見出し画像

クリムトが愛した風景

クリムトと言えば金箔を多用した華やかな画風が特徴的ですが、その一方で、クリムトにとって、心から愛した風景、人物は静謐なタッチで描かれていることが心に残ります。

アッター湖畔のカンマー城III ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館

アッター湖畔はクリムトがエミーリエと夏の休暇を過ごした場所で、多くの写真が残されています。
クリムトが描くアッター湖畔の風景は、その静謐で穏やかなタッチによって、(エミーリエと過ごした)夏が、かけがえのないものであったことを伝えてくれるよう。ウィーンから離れ過ごす夏の季節。クリムトとエミーリエはどんな会話を楽しんだのでしょうか。
もう一枚アッター湖畔

アッター湖畔(レオポルド美術館)

湖面の輝きがそのまま表現された、美しい青のグラデーション。
エミーリエと過ごす夏は、クリムトにとって眩しく煌めいたものだったのでしょうか。その輝きがそのまま閉じ込められているようで、この一枚はクリムトとエミーリエ、二人の秘められたアルバムを見ているような、なんともいえない甘美な、優しい気持ちにさせてくれます。
最後にこの一枚

ヘレーネクリムトの肖像(ベルン美術館)

1898年に描かれたこの肖像は、1892年に父エルンスト(クリムトの弟)を亡くしたヘレーネのポートレイトで、父を亡くしたヘレーネの健気で清らかな表情が描かれています。
父を失い真っ直ぐに生きようとする少女の真摯で凛とした表情が、印象的です。
ヘレーネ、クリムト、エミーリエ、大切な家族を失った3人が寄り添いながら、世紀末のウィーンを生き抜いたのでしょうか。
エミーリエは後にクリムトを失った後、ヘレーネと共に第二次世界大戦を乗り越えます。ヘレーネとエミーリエ、二人の真摯な眼差しがクリムトの心をとらえて離さなかったのでしょうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?