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Netflix「ミステリと言う勿れ」

Netflixで話題になっている映画「ミステリと言うなかれ」を観ました。実は、私は原作のコミックを読んだことがなく、また、広島が舞台だという情報だけを知っている状態で観始めました。だからこそ、私の中にあったのはどんな物語が展開されるのだろうという期待と、少しの不安。それがどう作用するかは観終わってから初めてわかるものですが、今回は少し心が揺れ動くような体験になりました。

まず、主演の菅田将暉さん。彼は世間で絶大な人気を誇る俳優ですし、そのカリスマ性を認めないわけではありません。ただ、私は特別彼の大ファンというわけではなく、むしろ少し距離を置いて観ていました。それでも、この作品で彼が演じた主人公・久能整には確かに良かった。久能というキャラクターが持つ知性や洞察力が、菅田さんの演技を通して静かに伝わってきました。もじゃもじゃ頭とマフラーのビジュアルも良い。

けれども、同時に感じたのは、彼のキャラクターが私の中でしっかりとした存在感を放つには至らなかったことです。映画の中で彼が次々と謎を解いていくシーンは確かに見応えがありましたが、久能という人物が持つ魅力が強く伝わってきた気がしませんでした。もしかすると、これまでのシリーズを知らない私がその「深み」を感じ取れなかっただけかもしれませんが、それでももう少し彼の内面に触れるような場面があれば良かったのに、と思わずにはいられませんでした。

他の出演者たちは、それぞれ役柄をしっかりと演じていましたが、突出したパフォーマンスがあったかというと、少し物足りない印象でした。特に、私が大好きな鈴木保奈美さん。もっと綺麗でユーモアがあって存在感がある女優さんだと思っていますが、今回は彼女の役があまり目立たず、心に残るシーンも少なかったのが残念でした。鈴木さんの持つオーラがもっと引き出されていたら、映画全体の印象もまた違っていたかもしれません。

そして、映画の最大のポイントである謎解きについても少し戸惑いがありました。久能整が次々と論理的に謎を解き明かしていく過程は、とてもスリリングです。しかし、物語のクライマックスに至るまでの展開に、どこか「現実感」が欠けているように感じた瞬間がありました。最大の謎が明かされたとき、私は「本当にそんな風に物事が進むだろうか?」と、心の中で小さな違和感を抱いてしまいました。

そして、最後に出てきた「石のブレスレット」のシーン。あれは正直なところ、必要だったのでしょうか。松嶋菜々子も唐突だったし、物語において石がそんなに大事な役割を果たしているとは思えなかった。ラストがこの「まとめ」で良いのだろうか?と思えてしまったのです。こういうと、少し厳しい意見かもしれませんが、全体的に悪くはなかっただけに惜しい気がします。

それでも、この作品が持つ世界観や広島が少しだけれど登場したことで楽しく観ることができました。広島の魅力をもっとアピールしてほしかったし、とって付けたような宮島のシーンには違和感もありますが、まあこれも良いでしょう。USBメモリの隠し場所だけは、絶対に不自然だしあり得ない!とは思ったけれど。久能整が事件を追う過程で、次はどこが映るだろうか、と楽しみに場面展開を追うのは地元撮影の作品ならではの楽しみ方です。

この映画は、原作ファンやシリーズのファンにとっては特別な作品でしょうし、また菅田将暉さんのファンにとっても良い作品だったでしょう。ですが、私のように初めてこの作品に触れた人間にとっては、少し物足りない作品だったかもしれませんね。原作を知らないのでなんとも言えませんが。

でも、映画というのはそういうものかもしれません。一度観ただけで全てを理解できることもあれば、何度も繰り返し観ることで新たな発見がある作品もあります。また観る機会があるか分かりませんが、もう一度観れば発見もあるかもしれません。

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