ひかり透き通る【感想文の日㉙】
こんばんは。折星かおりです。
第29回感想文の日、今夜感想文を書かせてくださったのはShihoさんです。
ものづくりのお仕事をされていて、「空が広く見える所」を求めて東京を離れて暮らしていらっしゃるShihoさん。好きなもの、お仕事のこと、ご自分の気持ちなど書かれているものは様々ですが、どの記事も柔らかく、澄んだ空気のような雰囲気に満ちているのが印象的でした。そしてホーム画面のハナミズキの写真、とっても素敵です……!Shihoさんの文章にぴったりだなぁと思いながらしばし見とれてしまいました。改めて、ご応募くださりありがとうございます!
それでは、ご紹介いたします。
■11~飽きることなく、生きる
屋根にのぼって夕暮れを見たり、遠くの空に浮かぶ雲を波や海に見立てたり。こどもの頃から空や雲を見るのが大好きだったというShihoさんは、大人になったいま、「最高のロケーション」のお家に住んでいるのだといいます。お家から見える、長く暮らしていても飽きることのない美しい景色が、写真を織り交ぜながら、きらきらと綴られています。
とにかく空や雲を見るのが大好きで
2階の自分の部屋の窓から屋根に登って
夕暮れを見ちゃうような、そんな子供だった。
こう始まるShihoさんの「雲好き」に、ぐっと心をつかまれました。夕焼けのオレンジがぱっと目の前に浮かぶような、ちょっぴり懐かしく、美しいシチュエーション。そして「雲を海や波に見立てること」、私もしていました……!私だけじゃなかったんだ、と同志を見つけたような気持ちです。ほんの少し目を眇めると、雲の輪郭がぼやけて空が海のように見えるんですよね。
キラキラ光る水面、白波の立つ日、カルセドニーの海。
きらきらと眩しい景色が、はっきりと脳裏に浮かびます。「カルセドニーの海」、とっても美しくて素敵です。
ここに住んで5年が過ぎ、そろそろこんなの、日常だろ?
と思いそうなところだが、そんなことはなく、
日々、「今日の雲はいいねぇ〜」とか
「今日は白波、立ってるねぇ~」とか言いながら、
飽きることなく、生きています。
もうすっかり手が届くものになった、理想の暮らし。それでも「飽きることのない」充実した様子に、読んでいるこちらの心まで満たされるようでした。
■死者に笑みを
何年か前、Shihoさんはある催しを通して、長野県飯山市にある正受庵の第十二世住職、寛道(かんどう)さんに出会いました。ぼろぼろの着物を身にまとう寛道さんの第一印象は強烈で「ものすごい説得力」に溢れていたそう。どこか無愛想にも感じられる寛道さんだったけれど、Shihoさんはひょんなことから彼のお財布を修理することになって……。
次は、Shihoさんのお仕事にも関わるお話をひとつ。
おばさまとお母さまから舞い込んだ「寛道さんに新しいお財布を」という依頼。ブランド物でないものなら使いやすいのでは、ということで白羽の矢が立ったそうなのですが、Shihoさんはここで「新しいお財布」と一緒に「お財布の修理」という方法を選び、寛道さんへ長い手紙を書きました。
初めてお会いした時にボロ着を着ていて、それでもその姿になんだかとても心打たれたこと、そんな私の感じた寛道さんなら、今回お財布の話を聞いたけれど、寛道さんはまだこのお財布を使いたいのでしょうということ、一応母にも叔母にも言われているので、私の製作した財布は送りますが、使っていただかなくていいと思っていること、母にそのまま返してくれればいいということ、、、
寛道さんは修理されたお財布をとても喜ばれたそうで、これをきっかけにShihoさんと寛道さんの交流が始まりました。お礼のお野菜が届いたり、クリスマスカードを送ったり。おばさまのお茶会にひょっこり現れた寛道さんが、Shihoさんだけに小さな紙袋を渡してくれることもありました。
なんだろう?と思って開けてみると綺麗にリボンが掛かった小さな箱に、チョコレートが入っていました。WITTAMERのチョコレート。
他の人のはない、私だけに、、、というプレゼントでした。
私の記憶では綺麗で上品なチョコが2種類入っていたと思うのですが、これを選んでくれた寛道さんや、そんなお店にまで出掛けてわざわざ購入してくれた「あの寛道さん」のことを思うと、なんだかとても特別な、温かい気持ちになって、本当に嬉しかったのです。
「あの寛道さん」が用意してくれた、特別なプレゼント。直接お会いしたことはないはずなのに、読んでいるこちらまで熱いものがこみ上げます。
寛道さんがこうしてくれるのは、きっとShihoさんのお財布が寛道さんにとっても「特別なプレゼント」だったことの証なのだろうな、と。
またね、寛道さん。
いつかちゃんとお話ししましょう。
「またね」と締めくくられる寛道さんとのお話。優しく、じんわりと温かな読後感に包まれました。
■Oberinと堀くん
ゲームは苦手だけれど、以前Oberin(オベリン)という多人数参加型オンラインゲームにはまっていた時期があったShihoさん。チャットで他の参加者とやりとりができるけれど、Shihoさんは基本ひとりで遊んでいることが多かったといいます。しかしある日「ほりっち」という友達が出来て……。
今回読ませていただいた記事の中で、個人的に一番ぐっときた作品でした。ゲームのお話でありながら、甘くて、それでいてちょっぴり切なくて。
小さな小人のような私たちの分身が森の中を歩く。大物の敵が出てくると、堀くんは「sol、大丈夫?」と聞いてくれて、ちょっと私が無理そうだと前に出て戦ってくれる。敵をやっつけると色んなアイテムが貰えるのだけれど、私にくれたりもする。小者の敵が出てくると、私も一緒に戦う。そして「(^^)」「(^^)」とお互いに笑う。 (※堀くん:ほりっち、sol:Shihoさん)
最後の一行がとっても素敵で、胸がきゅんとしてしまいます。日常生活でも誰かと目を合わせてにっこり微笑むのは、とても幸せなこと。けれどそれを文字にしても、こんなにも可愛らしく、幸せなんですね……!
実際に出会うことはなくても、お互いの記憶にはずっと残る優しい思い出。ゲームではないけれど、noteもきっとそんな出会いのある場所なんだよなぁ、と改めて考えました。
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