スティーブン・ジェイ・グールド「ワンダフル・ライフ」
ネットでぬいぐるみの画像が出てきました。
犬でも猫でもうさぎでもない……動物?
ロボット? いや違うな……。
次の瞬間、気がつきました。
「オパビニア!」
スクロールすると他にも出てきました。
「ハルキゲニア」「マルレラ」……。
これらはカンブリア紀に生息していた古代の軟体動物なのです。
ということで、書棚からとりだしてきました。知る人ぞ知る名著「ワンダフル・ライフ」です。
……
表紙を見ただけで、マニアはすぐに『ああバージェス頁岩の化石ね』と理解していただけると思いますが、そのとおり、世界を震撼させた(そこまでいかないか)奇妙奇天烈な「軟体性動物」の化石の発見にまつわる物語です。
著者はその発見に携わった中心人物のグールド博士です。
1909年、カナダのロッキー、スティーブン山に連なる山系の斜面に露出していたカンブリア紀中期の頁岩層(バージェス頁岩)から夥しい軟体動物と思しき生き物の完全な化石が発掘されました。
これらの化石はこれまで世界中のどこからも発掘されたことがなかったのです。
そして、その形状の不可思議さ、また現代の生物の系列に連らない唐突さによって、古代史を覆してしまったのです。
軟体動物の化石? 実は普通あり得ません。
化石は骨格や硬い殻が石化して地中に残り、それが世に出されて化石として認識されるのですが、普通、骨も殻もない軟体動物は化石になりません。
なぜか?
生き物は死骸になったのち、即座に全身が海の掃除屋的な生き物に食べられてしまうか、腐敗して消失してしまうためです。
でも、骨と殻は食べられないし腐敗しにくいので残るわけです。
バージェス頁岩の軟体動物はなぜ化石となったのか?
ネタバレになりますが、それはその海底一帯がなんらかな理由で海中の斜面からより深い底に雪崩れ落ちていき、軟体動物たちは泥と共に底に沈み込み、埋まってしまったからだと考えられています。
そして、深海の底は酸素が極端に薄いため、バクテリアもほとんどおらず、腐敗が進まなかったのだということです。
理由はともあれ、その夥しい軟体動物の化石が見つかりました。
ということでこの本は中程からそこで見つかった奇妙な古代生物たちの解説がイラスト入りで克明に記載されています。
軟体動物、古代生物マニアにはたまらない一冊です。
ハルキゲニア(表紙イラスト中央下)が当初逆さまに表現されていた逸話とか、話題満載です。
ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)
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