI Nikkor 35mm f/1.4Sにもメタルフード2をつけていたというわけ。

「敵は本能寺にあり」というよりも「俺氏が本能的に変」という感じ。

もちろん、大昔に新品で販売していた価格よりもずっと安いものを見つけたからなのだけど。現在のコレクター向け価格のものだったら買わなかった。だって、コレクションにしたいのではないから。傷をつけながら使用するつもりだからね。

しかしながら、かの親鸞も申しておりますように、善人なおもて往生す、まして悪人においてをや。人はみな、ただ一人旅に出て、ふり返らずに、泣かないで歩くのであります。ああ、誰が知るや、百尺下の水の心……。人間誰しも悩み苦しみ過ち、そして、成長し桃太郎は満州に渡ってジンギスカンになるのであります。かの大ギュエイテ曰く、苦悩を経て、大いなる快楽に至れ、というようなワケでして*2……あれ、校長先生、それはギュエイテ(ゲーテ)ではなくてべトホーフェン(ベートーベン)のせりふじゃなかったっけ。ようしらんけど。

「自分は大丈夫」などと油断をしてカメラや用品を見るのは病人にはやっぱり向かないぜ。しかも、こうして他人のせいにして「かってに生えた」などと書くのがいちばんよろしくない。もしこのあたりを追求されたら携帯電話で通話するふりでもしようか。

ニッコールなどの他社製レンズにコンタックスメタルフードを使うまとめ

AI-Sニッコールレンズはアタッチメントサイズが⌀52mmに基本的に揃えられていて、大口径レンズでは⌀62mmと⌀72mmのレンズがあった。いっぽう、RTS用カール・ツァイスレンズのアタッチメントサイズには⌀55mmと⌀67mmという、国産レンズにはめずらしいアタッチメントサイズが多い。

あくまでも想像ではあるけれど、こうした比較的めずらしいアタッチメントサイズを採用したのはいま思うとサードパーティ製アクセサリーを排他する目的もあったのかもしれない。

そして、前述のようにコンタックスメタルフードは⌀86mmで、これを55/86、67/86、72/86、82/86などのアダプターリングを介して用いる仕組みになっていた。したがってAI-Sニッコールレンズをはじめとするアタッチメントサイズが異なる他社製レンズに用いるには、コンタックスのアダプターリング以外に、さらに用品メーカー製のステップアップリングが必要になるものが多い。

それでも、装着方法がバヨネット式ではなく一般的なねじ込み式ではあるのことがさいわいして、他社製レンズにこうして転用しやすいともいえる。

以前も書いたようにコンタックスメタルフードは質感や外観は優れているものの、肉厚で大柄でやや重い。装着すると迫力は出るものの、外観の立派さほどには有害光をカットする効果は見込めない。より口径が小さく深くあるべきかもしれない。だから、基本的には組み込み式フードが浅く、すぐに引っ込んでしまう望遠レンズに向く。広角レンズから標準レンズにはむしろカメラバッグ内に収納しにくくしてしまう。 

そして、頑丈な金属製フードであるために、万が一レンズを落下させた場合には、レンズ鏡筒側に衝撃を伝えやすい危険性もある。

そこで、私はレンズのアタッチメントサイズと純正アダプターリングの口径が合うものでも、古くなって傷ませてしまったガラスフィルターの中身を外し、枠のみを使用して取りつけることにした。というのは、衝撃に対して弱い部分を意図的に設けるため。万が一の場合にレンズ鏡筒ではなくフィルター枠や用品メーカー製ステップアップリングが壊れるほうがいいからだ。さらにはフードをわずかに深くする効果もある。

古いフィルターの中身を外して枠だけにして装着している

そこで、自分が試している以下の組み合わせを参考までに示す。ステップアップリングかフィルター枠をかならず装着していることもあわせて記しておく。

こういうふうに書いて情報の共有化をすれば、1980年代から1990年代のノリのまま令和の日々を過ごしているカメラヲタクのただの痛い日記にならないで済むかしら。2024年のいまとなっては、この情報が役に立つひとはそういないか。

AI Nikkor 20mm f/2.8S

コンタックスメタルフードW-1+62-82mmステップアップリング

AI Nikkor 20mm f/2.8S+コンタックスメタルフードW-1+62-82mmステップアップリング

純正かぶせ式フードのHK-14はとても格好がいいのに、使用中にねじがゆるんで外れてしまうことが多いので考えた組み合わせ。Distagon T* 21/2.8(Y/C)用のメタルフードW-1を使う。W-1は私は大昔に新品で買ったものだ。いまはコレクター向け価格でHK-14よりお値段が上かもしれない。そして、この組み合わせにさらに⌀62mmフィルター枠を重ねると残念ながら画面四隅がけられてしまうので、「枠だけ保護フィルター」は用いない。そして、C-PLフィルターやNDフィルターを使用する場合にはこのフードの組み合わせは使用できないので取り外す。ただし私はどちらもめったに使わない。

AI Nikkor 35mm f/1.4S

コンタックスメタルフード2+コンタックス55/86リング+52-55mmステップアップリング+⌀52mmフィルター枠

AI Nikkor 35mm f/1.4S+コンタックスメタルフード2
+コンタックス55/86リング+52-55mmステップアップリング+⌀52mmフィルター枠

純正ねじ込み式フードのHN-3は浅いのではないかと気になるが、ニコンのスプリング式フードHS-7(AI Noct Nikkor 58mm F1.2、AI AF Nikkor 80mm F2.8SおよびAI AF Micro Nikkor 105mm F2.8D用)、HS-9(AI Nikkor 50mm f/1.4S用)、HS-12(AI Nikkor 50mm f/1.2S用)ではけられてしまう。

カ※ク※ムの口コミでは「AI Nikkor 35mm f/1.4SにHS-12が使える」とかいうのがあったけれど、けられるので使えないよ。筆者はカメラを変えて何度も試してもけられたからね。無限遠と至近距離、絞り値も変えてもだめね。

そう考えればHN-3の長さで足りるといえるかもしれない。ただし、短い外観がいまひとつ私にはしっくりこないまま20年ほど所有してきた。

そこでDistagon T* 1.4/35(Y/C)で推奨されるメタルフード2を使用することに。メタルフード2のアタッチメントサイズは⌀86mmでも、フード自体の口径がメタルフード4などよりも大きいので、F1.4ながらアタッチメントサイズが⌀52mmというAI Nikkor 35mm f/1.4Sのコンパクトさは失われてしまう。大げさに見えるので、べつの方法を考えついたら使わなくなるかも。メタルフード2も探さないと出てこないし。遮光効果があるとは思えない。だからこれは実用性よりも「コンタックスメタルフード好き」のための組み合わせだ。

AI Nikkor 50mm f/1.4S

コンタックスメタルフード4+コンタックス55/86リング+52-55mmステップアップリング+⌀52mmフィルター枠

AI Nikkor 50mm f/1.4S+コンタックスメタルフード4
+コンタックス55/86リング+52-55mmステップアップリング+⌀52mmフィルター枠

Planar T* 50/1.4(Y/C)でも推奨される組み合わせ。世の中に数多く流通しているであろうAI Nikkor 50mm f/1.4Sをじつに立派に見せる気がする。純正HS-9でもいいのにね。だから、これはただ単に「フィルム時代からニコンを使っているんだぜ(ドヤア)」と古参ニコ爺自慢をしたいだけの組み合わせか。

AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G(Special Edition)

コンタックスメタルフード4+67/86リング+58-67mmステップアップリング+⌀58mmフィルター枠

AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G(Special Edition)
+コンタックスメタルフード4+67/86リング+58-67mmステップアップリング
+⌀58mmフィルター枠

純正バヨネット式フードHB-47よりもわずかに浅いものの、レンズ自体が太いこともあって、外観上のバランスが一番いいかも。GタイプのAF-Sニッコールレンズは前部が可動しないので、こうした重いフードに向くところもいい。逆に、DタイプニッコールレンズではニコンIF方式のレンズ以外にはおすすめできない。とはいえ、ほかのGタイプニッコールレンズは持っていないのでコンタックスメタルフードと組み合わせたことがない。したがって、ほかの組み合わせについてはコメントできないからね。

AI Nikkor 85mm F1.4S

コンタックスメタルフード4+コンタックス72/86リング+⌀72mmフィルター枠

AI Nikkor 85mm F1.4S+コンタックスメタルフード4
+コンタックス72/86リング+⌀72mmフィルター枠

Planar T* 85/1.4(Y/C)に推奨されるメタルフード4を使用すると純正フードHN-20より深くなる。私にはいまひとつ格好がいいとは思えないけれど、85mm F1.2やF1.4クラスにはいちばんバランスがよさそうで、ネット上で検索するとキヤノンNew FD85mm F1.2Lにもこの組み合わせで用いている方を見かける。

ただし、AI Nikkor 85mm F1.4Sではメタルフード5でもけられないところをみると、メタルフード4ではハレ切れの効果があるのかどうかは疑問だ。とはいえメタルフード5をつけるとなお大げさな感じになるので、ふだんの持ち歩きにはメタルフード4のほうが好きだ。HN-20で済んでしまうのかもしれないとはいえ、HN-20では深さが足りない。だがスタジオでのブツ撮りにつかうのではないので、蛇腹式フードでは持ち歩きにくいし……と30年来考えてきたのだが。

【追記】このあとやはりメタルフード4では効果をいまひとつ感じられず、いまはメタルフード5を装着している。大げさに見えるけれど効果はある。

AI Nikkor ED 180mm F2.8Sおよび AI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-ED

コンタックスメタルフード5+コンタックス72/86リング+⌀72mmフィルター枠

AI Nikkor ED 180mm F2.8S+コンタックスメタルフード5
+コンタックス72/86リング+⌀72mmフィルター枠
AI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-ED+コンタックスメタルフード5
+コンタックス72/86リング+⌀72mmフィルター枠

組み込み式フードのAI Nikkor ED 180mm F2.8SとAI AF Nikkor 180mm f/2.8D IF-EDにはメタルフード5はバランスがよく、組み込み式フードの浅さと容易に引っ込んでしまうことを気にされているみなさんにお勧めできるのがこれ。メタルフード5とコンタックス72/86リングのうち、望遠用⌀86mmのレンズフードは少ないのでメタルフード5は貴重な存在だった。ただし180mmにはメタルフード5ひとつだけでは本来は長さは足りないとは思う。もし前部にもネジが切ってあれば、メタルフード5などをさらに連結できるのでなおよかったのにね。じっさいにはネジは前部には切られていないので連結使用は不可能だ。

また、コンタックス72/86リングは価格が向上しつつあり探すには時間をかける必要があるかもしれない。各種ステップアップリングだけでメタルフード5を組み合わせても実用にはなる。そんな貴重な組み合わせにもかかわらず私の使用目的はレンズの保護が主目的だ。これを装着しておけばレンズ交換のあいまにどこかに置くのもためらわなくなる。レンズ自体、とくにAFのDタイプレンズは逆光にもともとそう弱くはない。

気になるのは三脚を使用して風景撮影などで長時間露光を行う場合。フードの口径が大きく長くなることで風を受けて揺れやすくなる。これは180mmレンズやコンタックスメタルフード固有の問題ではなく、望遠レンズの長いフードをつけた場合に共通する問題だ。露光中に三脚ごと揺らさないように注意しよう。これがいちばんの使用上の注意事項だろう。

だからフレア対策をさらに行う場合にはこれ以上フードを延長して深くするのではなく、黒いパーマセルテープなどを開口部の四隅に貼るほうがいいだろう。ライブビューで確認しながらけられるぎりぎりのところに貼りつける方法だ。ほかのものもそうすればいいという話もある。三脚を立てて逆光で撮る場合ね。

【追記】このあと、180mmには密林で見つけたさらに長い⌀86mmのメタルフードを使用することにした。

けられの確認とステップアップリングの反射対策

こうやってああでもないこうでもないとレンズフードの組み合わせを考えるのはおもしろい、と考えてしまうのは私が「フード病」の患者だからだろうか。合体や変形するロボットの玩具を楽しむ子どもと変わらなそうだ。

さて、このようにもともとのレンズのアタッチメントサイズがことなる非純正レンズフードを用いる際の一般的な注意事項はいくつかあることを記しておきたい。記載する順番が逆ではあるが。

まずは、本文にもあるように、装着時に画面端がけられないかを確認すること。けられとはフィルターやレンズフードが画面内に黒く写り込んでしまう現象のことだ。確認方法はむずかしくはない。一眼レフであれば必ずライブビューモードにしてレンズの絞り値をF22やF32というように最も大きくして(最大絞り値、すなわち最小絞りにして)、できるだけ均一に照明が当たっている明るい部屋の白い壁をのぞいてみよう。一眼レフの視野率の低い機種ではファインダーではわからないことがある。だから、ライブビューでの確認が必須だ。ピント位置も無限遠とできれば最短撮影距離のどちらも確認しておきたい。

もうひとつの注意事項はよけいな乱反射(フレア)が起きないかどうかの確認だ。コンタックスメタルフードには内側に溝加工と反射防止塗料が塗装されているので、フード側には問題はないはずだ。ところが、私の使用したステップアップリングは内側に反射防止対策がなされておらずきらきらと光る。そして、装着した状態でデスクライトなどの電球を画面に入れて写すと、やはり内面で乱反射が起きる。レンズフードを用いるのにステップアップリングのせいで乱反射が起きるのでは、私がいくら外観ばかりを気にする「フード病」患者とはいえさすがに困る。

そこで、私は家にあった植毛紙を細く切り出してステップアップリングの内側に貼りつけた。反射自体はこれで防ぐことができるが、植毛紙はときおり交換する必要があるだろう。

植毛紙を貼ったところ

現在のカールツァイスレンズどころか、京セラコンタックスボディも同シリーズ用カール・ツァイスレンズも所有も使用さえしたことがないのに、Y/C用メタルフードだけはむかしから持っている患者がお届けする記事は以上です。なにこの『地下生活者の手記』(ドストエフスキー)は。「一杯の茶を飲めれば、世界なんか破滅したって、それでいいのさ」ってやつか。いやいやいや、とんでもない。みなさんのしあわせな趣味生活をお祈りいたします。そして俺の無事も祈ってくれ。

【注釈】
*1 カール・ツァイス:現在はCarl Zeissはカタカナでは「カールツァイス」と「・(ナカグロ)」なしで表記する。だが、カタログなどの京セラ発行物を参照すると、京セラ時代の製品では基本的にはカタカナ表記ではナカグロつきだ。CONTAX 167MTなどの1980年代の製品カタログの一部にはナカグロのない表記もあった。ただし、1990年代のカタログは細部にいたるまで「ナカグロ」はある。この不統一ぶりはフォントによるものか、編集責任者の裁量によるのか。欧文では現在は企業名はZEISSと大文字で記しているようだ。レンズ本体の刻印は時代や提携先を問わず"Carl Zeiss"とある。あれこれ迷いつつ、本稿に出てくるレンズは現在の製品ではなく京セラ時代のものなので「カール・ツァイス」とナカグロつきで表記することにした。

*2「しかしながら、かの親鸞も申しておりますように、善人なおもて往生す、まして悪人においてをや。人はみな、ただ一人旅に出て、ふり返らずに、泣かないで歩くのであります。ああ、誰が知るや、百尺下の水の心……。人間誰しも悩み苦しみ過ち、そして、成長し桃太郎は満州に渡ってジンギスカンになるのであります。かの大ギュエイテ曰く、苦悩を経て、大いなる快楽に至れ、というようなワケでして」:劇場版アニメ『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』(1984年)より引用。劇中に出てくる友引高校校長のセリフ。

◆コンタックスメタルフードの種類、組み合わせや適合については、コンタックス専門店であるカメラの極楽堂Webサイト内の解説ページを参照されたい。検索して見つけてね

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