ゴジラは虹に立ち止まらない
今をときめく天才歌人、木下龍也さんがこんな短歌を詠んでいる。
この短歌を読んだ時、虹を壊さないよう立ち止まり、ポーっと見惚れているゴジラの姿を想像してホッコリした気持ちになった。
そしてこう思った。
「同じものを美しいと思える心があるのなら種を超えて共存していけるのではないか。たとえ相手が強大なゴジラでも。」と。
でも、そんな幻想はゴジラー1.0を見て一瞬で吹っ飛んでしまった。
スクリーンに映し出されたゴジラはカッコ良くて、強くて、美しくて、そしてなにより無慈悲だった。
私が最初に見たゴジラ映画が何という作品だったかは覚えていない。
ただ、その時のゴジラは人類の敵として描かれていたように思う。
その後、何作品かのゴジラ映画を見ていくうちに、いつの間にかゴジラが人類の味方みたいになっていったのに幼い私は少し混乱した。
大好きなゴジラが人類の味方になってくれたのが嬉しかった反面、気高く美しい野獣が飼いならされたサーカスの動物になってしまったような哀しい気持ちにもなった。
だからゴジラ-1.0を見て「やっと私達のゴジラが帰ってきてくれた。」と思った。
幼い頃に映画館で見た、徹頭徹尾カッコ良くて、強くて、無慈悲な、まるで荒ぶる神のようなゴジラが帰ってきてくれたと。
そして同時に「ああ、私達のゴジラは虹を見ても立ち止まらないんだな」とも思った。
ゴジラは決して悪ではない。
善悪で語るなら、むしろ悪は人類の方だろう。
でも、人類はゴジラを撃つしかないのだ。
だってゴジラは虹に立ち止まらないのだから。
タイトル画像について
背景の街並みは「写真AC 」さんのフリー画像をお借りしました。
ゴジラの写真は2023年7月15日(土) 〜 2023年10月29日(日)に開催された「映画監督 山崎貴の世界」に展示されていた作品の写真を使わせていただきました。
上記のゴジラの展示はありませんが、現在松本美術館では山崎監督の第96回アカデミー賞視覚効部門受賞を祝して企画展(ミニ展示って感じですが無料です)をやっています。↑
今週末(2024.3.31)までなので、ご覧になりたい方はお急ぎください
終了しています。
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