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美味しくつながる【感想文の日㉝】

こんばんは。折星かおりです。

第33回感想文の日、今夜感想を書かせてくださったのは川ノ森千都子さんです。

ホームを訪れるとぱっと目を引く「あなたと美味しくつながりたい」というバナー(今回のタイトルにも言葉をお借りしました)。その言葉の通り、記事にはお弁当や朝ごはんなどの色鮮やかな画像が並びます。読んでいるとおなかがぐぅ、と鳴ってしまいそうですね……!改めて、ご応募くださりありがとうございます!

それでは、ご紹介いたします。

■甘やかなるもの…桃

丸くて、柔らかくて、しっとりしていて……。まるで赤ちゃんのような桃が、ちづこさんは大好きなのだといいます。桃、瑞々しくておいしいですよね!私も大好きです。

桃は色や形が幸せな気分にしてくれる。いい匂いをふんわり漂わせて、優しい気持ちにさせてくれる。

こう表現される「桃」の魅力。ちづこさんのこちらの作品も、ふんわりと優しい雰囲気に満ちています。つややかに、上品に紡がれる言葉の隙間に覗く可愛らしさに、胸をきゅんきゅんさせながら拝読しました。

淡いピンクにクリーム色が混ざって少女のほっぺみたい。、はかなげな産毛。両手のひらにこんもり乗る大きさ。
口に入れた時、いろいろな食感があるけれど、私はツルッ、スルン、ふわっと熟して柔らかいのが好み。

果肉にくちびるを当てるとじゅわ、と滲む果汁の瑞々しさや、すっきりとした甘さのあとに残る、ほんの少しの苦みを思い浮かべます。そのままで食べるのも十分おいしいけれど、ちょっぴりおしゃれした姿も桃の魅力なんですよね。

最近はパフェやケーキやタルトにもたくさん使われていて、たまらなくおいしそう。ショーウインドーの中を見ると着飾ったお嬢さまのよう。

たまにはお嬢様の手を握らせていただくけれど、いつもは仲よしの女の子と手をつなぐ感じで、するっと皮をむいて、いただく。

着飾った姿も、「仲良しの女の子と手をつなぐ感じ」も、どちらもいいですね……!桃の季節が、とっても待ち遠しくなりました。

■息子の初めての料理は「おいしくな~れ💖」の魔法スパイス

家に帰るとお風呂や料理など、しなければならないことが満載。頭の中も台所もまるで戦場のようにばたばたして、時間にも気持ちにも余裕がないのに「何かやる~」と言い始めた息子さんに、ちづこさんはイラっとしてしまったことがあったそうです。しかし、そのときに思いついた「魔法の料理」があったそうで……。

少し焦った様子のちづこさんと、そのそばでちょろちょろと動き回る息子さんのシーンから始まるこちらのお話。私にはまだ子育ての経験はないけれど、ちづこさんの中でぴんと張り詰めてゆくものが伝わってくるようで、どきどきしながら読み進めました。けれど、その緊張をふっと緩める「魔法」が登場します。

野菜を煮込みはじめてから、待っているスポッ太に声をかけました。
「これにね、魔法をかけてほしいの。
”おいしくな~れ”っていって、パッパッてして。
そうしたらね、すっごくおいしくなるんだよ」 ※スポッ太:息子さん

抱っこされた小さな息子さんが、ぱっぱっと鍋の上で広げる小さな手。そのシーンを想像して、温かな気持ちがこみ上げます。仕事から帰ってきたご主人の対応も、微笑ましくて素敵です。

遅れて夫が帰ってきて、一緒にごはん。
「これね、魔法かけたんだよ! スポッ太が!」
と自慢。
「おお、そうなんだ(??)。どれどれ」
と食べて
「うん、うまい!」

お父さんからの「うまい!」、きっと息子さんも嬉しかったことでしょう。

もちろん、毎回うまくいくわけではありません。
聞いてくれないこともあるし、その余裕すらないことが多いし。

でもたまにこんなことがあると、親子でうれしい。

毎日がうまくいくわけではないけれど、たまにある「嬉しい」を積み重ねて日々を過ごしてゆく。私もちづこさんのように「嬉しい」を丁寧に書き留めておきたいです。

■エンターテイナーが持っている花🌹という武器

家事をしながら、史上初、無観客で行われた「ウィーンフィル・ニューイヤー・コンサート」を聴いていたちづこさんは、ある美しい言葉に出会いました。エンターテイメントの世界も苦しい状況に置かれている今だからこそ読みたい、力強い言葉が魅力的なエッセイです。

「音楽は花という武器を持っています。殺す武器ではありません。喜びを、希望を、平和を、愛をもたらすのです。
音楽家はエンターテイナーです。社会をよくするという使命があります」

世界的な指揮者、リッカルド・ムーティー氏の凛とした挨拶に、私もぐっと心をつかまれました。殺す武器ではなく、喜びや希望をもたらす武器を持っている。何て誇りに満ちた言葉なのでしょう。

落ち込んだ時に元気をもらいに行ったことがあります。
失恋したときに慰めてもらいました。
心が荒れているときになめらかにしてくれました。
うれしいときは、もっとうれしく明るい気持ちになりました。

どんなときも私たちのそばにある、音楽をはじめとしたエンターテイメント。「不要不急」という言葉をよく聞く世の中になってしまったけれど、エンターテイメントがあるからこそ、私たちの生活が彩られていることもひしひしと感じています。

今出来ることは何があるか。美しい言葉に息をのむと同時に、改めてじっくり考えてみたいと思いました。

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毎週土曜日の「感想文の日」、感想を書かせてくださるかたを大募集しています!(1~2日程度、記事の公開日を調整させていただく場合があります。現在、2/20以降の回を受け付けています)

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