まだ見ぬものを【感想文の日㉓】
こんばんは。折星かおりです。
第23回感想文の日、今夜感想文を書かせてくださったのは、仁品りくさんです。
小説『強めの闇の住人たち』を公開中の仁品さん。ジャンルは現代ファンタジーです。普段あまり読まないジャンルなので、新しい世界をちらりと覗くように、どきどき読ませていただきました。改めて、ご応募くださりありがとうございます!
それでは、ご紹介いたします。
■強めの闇の住人たち
お話の舞台は、首の部分に持つ星の数だけ人間や動物、魔物などと契約を結び、自分に従えることができるという特殊能力を持つ『星持ち』が住む世界。『星持ち』は、生まれたときには赤い髪の毛が歳をとると黒に変わり、女性は人や場所を自分のものにする『魅了』の能力、男性であれば飛び抜けた身体能力を持つようになるのですが、髪の色がずっと変わらない場合は人の世へと追放されてしまう慣例がありました。主人公の”私”は”ご主人様”の命令で、100歳の誕生日に追放される"ミラ様"について人の世に下ることになるのですが……。
1編ずつのボリュームはたっぷりありますが、次々登場するキャラクターやふんだんに織り込まれた会話を追いかけるように、スピーディーに読み進めることが出来ました。読みながら強く感じたのは、ファンタジーを書くことの難しさ。私も今までに何度か小説を書こうとしたことがありますが、どうしても自分が見たことがある景色や経験ばかりを描いてしまって、エッセイのようになってしまう、と少し悩んでいたんです。だから今回、「自分が経験していないこと」を描くファンタジーを書ける仁品さんはすごいなぁと思いながら、読ませていただきました。
お話の中で”ミラ様”が下ってきたのは日本。この世界にやってきたときに偶然目の当たりにした交通事故の被害者である”ハルヨ”とその息子である”タダモト”、警察官の”ユウナ”や”タツキ”たちと出会い、”ミラ様”は人の世での生活を始めます。そこから描かれていくのは、私たちの日常と何ら変わらない心のゆらぎや、親子の愛情。架空の世界から時折ちらりと覗くそれがほんのり温かく、心地よいのです。
「分かっていませんね。かわいそうなカノン。見送ったり一人でいたりしたら泣いてしまうからと、仕事を詰め込んで追放日を耐えたのに」
※カノンは”陛下”。『強めの闇の住人たち 3』より
中でもぐっときたのはこちら。自分の子どもである”ミラ様”が追放される日さえも仕事を入れてきちんと見送りをしなかった”陛下”の本当の気持ちです。”ミラ様”はずっと知らなかった”陛下”の心の内を、人の世へと下ってから知ったのです。
お話の後半では、”ミラ様”は人狼が営むパン屋の調査に乗り出します。終盤に向けて熱くなる戦いの様子はぜひ、こちらからご覧ください。
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