漁業の新時代へ:陸上養殖がもたらす地域活性化とグローバル展開
日本の漁業・養殖業は1984年をピークに生産量が減少し、2021年には最盛期の3分の1以下にまで落ち込んだ。乱獲や気候変動が水産資源の枯渇を招く中、革新的な養殖技術が注目されている。
近畿大学はブリとヒラマサの交雑種「ブリヒラ」にアセロラを含む飼料を与え、品質を向上させた「アセロラブリヒラ」を開発。鮮度や旨味を高めたこの魚は、回転寿司チェーンやスーパーでも高評価を得ている。
また、近畿大学は銀座のレストランで養殖魚を提供し、研究成果の普及に努めている。これらの技術は、日本の水産業の持続可能性を高める解決策として期待されている。
みそ汁の定番具材であるアオサが地球温暖化による水温上昇で危機に直面し、三重県の収穫量が20年前の3分の1に減少している。この問題に対応するため、味噌メーカー最大手のマルコメはアオサの陸上養殖に挑戦。
愛媛県に48基の大型水槽を備えた養殖施設を建設し、品質を重視した生産を目指している。この取り組みには、陸上養殖の第一人者である徳島文理大学の山本博文教授が協力。新技術により環境を人工管理し、安定的な生産を可能にした。
2024年夏には、養殖されたアオサが商品化され、即席味噌汁の具材として販売開始予定。今後、施設を拡大し、生産量を増加させる計画も進行中。この成功は、アオサに限らず他の海藻類にも応用が期待され、日本の食文化を守る重要な一歩となっている。
岡山理科大学の山本俊政准教授が開発した「好適環境水」は、海水魚を淡水で育てる技術で、日本の漁業に新たな可能性をもたらしています。
この技術は特殊な粉末を用い、海水魚と淡水魚を同じ水槽で育成可能にするもので、2005年以降、10種類以上の魚種の陸上養殖に成功。宮崎県都農町では、高級魚タマカイの養殖プロジェクトが進行中で、少子高齢化や漁業資源減少の課題解決が期待されています。さらにモンゴルでも養殖を成功させ、内陸国での魚生産を実現しました。
国内では、角町が「好適環境水」を使った養殖事業に投資し、地域特産品の開発や経済活性化を図っています。当初反発もありましたが、科学技術による持続可能な漁業の重要性が認識されつつあり、モンゴル出身の弟子が活躍するなど国際的な広がりも見せています。
この技術は、海のない地域や資源枯渇への対応策として注目されており、漁業の未来に向けた重要な一歩となっています。