コロナ禍で仕事が完全になくなったイベント裏方がもがいた、書き残し #7

今日はある日突然となりにやってきた、"ホンモノの記者"について。

ある日曜日のこと。
日曜の午前中は私は、前日の土曜日に放送されたバラエティ番組の振り返り記事の担当になることが多く、この日は「昆虫好きグラドル」がテーマの番組の振り返り担当になった。番組では昆虫を愛しすぎるグラドルが、自らのお尻や胸に昆虫を貼り付ける姿が披露されていた。
外はとてもいいお天気の日曜の昼下がり。仕事とはいえさすがに「なにしてるんだろ…」と思いながら見ていた。

その日は見たことのないおじさんが私の横に座っていた。
私の新聞社デイズも1ヶ月になろうとしていて、見たことがない人に遭遇することもなくなっていたが、その人はまったく見たことがない人だった。

この状況下だからなのかずっと在宅となっている人がいたので、おそらくその人だろうと思った。その人は割と骨太な記事をアップしているな、と思っていたので(社内イントラ上では誰がどんな記事を投稿したか確認することができる)、昆虫グラドルを見つつ、その突然現れた隣人を観察させてもらった。

その日は日曜なので、「サンデー・ジャポン」の放送日だった(以下サンジャポ)。サンジャポといえば芸能人やコメンテーターが時事や芸能等あらゆるジャンルのネタについて辛辣にコメントするので、記事のネタの宝庫とも言えるだろう。

私が昆虫グラドルをチェックしている横で、その隣人は、音声大きめでサンジャポをチェックしている。テレビの音大きいなあ(汗)と思いながら横目に見ていたら、サンジャポでのコロナ関係の話題が落ち着いたところで急に隣人が声を上げた。

少し離れて座るデスク(以前の投稿参照)に
「●●(デスクの人名)!、4〜5本、書くわ。内容が内容だし一字一句間違えたくないから、じっくり確実に時間かけて出すから」と突如宣言し、ものすごい勢いで記事を書き始めた。

サンジャポだと番組で触れられたコロナの話題一つとっても、爆笑問題、テリー伊藤氏、杉村太蔵氏、等切り口がたくさんある(=記事の生命線である見出しの主人公を量産できる)。隣人はICレコーダーで何度も何度も音声を聞き返しながら、コロナ問題という難しい切り口の記事をバンバン上げていく。「ああ、ICレコーダーで録音するために、大きい音でテレビ見てたのか」と気づかされた。

その日は、前週のサンジャポで、とあるコメンテーターの発言が問題となるか否か微妙な発言をしており、そのコメンテーターによる謝罪が入るかも?となり、謝罪があるかないかそれだけを見張る張り付き担当が別で配置されていた。

隣人は自ら記事をいくつも書きながら、見張り担当の見張りもしていて「おい、謝ったか?お前書くのか?」と確認していた。

その姿を見て鳥肌がたった。

「ああ。これがホンモノの"記者"なんだ」と。

サンジャポが一段落すると隣人はどこからか紙コップに入ったなにかを持ってきて、自席でぐいっと飲み干した。
その姿がまさに、手術後にガムシロを飲み干す大門未知子とダブリ、
それに気づいた自分に興奮してその場で叫びたかったが、さすがにできなかった。

隣人は落ち着いた様子だったので、おそるおそる「先月からお世話になってます」と挨拶すると「おお。●●とかよく担当してる人だよね。よろしく〜」と気さくに返してくれた。ああ、やはり誰が何を書いてるかちゃんと把握してるんだなあ、私の存在なんて今この瞬間に知っただろうに。

あとで分かったことだが、その方は持病があり在宅勤務をしていて、
今後も基本的には在宅となり、この日は生存確認的な出勤だったとのこと。

昆虫グラドルが昆虫に埋もれる姿を確認する傍らで、
ホンモノの記者の"書き様"に触れた、貴重な一日であった。

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