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眩しいこれからを【感想文の日㉖】

こんばんは。折星かおりです。

第26回感想文の日、今回感想を書かせてくださったのは、ゆっこ|yukiko yamada さんです。

元幼稚園教諭のゆっこさんは、現在はNPO法人の一員として子どもたちをサポートする仕事をされています。子どもたちと関わる中で気づいたことや、仕事をしていてふと顧みたこと、それからここでずっと続けていらっしゃる「書くこと」について。記事のテーマはさまざまですが、どのnoteからも真っ直ぐな気持ちがきらきらと零れているようで、1週間私も熱い気持ちになりながら読ませていただきました。改めて、ご応募くださりありがとうございます!

それでは、ご紹介いたします。

■子どもといると、世界がゆたかに見える。

数年前、シッターの仕事を引き受けたゆっこさん。依頼内容は、約1カ月半の間、お母さんに変わって2歳の女の子を保育園まで送るというものでした。片道40分の道は、大人にとっては目を引くようなものがないただの道。けれど女の子の目線では、その道は鮮やかな発見に満ちていました。

ちょっと変わった形の石や、落ち葉を踏んだときの「カサカサ」という音。地面に触れると感じる、ひだまりの温かさ。優しい風景が目に浮かぶような、瑞々しい描写が光ります。そして何とも可愛らしい、女の子のしぐさ。

角にあるお花屋さん。
プランターの中で育っている、赤いイチゴ。
ぱくぱくっと、食べるまねをする。おいしい。

開店前のハンバーガー屋さん。
壁には大きなハンバーガーのイラスト。
そこでもぱくり。
イチゴとハンバーガーで、お腹いっぱい。

読みながら、自然に頬がほころんでしまいます。大人がただ目線を下げただけではきっと出会えない、このゆたかな世界。ゆっこさんは「子どもといるからこそ」発見できるものがあるのだと綴ります。

子どもの感性や発見がおもしろい、というのもある。でも、子どもにのっかっているだけではない。子どもと一緒にいると、大人も発見できるのだ。それはなぜだろう。

「おもしろいものがある」と信じられるからかもしれない。

一人で歩いているときは「おもしろいものなんてない」と決めつけてしまっている。その心持ちだと、「本当はあるかもしれないおもしろいもの」が、たぶん見えてこない。

しかし子どもといると、「世界はおもしろいものであふれている」ということをなぜか自然と信じられる。
これはすごいことだ。

「おもしろいものがある」と信じられる。大人になる途中にどこかへ置いてきてしまった気持ちに、はっと気づきました。子どもを見守り、導くのではなくて、こんな気持ちで子どもたちと関わりたい。いつか私にもやってくるかもしれない日々に、そっと思いを馳せました。

■「好き」を、進むためのヒントに。

ゆっこさんがご自身の就職活動を振り返ったときに思い出す、「子ども」「教育」という軸。もしもその「エリア」が決まっていなかったらきっと相当不安になっていただろう、と思考を巡らせていたとき、あるひとつの考え方に辿り着いたそうです。就職は確かに大切な節目だけれど、就職してから仕事を変えたっていいし、仕事を選ぶ基準は「好き」という気持ちで構わない。ぐっと背中を押されたように、前向きな気持ちになれるnoteです。

もしも今大学生だったら、書くことや編集することが好きだから出版業界を志すのではないか、というゆっこさん。10年前、実際に就職活動をしていたときには知らなかった「好き」に出会えているなんて、とっても素敵だなぁと思いながら記事を拝読しました。大切な節目のそばにあった、「子ども」「教育」という軸。それに並ぶ新しい軸はきっと、充実した日々の証だと思うのです。

そして、中でも魅力的だった文章がこちら。

自分の「好き」はとても心強い指針だ。それをたくさん持てていれば、広い海の中でひたすら漂流することなく、目的地を絞れるのではないだろうか。料理が好き、ゲームが好き、文章を書くのが好き。何でもいいと思う。そこから目的地へ向かえる航路が、少し見えてくるような気がする。

ただ「好き」。誰にも口出しされることのない、熱く燃えるシンプルな気持ちを、私もいつまでも持ち続けたいです。

■取り繕わず、正直であれ。

ある夏に行った、キャンプでのこと。豊かな自然に囲まれた宿泊場所の周りでは、都会では見られない珍しい昆虫がたくさん。ゆっこさんは虫取りに夢中になっている小学生の男の子6人組を見守っていたのですが、気が付くと迷子になってしまって……。

読みながらこちらまでどきどきが伝わってくるようでした。小学生の男の子6人を連れて、大人はただひとりだけ。最初に「迷った」と気づいたときの不安や焦りを想像して手に汗握ります。

自分が焦ると子どもも不安になる。迷ったことを打ち明けてもよいのか。逡巡したのち、ゆっこさんは子どもたちに「迷った」と伝え、こう告げました。

「ごめん!道を間違えたみたい…すぐには着かないかもしれない。みんな疲れてるのに、ほんとごめん!」

ブーイングを予想していたけれど、子どもたちは拍子抜けしてしまうほどゆっこさんのことを責めなかったそう。それどころか、焦るゆっこさんに声を掛けたり、歩き疲れた子を気遣ったり。

涙がこぼれおちそうになった。
迷子への不安と、子どもの優しさが合わさって。

想像して、心がきゅ、と締め付けられました。ぴんと張り詰めた気持ちに、そっと触れた子どもたちの優しさ。緊張している場面で優しさを感じると、いっぱいになったコップの表面はふるふると揺れてしまいますよね。

最後、ゆっこさんたちは本部の案内に従って、自然の家へと戻ることが出来ました。けれど戻ると約束した時間はオーバー。「時間は守ろうな」とリーダーから話をされても、誰もゆっこさんのことを悪く言う子はいなかったそう。

あれは、夏の思い出の一つになったんだろうか。 

きっと、大切な思い出になっていることでしょう。眩しい季節の、まるで旅のような記憶。ひと夏でぐんと成長したであろう男の子たちの真剣なまなざしを想像して、爽やかな読後感に包まれました。

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毎週末の「感想文の日」、感想文を書かせてくださる方を募集しています!(現在2021年1月9日以降の回を受け付けています)

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