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【ニッコールレンズとレンズフードの話】『閃光のAI Nikkor 50mm F1.8S』第2章……AI Nikkor 50mm F1.8SにはHS-14が使えるのではないかと試してみた話

【おことわり】
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AI Nikkor 50mm F1.8Sのレンズフードについてしつこく考えた

AI Nikkor 50mm F1.8S(国内版)。この個体は非AI露出計連動爪つき絞り環に交換されたもの

前回のnote記事および私のブログ2021年5月31日づけのエントリー「【ニッコールレンズとレンズフードの話】『閃光のAI Nikkor 50mm F1.8S』……AI Nikkor 50mm F1.8Sに有効かつ似合うレンズフードというものは存在するのだろうか」は、おかげさまで多くの方に読んでいただいている。まず、そのことについてみなさんにお礼申し上げます。

同時にいつも思う。おまいら、AI Nikkor 50mm F1.8Sがほんとうに好きだな……と(失礼)。最短撮影距離0.45mの国内版の販売時期はそう長くはなかったものの、生産数は少なくはないのか、そう珍しいレンズではないのだが。でもまあ、少なくとも1990年代から「わかっているひとは好んで使うレンズ」ではあったように思う。AI Nikkor 50mm f/1.4Sのほうがユーザー数がずっと多そうだ。

さて、今日のエントリーはその2021年5月のエントリーの補遺というべきか、続編となるものだ。AI Nikkor 50mm F1.8S用のレンズフード問題について書いていこうと思う。

筆者は逆光で撮るのが好きなくせに、フレアがまったく好きになれない。正確にいうと、画面に必要に思えたり、非常に効果的なフレアならばいい。だが、筆者がそう思えることはなかなかない。女性を逆光で撮影してフレアを生かしてみる、というのは筆者も嫌いではない。雰囲気描写にうまく活かせる「必然性」があればいい。

ついでにいえば色収差もまったく好きにはなれない。残しておいて作画になにか効果があるようには私には思えない。

だから、ふだんは古いレンズを使うくせに「いかにフレアを生じさせないか」をしつこく考えている。いや、正しくはフレアを出す出さない、使う使わないということを自分で制御できたらとさえ思う。それならば、新しいレンズを買うほうがきっと手っ取り早いにちがいない。

以前のエントリーでも書いたように、AI Nikkor 50mm F1.8Sは強い光に対してあまり強いとはいえない。純正レンズフードはラバーフードのHR-4が指定されていた。私はラバーフードの利便性は大いに認めつつも、外観や劣化してゴムがだんだん白くなるところが気に入らない。

だから、AI Nikkor 50mm f/1.4S用のスプリングフードHS-9や、キヤノンES-52そっくりのドームフード、あるいは、Sタイプになる前のAI Nikkor 50mm F1.8用に指定されていたスプリングフードHS-11を某カメラ店のジャンクワゴンで最近ようやく見つけて、その日の気分にあわせて使っている。

「その日の気分に合わせて使う」とは、レンズフードに実用性や実効性よりも、外観ばかりを重視するまさに「フード病」の患者らしいのではないか。胸を張っていばることではないが。

AI Nikkor 50mm F1.8SとスプリングフードHS-11

そんなある日、AI Nikkor 85mm F2SやLUMIX G VARIO 45-150mm F4.0-5.6 ASPH. MEGA O.I.Sに使っているニコンHS-14をなにげなくNikon DfボディにつけたAI Nikkor 50mm F1.8Sに装着して、ファインダーを覗いてみたところ驚かされた。四隅がケラれないのだ。このフードは本来はAI Micro-Nikkor 105mm f/2.8S用のものだ。

APS-Cサイズフォーマット(Nikon DXフォーマット)のボディにAIAF Nikkor 50mm f/1.4Dを使っていたころには、このHS-14を組み合わせていた。だが、35mmフルサイズボディにAI Nikkor 50mm F1.8Sを装着した状態でHS-14が使えるとは。

ちなみに35mmフルサイズでは、AI Nikkor 50mm f/1.4SならびにAIAF Nikkor 50mm f/1.4DにはHS-14はケラれてしまい使えない。

たしかに、マニュアルフォーカス時代のニッコールレンズ用純正のレンズフードは保護用フィルターなどが使わせることを考慮しているのか、焦点距離や画角に対してずいぶん短いものが多い。斜光線を切る用途にはとうてい足りず、レンズ最前面の保護用にしかならないものが多い。以前、AI Nikkor 85mm F1.4Sで有効なフード探しをした記事も書いた。それでも、105mm用のレンズフードがAI 50mm F1.8Sに使えるって……驚くだろ、そりゃあ。えっ、私のレンズのフード短すぎ(古い)。

AI Micro-Nikkor 105mm f/2.8S用HS-14を装着した

レンズフードの装着可否は「最大絞り値」で確かめるべし

光学設計者などならば、レンズの口径や瞳の位置、画角や焦点距離などからレンズフードの適切な寸法を計算できるのだろう。そういう計算式を解説しているものも見たことがあるが、筆者には何度読んでも理解しきれない。だから、デジタルカメラに装着して確かめるほうが手っ取り早い。

ちなみに、純正ではないレンズフードを装着して画面四隅がケラれないかどうかを確かめるには、一眼レフであればライブビューで、ミラーレスカメラでも背面モニターで確認する。ファインダーでは確認しきれないだろう。

そのとき、レンズの絞りは最大絞り値(最小絞り、いちばん大きな数字の絞り値)にすること。絞り開放ではレンズの周辺光量落ちなのかフードのケラれなのか、よくわからない。また、ヘリコイドは全群繰り出し式のレンズであれば無限遠にして、白い壁などを写してみる。プラスの露出補正をして真っ白に写るようにしよう。

白い壁を最大絞り値(最小絞り)で撮ってみよう。
ファインダーではなく背面モニターで確認しながら撮ること

AI Nikkor 50mm F1.8SにHS-14を装着してそうやって何度も何度もしつこく確認してみても、四隅がケラれない。青空も写してみても同様だ。ということは、この組み合わせは実用になる。なお、保護用フィルターなどはいっさい装着していない。レンズに直接レンズフードをはめている。

そういう状態で夕方の斜光線を浴びた被写体を撮った。手持ち撮影なので2つのカットで画角が完全に揃っていないのは申し訳ない。

レンズフードなし
HS-14を装着したもの

別の日の夕方に、やはり斜光線を浴びる茶葉を撮ってみた。こちらも手持ち撮影だから、画角が揃っていないところはご容赦されたい。

レンズフードなし
HS-14を装着

いずれもフレアが生じているカットはレンズフードなし。フレアをカットできているものはHS-14を使用した。HS-11を試していないのは、どうみてもあきらかに長さが足りないと思えたから、こういう状況で試す気にならなかったからだ。おそらく、レンズフードなしと同じ結果になったはず。

こうやってみるとAI Nikkor 50mm F1.8SにはHS-14の組み合わせは、なかなか健闘しているように見える。少なくとも、ある程度の斜光線を切ることはできる。

「HS-14いいじゃん」と思いつつもっと意地悪をしてみると

こうした画面全体を覆ってしまうベーリングフレアとは、レンズ前面に斜光線があたり、それがレンズ鏡筒内やカメラ内部にあたり乱反射を起こすために生じる。

現代の最新のデジタルカメラ用レンズは、レンズ鏡筒内やカメラ内部の反射防止対策がずっと厳密に行われ、レンズのコーティングも強化されているから、フレアは生じにくい。それでも、画面内に強い光源が写り込むような状況では、フレアやゴーストは生じる。

AI Nikkor 50mm F1.8Sは自分の感覚では「クラシック」とは思えないが、それでもデジタルカメラ以前の1980年代のレンズだ。あえていえば「モダンクラシック」とでもいおうか。だから、レンズフードを長くしても、フードのない状態よりは意地の悪い斜光線をカットすることはできても、画面内に強い光源がある場合には、その悪影響はレンズフードだけでは防ぎにくい。

さらにいえば、お世話になっている写真家の小山壯二さんにいわせると「円筒形のフードはたいして効果はない」のだそうだ。小山さんは宝石などの商品撮影に蛇腹フードを使うそうだ

以下は、正午過ぎの太陽を浴びる樹木を撮ったものだ。太陽は画面内ではないが、画面外のすぐ左上に位置していた。

レンズフードなし
HS-14を装着
HS-14を装着し、さらに左手で太陽光を遮った (つまり「ハレ切り」をした)

上から、レンズフードなし、HS-14を装着したもの。そして、一番下はHS-14を装着し、そのうえで左手で太陽の光を隠した。左手で「ハレ切り」(フレアカット)をしたということだ。

*ハレーションとはフィルム面に反射した乱反射をいうのが本来の意味のようで、厳密には「フレアカット」「フレア切り」というべきだろう。だが、広く「ハレ切り」が慣例的に用いられているので、本稿ではこの単語を使っている。

下のカットは日没直前の斜光線を浴びる緑の葉だ。同様に、上からレンズフードなし、HS-14を装着したもの。そしてHS-14を装着しつつ左手で斜光線を隠したもの。

レンズフードなし
HS-14を装着
HS-14を装着し、左手でハレ切りしたもの

結論としては、HS-14はAI Nikkor 50mm F1.8Sに使用できるし、HS-11よりも斜光線を切る効果は高い。それでも、意地の悪い斜光線にはハレ切りも併用しないと、フレアのカットはレンズフードだけではできない、ということ。

何かでハレ切りをする必要があるならば、HS-14ではなくても好きな外観のレンズフードを使うのでもいい気がする。そうなると結局は、前回のエントリーと同じ煮え切らない結論になる。

古いレンズだから仕方がないのだもの。ユーザー自身でレンズ鏡筒内の内面反射防止対策や反射に強いコーティングができるわけではないから。

HS-14は筆者には「AI Nikkor 50mm F1.8Sと組み合わせても、それほど大きすぎない」ようには思えるが「準パンケーキレンズ」といった感じのレンズの薄さは失われてしまう。携帯時は外して撮影時にのみ装着するのもありか。

ゼラチンフィルターホルダーに自作したフレアカット用マスク入れて使うのもいいAIAF Micro-Nikkor 60mm f/2.8Dには常用している。どうしても通常のレンズフードよりも大きくなりがちだから、軽快に使いたいAI Nikkor 50mm F1.8Sで使うことがあまりなかった。

レンズからできるだけ話して光源に近い側でレンズ前面を影にすること

なお、ハレ切りをするにあたって重要なのは、できるだけレンズから離れたところ、光源に近いところでレンズ前面に当たる光を遮ることだ。カメラのホットシューやレンズ前面に装着するハレ切りボードを自作しているひとは少なからずいる。市販品もあるようだ。

三脚を使用できる状況ならば、筆者の経験上いちばん確実にハレ切りできるのは傘(アンブレラ)だ。カメラをセッティングしてから、左手をできるだけ光源に近づけて傘を差す。

黒いふつうの折りたたみ傘 (ベルボンアンブレラクランプUC-6用に持ち手を交換したもの)
アンブレラクランプUC-6に傘をセットしたところ

三脚使用時に筆者が使っているのはベルボンのアンブレラクランプUC-6だ。残念ながら販売終了だそうで、店頭在庫にある限りだろう。ここ数年で倍くらい値上がりした。なお、UCは「宇宙世紀」とか「ユニコーン」の略ではなさそうだ。

「バナージ、たとえどんな現実が突きつけられようと、『それでも』と言い続けろ。自分を見失うな」(『機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096』)

閑話休題。このアンブレラクランプに付属する、ストロボの反射傘にも使えるアンブレラは内面に塗布された反射材が劣化したので、いまは市販の黒い折りたたみ式の雨傘を使っている。雨の日にももちろん役立つ。真夏の撮影で待ち時間が多い場合には、日陰を作ることでカメラを発熱させずに済み、自分の体力も奪われない。強い光は体力を消耗させるからね。

カメラのホットシューにハレ切りなどのボードや傘を立てられるようなアダプターも市販品にあるが、ホットシューはそれほど丈夫ではないから私には恐ろしくて試せない。

アシスタントがいる業務の撮影ならば、アシスタントにハレ切りもしてもらうだろう。

しかし、ここに来てくださる大多数のみなさんや、私自身の趣味の撮影での単独行での手持ち撮影の場合には、雨傘は使いにくい。なにか工夫をしてハレ切り用のボードなどを使うほかないかもしれない。左手でハレ切りをすると片手で撮影することになるから、それもできるだけ避けたいところだ。

古いレンズは強い斜光線の差す状況では使わないというのも、解決方法のひとつだ。ただし、筆者にはそれはおもしろくはない。また、画面内の何かで太陽や光源を隠す方法も考えたい。これは「光源の近くでハレ切りをする」のと同じ理屈だ。

古いレンズでの撮影は知恵と工夫で乗り切るしかない。それもまた写真撮影のおもしろいところ、といえるかもしれない。

太陽を画面内に入れた
少しだけ移動して葉で太陽を隠した。 これだけでもフレアは防ぐことができる。
「光源に近いほうでハレ切りをする」のと同じ理屈だ

※本稿内で「AI Nikkor 50mm F1.8S」と「AI Nikkor 50mm f/1.4S」というように「F〜」「f/〜」という2種類の表記がなされていますが、表記ゆれではありません。2010年ごろまでは「F〜」という表記がなされていたためで、「AI Nikkor 50mm f/1.4S」も発売時は「AI Nikkor 50mm F1.4S」という表記でした。その表記ルール改定以前に終売になったレンズは「F〜」、それ以降にも販売されていたものは「f/〜」として本稿では発売終了時の表記にしています。そのために2種類の表記が混在しています。

【撮影データ】
Nikon Df/AI Nikkor 50mm F1.8S/RAW/Adobe Photoshop CC 2024

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