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◇真の上司の器◇

お世話になった元上司が定年退職される。
もう別部署に異動されてから15年ほど経つのか。
私にとっては、仕事をする上での根幹を最も育てていただいた上司と言えるだろう。

とんでもない上司との出会い


私の配属されている理系部署に初の文系上司として異動して来られた頃、私はまだ3年目。
当時はちょうど先輩たちの退職がたて続き、私と同期は大した経験もないのに急に矢面に立たされ、全く余裕がない毎日だった。

日々飛んでくる矢を打ち返すことしかできない状態で、その上司も異動直後はガードしてくれるわけでもない(というかできなかったと思う)。
メンタルがどんどん削られていた私達は、その上司に対してもとんでもなく生意気で、とんでもなく冷たかった

しかし数か月経つと、全くの専門外からやってきた上司も業務を理解され、かつ法律についても相当な理解をされていた。

もちろん、そういう部署の長なんだから理解できるよう努力するのは当たり前ではあるのだが、わざわざ自分がやる必要のない検査業務に入ってみたり、煩雑な法令文書を遅くまで読んでいたりしていた。
私はそんな姿を間近で見て、そこに至るまでのあまりに大きい影の努力に気付いた。

この人はわからないことをわかったフリで終わらせない
それがたとえ「それぐらい知っていてよ」というようなことであったとしても「悪い、わからないから教えて欲しい」と相手に頼んで理解する。

偉そうに怒鳴っている他部署の上司たちに囲まれていた私は、正直驚いた。
この方がどれほど骨を折っているのか・・・私は心を入れ替えた。

この人を支えよう。

上司に教えてもらったこと


関東に異動した私は、しばらくして新工場の立ち上げに加わった。
これまでの工場とはまた違うしくみを取り入れた新工場で、品質管理を担当するにはまだまだ青二才だったと自分でも思う。

必死だった。
毎日バカみたいに残業、現場にもガンガン入りパートのおばさま達にも語り掛け、他部署の長とも折衝する。

件の上司は本社のある関西にいた。
それでも頻繁に出張してきてくれ、状況を把握してくれた。
一緒に夜勤に入って工場を見て回ることも何度かあった。

経験の浅い私が他部署とやりとりするのは相当しんどかった(と思う)。
なんで偉そうなオッサンに怒鳴られてまで頑張ってるんだろう・・・と
悔しい気持ちになった(と思う)。
実は今振り返ると記憶が飛んでいるところが多々あって、本当に私はひとり、野戦場に放り出されたような状態だった。

でも、関東では不安を見せられない立場でもあった。
恐らく私に余裕がなくなっていることを上司は察知したのだろう。
この時の言葉を鮮明に覚えている。

「お前の考えている方向はいつも正しい。だからお前の思うようにやれ。何かあったら俺がどうにかする。その替わり、報告は絶対に怠るな」

この言葉がどれほど私に力を与えてくれたか。


ついでにその時、1つ注意された。

「お前の言ってることは正しいがゆえに急に攻撃的なことがあるから、ちゃんと理解できるように相手の理解度を気にしながら話せ」

ここから私の折衝術を大きく変えたことが、今も生きていると思っている。


当時の関東工場の私の部下は数名。
上司は年次の考課の時、関東工場の状況とその数名の話は2~3時間私から聞くのだが、私への考課はほぼしてくれない(笑)
何点付けられたのかわからないまんま。
(それを今も文句言うと「嘘つけ!ちゃんと言うたわ!」と言うが、私の評価に時間を掛けてもらったことなどなかった。もういいんだけどさ(笑))


有志による送別会


ほんとに口も悪いしガラも悪い上司だった。
でも本気で人情味と男気溢れる方だった

だからこそ、有志で開催した送別会でも多岐にわたる部署の元部下たちが送別会に集まったのだろう。

最後に「いやだいやだ」と言っていたのに、私が花束を贈呈することになってしまった。
贈呈後、当時その方に対してとんでもない無礼を働いていた私の同期とふたり並んで、みんな見ている前で本気の謝罪をした。

「あの頃は生意気で本当にすみませんでした!!」
「こんな男気のある上司は他にいません!!」
「本当にありがとうございました!!」

みんなが拍手してくれた。
(ということは、周りもそう思ってたんだよね…💦)

それを聞いた元上司。
「俺も頑張ってただろ?」とニッコリ。
そして
「この言葉が一番嬉しいなぁ!」
と、花束を抱え、満面の笑みで言ってくださった。

果たして私は、生意気で仕事の本質なんてわかっていないような部下を、こんなに大きな心で受け止められるのだろうか。

「人を育てる」と言ってもいろんな方法がある。
しかし、真の上司は器のレベルが違うのだ。
自らの保身に走ることもできただろうに、この方は私の知る限り一度もそんなことをしなかった。
会社のため、部下のため、時には自分がバカになってでも正しい方へ導いてくれたと思う。

この方と同じ方法を取ることはできないし、どこまでも生意気な私はこの方に追随するつもりも毛頭ない。
でもこの方から教えてもらったこと、叩き込まれたことは絶対に忘れない

○○さん

とんでもなく大きな愛情を私達に注いでくださって、本当に本当にありがとうございました。
あなたに教えてもらったこと、今もできるだけ?実践しているつもりです。
そして、送別会の最後に私達に伝えてくださったこと、しっかり心に留めていきたいと思います。

くれぐれもお体にお気をつけて!!
どうせヒマでしょ?(笑)
たまにはごはんでも行きましょうね😊

口悪いのはもう慣れたんで、許します(笑)


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