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自宅から16㎞離れた神保町という場所

今日はどうしても、神保町に行きたかった。
そして神保町から帰ってきたかった。
10年前の3月11日は16㎞歩いて帰った。
会社のデスクの下に、「いざ」というときのために置いてあったスニーカーを、あの日は見つけることができなかった。
強い揺れのあと、一度駐車場にみんなで避難して、余震の続く中、貴重品をとりに戻ったときに、「確かここに…」と思ったところを探ったけれど、スニーカーは見つけられなかった。
その日はたまたま、ヒールの低い、ミネトンカもどきの歩きやすい靴だったからそのまま帰ったのだった。
後日、再び出勤したときに見たら、あの日に手探りしたところに、ちゃんとスニーカーはあった。
きっと、ひどく動転していて、よくわからなくなっていたのだろう。
あの日と、あの日から続く日々の思い出は、神保町にある。
ずっと勤めていた、大好きな街だから。
行ってくることができて、無事に何事もなく、フワッと寒さのゆるんだ春の宵を感じながら、普通に電車で帰ってくることができて、
よかった。

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