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【Nikon1シリーズ】なつかしいNikon 1シリーズのこと(V1ボディ外観と操作系編)
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V1ボディのこと
先日Nikon 1シリーズについて記事を書いていて、いまとなっては覚えていないことがたくさんあった。いま覚えていないことは今後も必要のないことかもしれない。それでも、自分への備忘録として一時期よく使っていたNikon 1 V1のことを書いておこうと思った。
そう思って改めてバッテリーをボディに入れて通電し、外観写真も撮り下ろした。先日の記事には外観写真がなくて作例ばかりなのは、まともな外観写真が手元にはなく、撮り下ろすのが少々おっくうだったから。しかし、手を抜くのはよくないなとも思ったしだいだ。
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右は1 NIKKOR 10mm f/2.8と社外品スリット入り広角用フード
筆者が所有していたのは「Nikon 1 V1」ボディと「1 NIKKOR 10mm f/2.8」(27mm相当)の「薄型レンズキット」、そして純正グリップ「グリップ GR-N1000」と「1 NIKKOR 18.5mm f/1.8」(50mm相当)、さらに「マルチアクセサリーポートアダプター AS-N1000」。発売は2011年10月だが、2013年8月に手に入れた。
V1だなんて名前は、まるで「報復兵器1号」……報復兵器とかZとか、はたまたニーコン……フォカヌポウデュフフ……おや、誰か来たようだ。うわなにをするくぁwせdrftgyふじこlp
もしかして「天才が考えた操作系」なのかも
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基本的には説明書を読まずとも、一眼レフを使ったことのあるひとならば操作できるとは思う。ただし、いろいろと思い切った操作系ではあるので「一眼レフと同じ」ではない。いま実際にV1に触れながら書いていて、少しずつ思い出してきた。
ボディ上面は動画撮影ボタンと電源ボタンとシャッターボタンがあるだけ。主な操作は背面で行う。ファインダー右側にあるF印のボタンは「フィーチャーボタン」という。いまのカメラならばここにいろいろな操作を割り当てることができそうだが、通常の静止画撮影時にこのボタンでできるのはメカニカルシャッターと電子シャッターの切り替えのみだ。
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撮影モードダイヤルがあるが、ここで切り替えができるのは「モーションスナップショット」「スマートフォトセレクター」「静止画」「動画」のみ。絞り優先AEやマニュアル露出モードなどの露出モードは、メニューから切り替える。つまり、「メニューボタン」を押していちどメニュー内に入る必要がある。これはかなりまごつかされた。筆者はだから、「静止画」モードにしていることが大半で、V1の露出モードは絞り優先AEしか使ったことがない。
右下の「OKボタン」の周囲の上下左右のボタンは、「AE-LおよびAF-L」、「露出補正」、「フォーカスモード」、「セルフタイマー」のためのもの。これらはその周囲の円形をした「ロータリーマルチセレクター」と組み合わせて使い、決定したらOKボタンを押す。露出補正を多用する筆者はこれにもまごついた。
AF測距点を変更するにはまず最初にOKボタンを押してから、ロータリーマルチセレクターを動かして、決まったところで再度OKボタンを押す必要がある。一眼レフのつもりでOKボタン周囲のボタンを押してもAF測距点を動かせないのだ。これも最初はいらつかされた。
だから、シャッターボタン半押しのままでAFロックだけではなく、AEロックも同時にかける設定にしてしまった。そのために、フォーカスモードは筆者にしては珍しくAF-Sを常用していた。シャッターボタンを半押しし続ければAFロックし続けるからだ。AF測距点もしたがってほぼ中央のみしか使わずAFロックを頻用していた。筆者はニコンの一眼レフカメラはみなAF-Cでしか使っていないし、AF測距点をこまめに動かすのだが。
だが、V1ではAF-Sにすればロータリーマルチセレクターを使う頻度を下げることができる。そういう理由でAF-Sにしていたのだ。被写界深度が深いし、10.5mmと18.5mmしか使わなかったしね。
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ボディ背面のAE-L/AF-Lボタンを使わないようにしていた
こう思うと、ニコンのカメラとしてはずいぶん思い切った操作系の変更がなされている。そして、ボタンに割り当てられている機能の変更ができない頑固な仕様だ。
なんとなく想像したのは、このカメラの操作系は天才がぐいぐいリードして作ったのではないかということ。それも「このカメラは動画と静止画を組み合わせて楽しんでくださいね」という提案をするために、いままでと同じ操作系である必要はないよね、と考えている天才だ。
いっぽう、キヤノンやパナソニック、いまのソニーのカメラは「秀才が会議を重ねて作った」「いろいろな部署を回ってハンコがたくさん押されて決定した」操作系のように思えて、非常に小慣れていると思うことが多い。このV1に関してはそういう感じがしないんだよな。あくまでも妄想に過ぎないが。
その後の時代のカメラの背面モニターのように、V1もタッチパネル式ならばよかったのだろう。でも、それもいまだからいえることで、当時はコスト的にタッチパネル式モニターを使うのは難しかったのだろう。Nikon 1にタッチパネル式モニターが使われたのは2014年のV3とJ4からだそうだ。
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右の「サムネイル/拡大レバー」で絞り値の操作を行う
絞り値の操作は「サムネイル/拡大レバー」で行う。これはそう悪くはない。一眼レフのコマンドダイヤルと位置も似ている。
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バッテリーは「Li-ion リチャージャブルバッテリー EN-EL15」で、これは当時のD7000などとも共通だ。これはとても便利だったし、電池容量が大きいので電池切れに悩まされることが少なかった。記録メディアはSDメモリーカードで、SDHCとSDXCにも対応している。UHS-I規格だそうだ。
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ただし、「グリップ GR-N1000」を装着するとバッテリーとメディアを着脱しにくくなる。だから、メモリーカードは大きめの容量のものを使うほうがいい。このグリップはホールディングがよくなるので、使うと何かと便利なのだが。
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これを使っても一眼レフ用スピードライト用のJIS規格の接点がないので
専用スピードライトではないと接続できない
もうひとつまごつかされたのは、「マルチアクセサリーポート」という名の独自の専用スピードライト用接点は設けられているのに、JIS規格のホットシューがないために、一眼レフ用のスピードライトが使えないこと。「マルチアクセサリーポートアダプター AS-N1000」を買っても接点がないので発光できない。Nikon 1シリーズにはそういうわけで専用のスピードライトが用意されていた。
筆者はカメラの内蔵スピードライト(V1にはない)があるカメラでもほとんど使わないが、外付けのスピードライト(クリップオンストロボ)は業務では非常によく使う。それが使えないこのカメラは従って業務の専用機種にはならず、サブカメラとして使うことが多かった。
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動画機能は相当強く意識されていたようだ。ステレオミニジャック(Φ3.5mm)の外部マイク端子があるので、市販のステレオマイクを使用することができる。筆者はこだわりがないのでニコンブランドの「ステレオマイクロホン ME-1」を使っていた。いまはこれも旧製品だ。
ステレオマイクを装着するとなんというか業務用機材という雰囲気が出てくるね。スチルカメラのついでに撮った鉄道の動画はこの組み合わせで撮影している。
HD動画というけれど、V1の動画撮影時の記録画素数は最大1920×1080ピクセル(60i)または 1920×1080ピクセル(30p)。60fps出力だとインターレースだったのだ。
ISO感度設定を見ていて
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前述のようにメカニカルシャッターと電子シャッター(エレクトロニックシャッター)の切り替えができる。筆者は電子シャッターはスローシャッターを求められるクローズアップ系のブツ撮りに使うことが多い。機構部からのわずかな振動を避けるためだ。
マクロレンズが用意されておらず、なおかつストロボ端子が独特だったこのカメラでブツ撮りをすることがなかったので、V1はメカシャッターでしか撮影したことがない。動体歪みを恐れていたからね。そういえば、露出ディレー機能もなかったんだよな。
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「ISO400以上はちょっと自信がありません」という意味だったかも
ISOオートの設定はもちろんできる。この感度設定を見ていて思い出したのは、筆者はこのISO100-400のオートを常用していたということ。単焦点レンズで使っていたのでISO400もあれば十分だった。そしてなによりも、ISO400以上の感度はあまり強くはお勧めできませんよ、という意味だったのだと思う。
単焦点レンズには輪郭強調を減らすといい
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前回も書いたように、V1は階調再現がなんとなく浅いというのか、色に深みがないように思えていた。12bit処理だからか、イメージセンサーと画像処理エンジンの特性なのか。ダイナミックレンジも狭いので、つねにマイナスの露出補正を使っていたし、RAW+JPEG撮影をしてRAW現像をじっくり行っていた。
いまのRAW現像ソフトであるNX StudioやAIノイズ軽減のあるAdobe CameraRawならば、当時よりも高画質に現像できる。ノイズリダクションの設定項目が増えたし、カメラ側の画像処理エンジンに当時は設けられていなかった「ミドルレンジシャープ」「明瞭度」の項目があり、それぞれの効果のために当時よりもくっきりとした絵になる。
なお、Zシリーズの絵がものすごくびしっとして見えるのは、レンズ設計の技術の向上と同時に、画像処理エンジンでこれらの項目の処理がなされるからだ。RAW撮影しておけば、もちろんそれぞれの効果をなくすこともできる。
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「ミドルレンジシャープ」と「明瞭度」が追加されたから。
Zシリーズのカメラがびしびしに写る(ように見える)のも同じ理由だ。
好みに合わせてオフにすることもできる
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ボディ内にはゆがみ補正機能が見当たらない。だから動画ではゆがみが映り込む。
これらも静止画撮影でRAW撮影をしておけば NX StudioやAdobe CameraRawで修正できる
そう思うと、なにかとRAWでも撮っておきたいと筆者は思う。NX StudioでRAW現像をすると最新の「クリエイエティブピクチャーコントロール」も使うことができる。
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「クリエイティブピクチャーコントロール:メランコリック」をあてはめた
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RAW現像でいじるとはいえ、単焦点レンズだけで撮影していたから、撮影時から輪郭強調を1STEPだけ弱める設定のカスタムピクチャーコントロールを作って使っていた。これだけで「コンデジのようなパキパキした感じ」がなくなってぼけ像が大きくなってよかった。ただし、ズームレンズで使うひとは初期設定のままでいいと思う。
ミニマムデザインだからデコり甲斐がある
こうしてひさしぶりにNikon 1 V1を振り返ってみると、いろいろと懐かしく思えてきた。いまのカメラではあたりまえにできる機能がまだない。格子線表示はできるのに電子水準器が搭載されていないとか。
そうだ、このカメラはボディ内RAW現像もできないのだ。トリミングやDライティングを与えることはできるのに。
そして、前回も書いたように、クリエイティブモード(他社では「アートフィルター」「フィルター効果」などという名称の、特殊な絵作りのモード)も備えられていない。ホワイトバランスの数値入力もできなかったし、アスペクト比の変更もできない。これらはおそらくは当時ニコンが購入していた画像処理エンジンの仕様なのだろう。
でもAFは先進的だったから、撮影に不都合はあまり感じなかった。レリーズタイムラグはやや大きめではあるけれど、レリーズの感触も悪くはない。だから、真面目に撮ることはできるけれど、静止画関連の遊びの要素が少ない「すいぶん生真面目なカメラ」だという印象が強くあった。
デザイン的にみると、非常にシンプルでミニマリズムという感じもある。機能的にもミニマムといってもいいのかもしれない。そのせいか、アクセサリーをいろいろと装着してみるとどれもうまく収まるように思える。
ようは使い方を考えること。静止画における「お遊び」のような機能がないのと、操作方法が少々変わっているだけだ。真面目な写真を撮るにはこのカメラはじゅうぶんその用途を果たすことができる。
このカメラの発売直後に、白いV1にキヤノンゼラチンフィルターホルダーを装着して濃いマゼンタやオレンジのゼラチンフィルターを使って風景を撮っているカメラマンのブロガーの方がいたことを覚えている。V1にゼラチンフィルターホルダーをつけたその姿と、できあがりの絵がかっこよかった。そういう例を「見てしまった」ことも、自分が当時V1を手に入れたきっかけなのだった。
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Nikon 1 V1が自分にとって好ましかったのは、ボディサイズの小ささとミニマムでシンプルなデザインだったからにつきる。大きなグリップが設けられたV2を好むユーザーが自分の周囲には多くいたが、私はいまでもV1のほうが好きだ。それは、筆者がセンサーサイズが小さいミラーレスカメラに求めるものが「小型軽量であり、それでいて本格的な撮影もできるカメラ」であることだから。もちろん、あくまでも私の好みでしかないけれどね。
ボディサイズが小さく、それでもきちんとしたレンズを使うことができるから、一時期は毎日のように持ち歩いていた。RAW撮影ができないレンズ固定式のコンパクトデジタルカメラでは筆者はもの足りないのだ。
筆者はたいていのカメラは好ましく思うし、自分なりの使いこなし方を見つけ出して「慣らしつける」自信がある。それでも、そう簡単にはカメラを買い替えない人間だから、よく使ったV1に対して愛着はあった。こうして振り返ってみても、たくさん書くことがある。だから、V1は筆者にとっても重要なカメラのひとつだったといっていい。今後もこういう興味深いカメラに出会えたらと願っている。
*外観写真の背面モニター部分のメニューははめ込み合成です。
【おことわり】
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