![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/50907448/rectangle_large_type_2_6174d944cf80ec1b57769acf03a229d4.jpeg?width=1200)
育つよろこび【感想文の日㊻】
こんばんは。折星かおりです。
第46回目となる今夜、感想を書かせてくださったのは吉村伊織さんです。
現在、福岡県でカウンセラーや研修講師のお仕事をしていらっしゃる吉村さん。実は、吉村さんの記事の感想を書かせていただくのは今回が2回目になります。毎日途切れることなく積み重ねてこられた記事を読んでいると、お子さんの成長や「書く」ということに対する吉村さんの思いの変化がひしひしと伝わってくるようで、2回目ならではの楽しさを感じながら拝読しました。改めて、ご応募くださりありがとうございます!
今回は、前回(2020年9月20日)以降の記事から、3作品をご紹介いたします。
■「なにか」が文字になり、「文字」がことばになり、「ことば」が物語になる
記事の冒頭で紹介される、お子さんの「絵本記念日」。ひらがなを「文字」として認識し、それが「ことば」になった瞬間に立ち会うことが出来た喜びが綴られています。きっと自分も通ってきているはずなのに、もう思い出すことが出来ないあの気持ち。お子さんの気持ちを想像してうらやましさを感じつつ、吉村さんは「ことば」の力に思いを馳せます。
僕が何度も読んでいる絵本を
「う、た、を、う、た、・・・」
と、一文字ずつたどっているうちに、
次男の中で『文字』が『ことば』につながりました。
「うたを うたいながら!」
きらきらしたまなざしが目に浮かぶ、冒頭の記事がとっても素敵です。「なにか」が「ひらがな」であることを知って「文字」になる。「文字」を組み合わせると「ことば」になる。どれほど世界が鮮やかになるのでしょう。どれほどの喜びでしょう。自分もその瞬間を迎えているはずなのに、思いせないことが私もちょっぴり悔しいです。
けれど、今こうして読み書きしている「ことば」は、もう忘れてしまった「あの瞬間」から私たちが積み上げてきたもの。大切な思いを伝えるための手紙も、ため息がこぼれるほどに美しい小説の言葉も、ボールペンで走り書きしたメモだって、「なにか」から始まったのです。
「ことば」を使うと、「物語」を生み出せる。
その「なにか」の先の先にあるのは、とてつもなく、広く自由な世界。「ことば」を使ってその世界に挑む吉村さんを、応援しています。
■まっかな世界が見えたのは、誰のせい?
こちらの記事で描かれるのは、まだ小学校に上がる前のお子さんとのワンシーン。お子さんが茶色のガラス瓶越しに周囲の景色を見たときの言葉から、吉村さんが教えてもらったこととは……?瑞々しい感性と素直な言葉が光る作品です。
「わぁ、そとがみんなまっかになってる。おこってるみたい!」
「おこってるみたい!」という可愛らしい例えに、つい頬が緩みます。青い空も、緑の山も、見慣れた建物も、ガラスを一枚通すとまるで燃えているよう。
「あ、もとにもどった」
それでも、瓶を外すと世界はすぐに元通り。その様子を見た吉村さんは、「思い込みで物事を見ていないかい?」とお子さんに問いかけられたように感じたそうです。確かに「思い込み」という色眼鏡をかけていては、どれも同じ色、しかも本当とは違う様子に見えてしまうこともありますよね。
『どんな眼鏡で見るか、自分の好きなように選べばいいのに』
軽やかに、そして出来るだけ、世界がクリアに見える眼鏡をかけていたいものです。
■福岡―熊本間、片道25,000円物語
「-来たかもしれん。」16年前のある日、そわそわしていた吉村さんのもとへ、とうとう一通のメールが届きました。もう少しで生まれそうな我が子。しかしその間を隔てる、福岡―熊本という距離。バスも電車も最終便は終わっている。でも今から動けば……。吉村さんが「お父さん」になるまでの、どきどきがぎゅっと詰まった作品です。
思考はクリアだった。とても眠れそうにない。はじめての出産に立ち会えるのは、今だけ。逃したら後悔する。
吉村さんが普段書かれるやさしい文章とはまた異なる雰囲気を持つ、こちらの作品。淡々と、スピーディーに紡がれる文章から「はじめて」への緊張と期待がまっすぐに、鮮やかに伝わってきます。
出産のために里帰りをされていた奥さまのいる熊本まで、一刻でも早く移動することを決めた吉村さんは、タクシーをつかまえます。運転手さんに事情を話すと「熊本まで行くこともできるけれど、レンタカーの方がいいかもしれない」とのアドバイス。レンタカーのお店で計算をしてもらうと、運転手さんの言った通りレンタカーの方が少し安く、吉村さんはレンタカーで熊本へ向かうことを決めます。このときの運転手さんの言葉が、すごく素敵なんです。
「よかったですね。夜の運転は、昼間とは違うから、気を付けて。くれぐれも、安全運転ですよ。がんばってください、おとうさん。奥さんを、しっかり支えてあげてくださいね。」
落ち着かせ、寄り添い、鼓舞する言葉にぎゅっと心を掴まれました。吉村さんとご家族の「はじめて」を支えた出会い、みなさんもぜひ読んでみてくださいね。
***
毎週土曜日の「感想文の日」、感想を書かせてくださる方を募集しています!(1~2日程度、記事の公開日を調整させていただく場合があります。現在、5/29以降の回を受け付けています)
こちら↓のコメント欄より、お気軽にお声がけください。