麗しのシネマ生活/シャッターアイランド
2024年5月6日 08:21
【シャッターアイランド】
驚きの結末、そして珠玉の現代音楽作品のコレクション
監督:マーティン・スコセッシ
制作:マーティン・スコセッシ、ブラッドリー・J・フィッシャー
脚本:レータ・カログリディス
原作:デニス・ルヘイン
作曲:ロビー・ロバートソン
出演:レオナルド・ディカプリオ、マーク・ラファロ、ベン・キングスレー
2010年アメリカ映画
ストーリー
1954年、連邦保安官テディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)とチャック・オール(マーク・ラファロ)ら捜査部隊は、ボストン港の孤島=シャッターアイランドにあるアッシュクリフ精神病院を訪れる。この島でレイチェル・ソランドという女性が謎のメッセージを残して行方不明となった。強制収容されている精神異常犯罪者たちの取り調べを進める中、その病院で行われていたマインドコントロールの事実が明らかとなる。
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「ミスティック・リバー」で知られるデニス・ルヘインの同名小説を「ディパーテッド」のレオナルド・ディカプリオ&マーティン・スコセッシ監督のコンビで映画化したミステリー超大作。戦争経験のあるテディ(ディカプリオ)の「妄想癖」が出発点でテーマでもある。さらに訪れる驚愕の最後!が大変話題になった作品。しかしそれだけではなく、この作品の最も特徴的なのは『音楽』の扱い。オリジナル劇伴音楽は僅かで、すでに存在する作品がたくさんセレクトされているスタイル。それも現代作曲家の作品。
一般の方には馴染み薄いかもしれないけれど現代作曲家の珠玉の名作ばかり。
1.グスタフ・マーラー / ピアノ四重奏曲
2.ジェルジュ・リゲティ / ロンターノ
3.イングラム・マーシャル / フォグ・トロープス
4.クシシュトフ・ペンデレツキ / 交響曲第三番
5.ジョン・ケージ / ルート・オブ・アンフォーカス
6.ナム・ジュン・パイク / ジョン・ケージへのオマージュ
7.ジャチント・シェルシ / サード・ムーブメント
8.モートン・フェルドマン / ロスコチャペル 2
9.アルフレート・シュニトケ / 賛美歌 II(チェロとコントラバスの為の)
10.ルウ・ハリソン / シンフォニック・ストリングスの為の組曲からノクターン
11.ジョン・アダムズ / クリスチャン ズィール・アンド・アクディヴィティ
12.ブライアン・イーノ / リザード・ポイント
13.マックス・リヒター / オン・ザ・ネイチャー・オブ・デイライト
等
別に作曲家や曲名を知っていなくてもこの「シャッターアイランド」を鑑賞すれば無意識にこれらの音楽体験もなされてしまうわけ。これも実は耳を通した新しい体験・体感。こういったクラシック音楽をベースにした現代音楽の名作が散りばめられた映画作品はあまり例がないけれど、この「シャッターアイランド」については映像と音楽の一体感は素晴らしく、映画作品のクオリティを非常に高めている。
特に、1.で挙げたマーラーのピアノ四重奏曲は新しい音楽ではないけれど知る人ぞ知る名曲で、冒頭から最後に至るまで、何度も聞こえてきてとても印象的。
美しい海と孤島の景色と対照的な精神病棟での閉塞的な日々。ここに現代奏法の音・音響・音楽がブレンドされている、というのが謎めいた空気を一層色濃くしており、この作品に広がりと新しさを与えている。ディカプリオとベン・キングスレーの瞳の演技にも注目。