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「女系天皇」が歴史上存在したという不都合な事実

皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承するーー男系男子にしか天皇の継承を認めないという皇室典範の第一条である。

自民党などの保守派が、永遠に認めようとしない女性天皇や女系天皇。その反対する論拠は乏しく、「歴史」のみに委ねている。しかし、その「歴史」もかなり怪しいのである。

女性天皇の存在

女性天皇は、その文字通り、女性の天皇を指し、歴史上存在していたことは明らかである。その数は126代とされる天皇の代のなかで、10代である。(もっとも、実在していたことが認められるのは21代以降である。)
聖徳太子が摂政となったことで有名な推古天皇や、百人一首にも収められる「春過ぎて夏来にけらし白妙の 衣干すてふ天の香具山」をよんだ持統天皇などは特に有名であろう。

この女性天皇について、この事実を否定する人はいないだろう。(このことからも、なぜ女性天皇を認めず、今上天皇の娘である愛子さまを次期天皇としないのかは判然としない。)

女系天皇とは

女性天皇を認めても、女系天皇を認めない、という人も少なくない。それは、「万世一系」とされる「皇統」は「男系」による継承であり、「女系」をいれると、「皇統」が崩れるから、ということらしい。そもそも「男系」でないと伝統的な血統である「皇統」が維持されないという理由がわからないが、とりあえずそこはおいておく。

まず、女系とはなにか。

厳密には、女子だけを通じた血族関係をいうが、広く、中間に一人でも女子の入った、男系でない血族関係を指して用いられることもある。女系の血族を女系親という。
※男系:家系において、男子の方のみを通してみる血縁の系統的関係。すなわち、血縁系の間に女子が入らない者相互の関係。皇室典範は、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」としており(一)、これが男系と女系を法律上区別している唯一の例である。
(有斐閣 法律用語辞典)
〔男系・女系〕
・ ここでは、天皇と男性のみで血統がつながる(-の部分)子孫を男系子孫という。
・ ここでは、これ以外のつながりの場合(=の部分)を女系という。
・ 男系女系を問わず女子の子孫は女系となる。
(平成17年7月26日(火)皇室典範に関する有識者会議)

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(平成17年7月26日(火)皇室典範に関する有識者会議)

女系天皇について語る際の「女系」は、「中間に一人でも女子の入った、男系でない血族関係」(有斐閣)、あるいは「男系女系を問わず女子の子孫」と定義付けられる。

女系天皇は歴史上、存在していた

それでは本題である。
男子の天皇と女子の天皇が夫婦であった場合、その子も上の定義からは、「女系」といえなくもないが、ここでは、父親が天皇である場合には男系ということにしておこう。

だが、それでも女系天皇の定義に合致する天皇がいる。それは、奈良時代に即位した元正天皇である。父親である草壁皇子は天皇ではなく、母親が元明天皇であり、元正天皇はこの母である元明天皇を継承している。
ここで、元正天皇の父親である草壁皇子は天武天皇(と持統天皇)の子であり、男系だ!と主張する人もいる。が、もう一度定義と平成17年の皇室典範に関する有識者会議の資料をみてみよう。

女系天皇は、「中間に一人でも女子の入った、男系でない血族関係」あるいは「男系女系を問わず女子の子孫」である。
わかりやすいのは、平成17年の内閣の有識者会議の図である。女系とは上の図の男子C、女子D、男子G、男子H、男子Iである。

これを元正天皇にあてはめる。
元明天皇は、天智天皇の娘であり、女子Aにあたる。そして、元明天皇の娘である元正天皇は、女子Dにあたる。
したがって、元正天皇は、平成17年の皇室典範に関する有識者会議における定義でも、女系天皇にあたるのである。そして、有斐閣の定義も基本的に同様だと解されるが、元正天皇の場合は、母・元明天皇から継承しているのであり、「中間に一人でも女子でも入った」といえよう。

以上から、女系天皇の存在は明らかである。もちろん、定義を歪ませれば何とでもいえる。だが、それは愛子さまが天皇になり、天皇にならなかった悠仁さま他皇族と結婚し、その子は男系である、と主張するのと変わらない、非常に理解しがたいものである。

女性/女系天皇を認めないのは、差別以外に理由はない

そもそも女性/女系天皇を認めないのは、明治以降、戦前までの家制度と同様、女性差別にほかならない。科学的にも女性/女系を否定する合理的な理由などあるはずもない。
史実がどうであろうと、女性/女系天皇を認めるのが、世界の時代の流れであると考えるが、まして歴史的に女系天皇がいた事実からして、もはや否定する理由は差別以外にないのである。

日本国憲法第一条は、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の 存する日本国民の総意に基く。」と規定する。
日本国の象徴、日本国民統合の象徴が男性に限られる理由はない。そして、主権者である国民は、男性に限ることを望んでいるのか。

皇室典範第一条「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」

日本国憲法が時代にそぐわないというならば、まずは明治期に定められた旧皇室典範の内容をそのまま引っ張ってきた時代錯誤の皇室典範を改正すべきであろう。

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