錯覚指導…感覚指導…鵜呑み指導… よくある指導者の間違い(水泳)
指導者の大半は自信を持って教えていると思う
だが…よくよく考えると
「それはないだろ」と思ってしまうことがある。
ある著名な競泳指導者に
「おまえ、才能のある選手ってどうやって見極めるか知ってるか?」
と、問われたことがある。
私が思うことをいくつか述べると最後まで聞かずに
「おまえ、アホやなぁ!浮くやつが才能あるんや!」
と、自信たっぷりに言われた。
大先輩なんで特に反論はしなかったが…
「この人、浮き方を指導できないんだ…」と
がっかりしたものだ。
インターハイ出場経験のある有名な競泳の強豪高校の選手だった子が、
「大学受験が終わったので大学で練習する前に泳ぎたいので見てもらえませんか?」と
訪ねてきたことがある
大学生活が始まるまでと極端に短い期間で、普段は断るケースなのだが
真摯な態度が気に入って指導させてもらうことにした。
とりあえず、一本
軽く得意種目を見せてもらい
私が
「普段はどんなアドバイスを貰っていたの?」と
尋ねると
「腰の位置が沈みがちなので注意するようにとよく言われました」
「どうすれば、腰の位置が浮くのか?ってのは教わった?」
「そこは感覚的なことなので自分で考えなさいと言われました」
「えっ?……具体的には習ってないの?」
「特には…」
………それは指導なのか?
800m自由型…女子選手の長距離種目と位置付けられているが…
レース直前はあまり細かい指示はしないようにしている
どのペースであれば最後まで同じスピードで泳ぎ切れる限界になるのか?を
意識して自然に選手が力を出せるようにざっくりとレースプランを
確認させる。
基本、リラックスしてのびのびと前半を泳げるようにアドバイスするのだが、
スタート直後から怒号を飛ばして選手に指示を出すコーチがいる…
「コーチと全く違いますね…」応援にきた選手が呟いた
「トップスピードコンテストではないからね…ゴールが速いのが大切なんだから」
「でもめっちゃ離されてますけど…」
「あげなくても勝手に落ちてくると思うよ、こっちは最後までスピード変わらないから」レース結果は案の定
件の怒号のコーチと選手は?…というと
選手は泣きじゃくり、コーチは、「根性がない!」とお怒りの様子…
正直、あのレースプランではそうなるよなぁ…
初心のクロール指導…
進級テスト結果を見ると
もう半年進級していないお子様がいる…
担当コーチに尋ねると
「息継ぎの時、手が下がるんですよ、何度も言ってるのに…
アホなんですよあれは無理…」とのこと…
内心、『この人正気か?』と思いつつ
「来月担当変わるよ」と伝えた。
翌月のレッスンではほとんど息継ぎの練習はせずに
姿勢改善の練習をしてテスト直前にちょっと補助を加えて息継ぎの練習…
簡単に合格できた。
レッスン内容にはクレームに近い保護者のご意見を頂いたが
テストを見て謝罪に来られた
実は、指導のポイントが間違っているせいで半年も上達していなかったのだが
見た目で評価すると息継ぎ時に手が下がるを注意するのは当然なので
素人には説得力があり指導の誤りを指摘する人がいなかったのだ
何故こんな間違いが発生するのか…
個人的な意見だが、
指導者が、自分の経験や感覚、誰かの知識など
あやふやなものに基づいて教えるから発生するのだと思う。
「浮きは才能」は、指導者が「浮く感覚や技術の成り立ち」を理解していないので
トレーニングで身につくということが理解できていない証拠
「オーバーペースで泳ぐことを強いて且つ、根性がない」は
代謝に関する知識が無い&根性というものについて誤った解釈をしているということ
「手が沈む」は、現象しか見ておらず原因と対策を理解していない証拠
指導者の多くは、
自分の経験から教える
それはある意味、「成功体験」「失敗体験」なので
自信満々で教えている
本当だろうか?
成功例のサンプルは自分1人だったりしないだろうか?
もしくは数名の教え子で、当てはまらなかった子供達のことは排除されていないだろうか?
私は、「そこにどんな物理法則が働いているのか?」を意識して自分の目の錯覚や
先輩の言葉を鵜呑みにするのではなく広く正しいとされる法則を
指導の根本に置くようにするべきだと考えている。
また、指導したことが出来るかどうか?は
正確にイメージできているかどうか?が重要でイメージと法則を正確に伝えるのが
指導者の役割だと考える
息継ぎで手が下がったのは
原因 腰が沈んだ泳ぎになっているため息継ぎ時に横を向くと
顔が上がらず呼吸ができないので水を抑えて無理矢理顔を水面の上に出そうとしていたため で
息継ぎのない練習で3~7かきを腰が沈まない姿勢で泳げるように修正し
息継ぎ時にもブレないように最終調整 テストに一月でなんとか間に合ったのだが
根本、腰の沈んだ泳ぎを作ったのも
その前の誤った指導のせい…
実は沢山そんな事例が潜んでいる
指導現場とは大体そんなものだ