【短編】契約結婚相手の新たな一面を知りました テーマ:毒ガス
☆若干の虫描写注意
画像などはありません。
「これは契約結婚だ。世間体のためにした話にすぎない。」
新婚初日、ツカサさんの澄んだ鋭い瞳に射抜かれて、わたしは言葉を失った。
話は去年まで遡る。わたしは、緑が多い故郷からはるばる東京に就職した。
家族や友達からは、
「のんびりしているフウカに東京なんて無理よ!」
なんて反対されたけれど、お父さんの鶴の一声で東京行きが決定した。
「まあ、でもたくましいところもあるしなあ……。」
そんなこんなで、小学生の時に見たドラマで憧れたきれいなオフィスでのOLになれて、わたしはとても満足していたのだ。
だけど……。
「俺と結婚してほしい。社内では、内密に。」
ある日、たまたま会社ですれ違った、次期社長で美青年の御曹司、篠宮ツカサさんに突然プロポーズを申し込まれたのだ。
ドラマみたい!とばかなわたしは興奮し、うちの両親は赤べこのように首を縦に振った。
そしてトントン拍子に結婚話が進み、わたしはツカサさんのタワマンに引っ越してきた……。
その矢先に、冒頭のセリフだ。
「だって、結婚してくれって言われたから答えたのに……。」
「悪いが、見合いを断るための結婚だったんだ。誰でもよかった。」
ツカサさんは麗しい低音ボイスで、ゆっくりと話す。言っている内容は、とても冷たい。
「そうは言っても……。」
話の途中なのに彼はくるりと背を向け、落ち着いた足取りで部屋を出て行こうとした。
「待って!せめて、生活だけでも、協力しませんか?こう見えてわたし、家事には自信があります。実家にいた時も、いろいろ頼られていたんですよ。例えば……。」
ツカサさんはピタッと立ち止まった。微動だにしない。わたしは、彼に近づいた。
「ツカサさん?」
すると、彼はとんでもない悲鳴を上げてバネのように飛び退いたのだ。
タワマンをもプリンのように揺るがす声量だった。
わたしはひらりと避けて、広い背の向こうをそっと覗くと、なんと小さく黒い人類の敵がいた。
ツカサさんは、高音でまくしたてた。
「あーーーーーまじ無理まじ無理!だからタワマン買ったのに、どこまでついてくるんだよぉ!スプレー、スプレー!」
喚きながら、奴と似た動きで床を這いつくばりながら逃げていく。
わたしは、笑いを堪えながらその肩にそっと手を置いた。ビクッと体が震えた。
「大丈夫。スプレーなんて、必要ないから。」
わたしは、自分の履いていたスリッパを黒い塊に振りかざし、ズバンッと音を立てて仕留めた。淡々と後処理を始める。
髪やスーツが乱れ呆然と座っていたツカサさんの視線は、ずっとわたしの方を向いていた。あえて無視した。
「さ、終わりましたよ。」
振り向いてそう言うと、彼はポツリと呟いた。
「結婚してください……」
わたしは、しらっと答えた。
「もうしてますけど?」
Fin
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
裏設定:「奴」は、ツカサさんのカバンとともに侵入して来ました。
お久しぶりです!高原梢です。
今回は、はがきには長すぎるためボツにしようと思っていたお話を出してみました。
(久々にあげたお話が虫系ってどうなん……)
ちなみに、高原は虫苦手なのでツカサさんの気持ちがよくわかります。
でも、将来は田舎で暮らして、ハーブやお花の庭を育てたいな〜と妄想しているので、いつかは克服しなくちゃ!と思っています汗
虫が苦手で、克服した方の方法を知りたいです……。画像とかもダメなんで……。
☆⭐︎
最近、漫画の広告がよく入ってくるのですが、その多くが契約結婚のなろう系、意地悪な友達に彼氏を取られたけれどもっと素敵な彼氏ができました系、優秀な姉妹の身代わりで結婚させられたけれど幸せになれました系なんですよね。
パターンはお決まりですが、どーしてもおもしろくて読んじゃうんですよね!先が気になって!もはや、水戸黄門を見ている気持ちです。
なので、自分でも作ってみよう!と書いたのが本作です。
似たような作品があったらすみません。
自分で書いてみると難しいものですね。漫画原作の方は、これを何十巻と続けてバランスを取っているんですよね?すごいなあ……。
もっと面白いものを書けるようになりたいな〜。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
素敵な画像をお借りしました。
はがきサイズの物語、テーマ募集しています。
思いついた言葉を、お気軽にコメントください。
それにあった物語を書きます。
その他、なんでもリクエスト大歓迎です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?