考察「DOWN TOWN BOY」
甘酸っぱく少し物悲しい、懐かしさを感じさせるユーミンの名曲「DOWN TOWN BOY」
ファンでなくても耳にしたことがある人も多いのではなかろうか。
主人公の女性の昔の恋をうたった曲である。
おそらく若いころの淡い恋だ。
不良のふりをするぶっきらぼうな彼を彼女の兄はよく思っていない。
近所の工場裏の空き地で愛を誓い合ったが、いろいろな事情が重なり最終的には二人は離れてしまった。
いろいろあるとは思うけど、今度は夢も恋もあきらめないでねと締めている。
さて、この歌で気になったのは「彼はどうしたかったのか?」ということだ。
おそらく中二病に近いものだったのだろう。
ナイーブで寂しがり屋なのに強がりを言う。
そりゃ、兄貴も心配になるはずだ。
今では死語である「固定電話の取次ぎ」なんてこともしないのは当たり前だ。
本当に彼は孤独で繊細だったのか?
こんなにも想ってくれる人と工場裏の秘密の空き地で愛を誓えるというのに。
私は彼と彼女の恋愛が無事成就するにはどうしたらよかったのかを考えた。
彼女の家族がもっと友好的であればよかったのか?
彼を見た目で判断せず、もっとおおらかな態度で接したらよかったのか?
なんだか、それはあまりにこの幼い二人に優しすぎる気がするのだ。
少なくとも汚いシャツと言われるのであればきちんとした身なりをすればいいし、不良のふりもやめればいい。
それをしないうえに、家族に会うのはいやだなんていうんだから手に負えない。
いやー、幼い。
恋愛が至上であると思っているような彼女も幼い。
この二人は彼女が彼についてはいけないということで終わりを迎えたようだ。
一体何についていけなかったのかは謎だが、なんとなくこのころの雰囲気からすると音楽じゃないのかなぁ。
バンドで一旗揚げるなんて言って町から出て行った・・・。
けっこうありな気がする。
彼女の方はもちろんついてはいけないんだね。
本人たちにとっては「悲恋」である。
この二人の恋愛を成就するのはどうやっても無理そうだ。
彼は音楽にうつつをぬかし、バイトで食いつないでいる。
彼女はついていかなくて正解だ。
兄貴がいい顔をしなかったのも当然だ。
ということがおそらく10年ほどして彼女が秘密の空き地がなくなっていることに気が付いて思い出したのがこの歌である。
どこかで恋をしているのなら、私の時みたいにあきらめないでね。
彼女はあの恋を懐かしく思ってはいるが、まだ立ち直ってはいないのだ。
危ない。
ここで彼にたまたま出会ったりしたら・・・。
真夏の夜の夢が始まってしまうかも。