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世界はきらめく【感想文の日㊹】
こんばんは。折星かおりです。
第44回感想文の日、今夜感想を書かせてくださったのはみえるさんです。
今年の1月までと2月から先月までの2回にわたって「アナグラム歌会」を主催されていたみえるさん。参加された方の作品を丁寧にまとめ、作品集も編まれています。私も初回の歌会に参加させていただき、初めてのアナグラム詩に挑戦しました。今夜はそのご縁で、みえるさんの作品をご紹介させていただきたい、とお声がけさせていただいたのです。みえるさん、ご快諾くださりありがとうございます!
それでは、ご紹介いたします。
■詩:ハーブティー
流しの下の戸棚を開けると目に飛び込んできた、カラフルなハーブティーの箱とはちみつの瓶。その光景が呼び覚ましたのは、幼い頃のある思い出でした。日常のワンシーンから、幻想的な世界へ。ぱっと景色を切り替えるような鮮やかな言葉が素敵な作品です。
色とりどりの箱に
たくさんの草花が咲き乱れて
魔法の香りがする
冒頭でこう表現される、色とりどりのハーブティーの箱。実際に箱を目にしたわけではないけれど、エメラルドグリーンやビビッドなピンクのような、思わずうきうきしてしまう色合いが目に浮かびます。そしてその箱からふわりと漂う「魔法の香り」が開く、記憶の扉。幼い頃、屋根裏部屋のランプの下で本を読んでいたときも、みえるさんはある扉の前にいたようなのです。
月夜に揺れるカモミール
露にきらめくラズベリー
草木の絡み合って広がる
物語のはじまり
みえるさんが屋根裏部屋で探していたのは、いまここではない「もう一つの国の入り口」。どこまでも広がり、どこへでも行くことができる「物語」という世界の魅力をきらりと切り取る美しい言葉に、息をのみました。
■詩:三日月
「きいろ?」「しろかなぁ」「あお!」。お子さんと三日月を眺めながら語り合う、かけがえのないひととき。可愛らしいやりとりにじんと心が温まる、みえるさんならではの詩の育児日記です。
天にかかった 三日月をみて
「きいろ?」ときく
「しろかなぁ」「あお!」
「きんいろかなぁ」「きいろ!」
ほほえましい会話に、読んでいてつい頬が緩みます。確かに、月は何色なのでしょう?黄色のような、金色のような、白のような。大人になるにつれて絵を描くときにはつい黄色ばかりを使うようになってしまったけれど、本当はどの色も正解。お子さんが見つめる世界はきっと、私たちがどこかに置いてきてしまった驚きでいっぱいなのでしょう。
私だけのものだった世界に
いまは
子供と手をつないで立っている
いつのまに
私は宇宙の芯をあけわたしたのだろう
ひとりで見ていたはずの世界を、気づけばふたりの目で見つめている。お子さんが感じたであろう瑞々しい驚きよりも、静かで、それでいて誇りに満ちた驚きを感じます。私にはまだ子どもがいないけれど、いつかこんな喜びを味わう日が来るのかも、とちょっぴりわくわくしました。
■詩:詩とあるく
いろいろな種類があるけれど、ほとんど食べられないしお金にもならない「詩」を雑草に例えたこちらの詩。頼まれていなくても、取り除いてもしぶとく芽を出す詩の力強さが綴られています。
詩は雑草みたい
頼まれもしないのに生えてくる
お金にならない一方で
始末するにはお金がかかる
作品の最初では、詩はやっかいな存在として登場します。頼まれてもいないのに湧き出てくる様子、なかなかお金にならない様子は、まさに「書くこと」そのもの。けれどその魅力に一度取りつかれてしまうと、なかなか抜け出せないんですよね。
頼まれもしないところに
生えてくるところがいいんだよ
そこに力があるのだから
思いがけない場所で芽を出す
命の不思議があるのだから
ふとした瞬間に浮かぶ、書きたいこと。初めて出会う、目を瞠るほどに美しい言葉。ここで書いているひとならば、きっともう詩や言葉の魅力にどっぷりと浸かっているはず。するする言葉が湧き出る日も、うんうん悩んで文章を綴る日も、例え書くことから少し遠ざかってしまっても、これまでに育ててきた言葉はしっかりと根を張っていると、私は信じています。
詩は雑草みたいにしぶとい
取り除いても
ふとしたところに居座る
ノートのすみや包装紙のうら
水と
土と
光のある景色を
詩とあるく
こんなことを言うのはおこがましいけれど、ふとしたところに生える雑草に気づくみえるさんなら、きっとこれからも大丈夫。みえるさんが詩と歩く世界を、これからも、ゆっくり、楽しみにしています。
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毎週土曜日の「感想文の日」、感想を書かせてくださる方を大募集しています!(1~2日程度、記事の公開日を調整させていただく場合があります。現在、5/22以降の回を受け付けています)
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