湧く思いを言葉に【感想文の日㊱】
こんばんは。折星かおりです。
第36回感想文の日、今夜感想を書かせてくださったのはきみまるこさんです。
詩やエッセイを中心に、優しい語り口で文章を綴っていらっしゃるきみまるこさん。物語から哲学的なものまでその内容は幅広く、一週間の間さまざまな世界を見せていただいたような気持ちになりました。改めて、ご応募くださりありがとうございます!
それでは、ご紹介いたします。
■ジジとキキがやってきた
以前飼っていた猫の"シルバー"が亡くなったあと、一年半の「猫がいない時間」を越えてきみまるこさんのお家にやってきた二匹の子猫"慈慈(ジジ)"と"喜喜(キキ)"。ひょんなことから二匹を引き取ることになったいきさつや彼らの様子が、写真を交えながら紹介されています。
二匹との出会いは、きみまるこさんが通っていらっしゃった絵画教室の先生が見つけたFacebookの記事がきっかけでした。写真を見たきみまるこさんは、猫に一目惚れ。お見合いをすることになったのですが、少し不安な気持ちにもなったといいます。
お見合いまでの一週間、ドキドキした。
喪失の悲しみは新しい出会いに恐れをいだかせる。
また、今まで飼っていた猫達に申し訳ないような罪悪感も沸いた。
新たな出会いへのワクワクを上回る、「ドキドキ」。これまでに飼っていた猫たちへの気持ちを綴るきみまるこさんの言葉を読み、どの子もきっと等しく愛されていたのだろうなぁと想像しました。
そしてとうとう、お見合いが始まります。ずらりと並ぶ写真に写る二匹は本当に可愛らしく、わ、かわいい……!と声が漏れてしまいそう。もふもふとした小さな手で、ジジの背中にぎゅっとしがみつくキキがたまりません!
二匹をお家に迎えてからの五年間、決して良いことばかりではなかったといいます。トイレや毛の掃除をしたり、二匹が捕まえたカエルや蛇にぎょっとしたり……。生き物を飼うのは、やはりとても大変なこと。それでも、あの頃から変わらない気持ちがあるのもまた事実です。
1に、かわいい、
2に、かわいい
3,4がなくて
5は、愛おしい。
歳月が経ってもなお愛おしい存在が、そばにいる。何という幸せなのでしょう。静かで確かな愛情に、心がじんわりと温かくなりました。
■わがままに生きる
ネガティブなイメージで捉えられがちな「わがまま」という言葉。それでも「わがまま」に生きるのは「我がまま」に「自分を大切に」生きることだときみまるこさんは考えているそうです。自分で選んで、責任をとって、自分で自分の人生を大切に、楽しく生きる。シンプルな言葉が魅力的で、力強い作品です。
あるがままに 生きるよりも
今とは違う何かになろうとする方が
価値があるように思えるのは
何故だろう
まず、冒頭で出てきたこの問いにはっと立ち止まりました。本当はあるがままの自分を受け入れればよいはずなのに、気づけば違う世界を見つめている。自分自身を振り返ってみると、心当たりがあってひやりとしました。隣や上の世界を見るのはとても大事だけれど、そればかりでは見失ってしまうものがきっとあるはずです。
わがままに 生きることは
本気で
楽しく
今を 生きること。
「わがまま」は「自分を大切にすること」で、そのために「本気で楽しく今を生きる」ことが大切。心地よい力強さで背中をぽん、と押されたような前向きな読後感が素敵でした。
■言葉 は 虹 の 如く
自分自身の姿を映すときには「鏡」、気持ちが溢れ出したときには「涙」、そしてその涙が集まり、ありのままの私たちを照らす七色の「虹」を作る。そのときの気持ちや状況によって形を変える言葉の姿を瑞々しく例えた、美しい詩です。
まず、言葉のさまざまな姿の例えの美しさに息をのみました。自分自身の姿を映す磨き上げられた「鏡」は、明るいイメージでありながら、少し心がざわざわと波立つような不安も覚えるモチーフ。うまく表現できない気持ちは、溢れてこぼれてゆく「涙」に例えられています。
言葉に ならない コトバが 涙となって。。。
ぽろ
ぽろ
ぽ
ろ
。
。
。
一番最後の「ぽ」と「ろ」の改行に、胸を締め付けるような儚さを感じます。横書きのスタイルを存分に生かした、零れてゆく様子の表現がとっても素敵です。
その「涙」は集まって水たまりとなり、やがて大きな「虹」が空に架かります。その虹の根元は、あの「涙」の水たまりにありました。
涙が 落ちた みずたまり
虹 の 根っこが
そこに ある。
ありのままのあなたと私を優しく照らす「虹」は、表現できなかった思いの代わりに零れた「涙」があるからこそできるもの。美しいだけではない、優しく包み込まれるような世界にため息がこぼれました。
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毎週土曜日の「感想文の日」、感想を書かせてくださる方を大募集しています!(1~2日程度、記事の公開日を調整させていただく場合があります。現在、3/27以降の回を受け付けています)
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