見出し画像

[アトピー性皮膚炎]デュピクセント治療日誌

はじめに

この記事の筆者は、アトピー性皮膚炎の患者であり、医療関係者ではありません。正確な情報を記載するよう心がけていますが、デュピクセントを使用するかどうかはお医者さまとよく相談してください。決して安価な薬ではありません。わたしには効果がありましたが、すべての方に効果があるわけではないようです。

アトピー性皮膚炎発症〜一時寛解まで

アトピー性皮膚炎の発症は0歳。
小さい頃の写真を見ると顔がまっかっか。
自分の写真だとわかりつつもかわいそうになるレベルです。

子供の頃は、
ステロイド治療やら脱ステロイドやら民間療法やら、いろいろな治療方法をよくわからないまま受けていました。

大人になれば治るとも言われながら
期待していたものの完全には治らず、
20歳頃まで悪化と改善を繰り返していました。

その後、いつの間にか
保湿剤だけできれいな肌を維持できるようになっていました。

悪化

前職、約3年間通った会社時代、
仕事で疲れて毎日へとへとになって帰宅し
帰ったらごはん食べてお風呂はいって寝る
みたいな数年を過ごしていました。
そして10年以上ぶり?くらいにアトピー性皮膚炎が悪化。
円形脱毛症にもなりました。

改善しない

アトピー悪化、円形脱毛症発症、著しい体重の増加を経験し、それでも1年近くがんばって働いていましたが、別の理由で退職することになりました。

退職が決まったときは、
仕事やめたらアトピーも脱毛症も治るかも?
という淡い期待を抱いていました。
が、半年経ってもぜーんぜんよくならず。

近所の皮膚科で飲み薬と塗り薬をもらっていましたが、あまりにもよくならないし、病院に行っても皮膚の状態を見ることもなく
薬なにがいりますかー
と聞かれるだけという状態に絶望し、アレルギー科のある大きな病院に紹介状を書いてもらいました。

大学病院へ通院

2019年4月30日。
紹介状を書いてもらった大学病院へ。
初診時は、いろいろな書類を記入し、
まずは皮膚の状態を診てもらい、
病院内で迷子になりながら(笑)
血液検査をしました。

大病院って血液採取は
検査科みたいなところでまとめてやるのね!
っていうことを初めてしった。笑

その日は、
アトピー性皮膚炎についての説明
(初めて知ったことが多かった)と
デュピクセントっていう注射の治療法があるよ
という説明を受けました。(たしか。)

資料をもらって、帰宅してから調べてみると、まだ1年前に認可されたばかりの薬で、ちょうど2019年4月?から自宅での自己注射が可能になったとのこと。

デュピクセントは薬価が1本約8万円と高額ですが、幸い私は医療費補助を受けているため無料で受けられます。
この注射、やってみるかどうか検討し、次の受診時から試してみることにしました。

デュピクセントとは

デュピクセントは2018年4月に販売開始されたサノフィ株式会社の皮下注射薬で、一般名は「デュピルマブ」です。遺伝子組み換え技術によりチャイニーズハムスターの卵巣細胞を用いて製造されている生物由来製剤で、劇薬とされています。
ステロイド剤を使用した治療など、従来の治療法で効果が期待できないアトピー性皮膚炎と気管支喘息の患者に使用が検討されます。

基本的に初回は2本注射し、その後は2週間毎に1本注射します。指導を受けた上で、自宅での自己注射が可能です。

デュピクセントの作用機序は下の図をご覧ください。サノフィ株式会社のデュピクセントを使用する患者向けのサイトからお借りしています。

画像5

引用元: https://www.support-allergy.com/dupixent/pt_moa/

血液検査で見る項目

ここで、アトピー性皮膚炎の病態について、血液検査で見る項目を説明します。

1. IgE
IgEは免疫グロブリンの一種で、アレルゲンが体内に侵入するとマスト細胞と結合してヒスタミンなどが放出され、粘膜や皮膚に様々な症状を引き起こします。一般的に「IgE」と書かれている場合は総IgE値を指し、非特異的IgEともいいます。IgEの総量のことです。総IgEの数値が高いとアレルギーが起こりやすい状態であると言えます。
特定のアレルゲンに対するIgEは特異的IgEと呼ばれ、スギ花粉・卵・動物などの特定のアレルゲンに対するアレルギーの起こりやすさを示します。この数値のやっかいなところは、特異的IgE値が高く「陽性」と判定されても自覚症状がない場合があることでしょうか。あくまで「起こりやすさ」と考えるのがよさそうです。
IgEは、長期的な重傷度や病態を反映します。

2. 好酸球数

好酸球数は、末梢血液一般検査の白血球数と白血球分類の好酸球分画のパーセンテージから、末梢血液中の好酸球の絶対数を算出したものです。
※引用元: http://www.falco.co.jp/rinsyo/detail/060642.html

この数値が高いとかゆみが強い状態と言えるようです。
好酸球数は、短期的な重傷度や病態を反映します。

3. TARC
TARC(ターク)は「ケモカイン」と呼ばれるタンパク質の一種で、アレルギーの炎症を引き起こす細胞を刺激して症状を悪化させます。
TARC値を調べることで炎症の強さが明確になるとのこと。
TARCは、短期的な重症度や病態を反映します。重症になれば数値が上昇し、軽快すれば数値が減少します。

4. LDH

LDHは「乳酸脱水素酵素」といわれる、細胞内で糖がエネルギーに変わる時に働く酵素で、炎症(湿疹)が強く出ているときに細胞外に出てくるため、血液中のLDHが多くなります。炎症や湿疹の強さの度合いを測る数値であると言えます。
LDHは、短期的な重傷度や病態を反映します。

病態の経過

◆ デュピクセント注射 開始前 (2019年5月)
患部をちゃんと撮った写真がないのでわかりづらいですが、腕にぶつぶつと湿疹が出ています。これがほぼ全身に広がっていました。夜はかゆくてよく眠れない状態が続いていました。

画像1

◆ デュピクセント注射 開始 約1ヶ月後 (2019年6月)
でこぼこしていた腕の湿疹が少しよくなってきました。かゆみも少しずつおさまってきました。

画像2

◆ デュピクセント注射 開始 約3ヶ月後 (2019年8月)
湿疹がほとんどきれいになくなっています。この頃にはもうほとんどかゆみを感じないほどによくなっています。

画像4

◆ デュピクセント注射 投与中断 (2019年10月)
でこぼことした湿疹が見られなくなり、かゆみがほとんどなくなっていること、血液検査結果が改善していることから、先生の判断で投与を一旦中止することになりました。

◆ デュピクセント注射 投与中断 約2ヶ月後 (2019年11月)
ステロイド剤と保湿剤を使用していましたが、徐々にかゆみが増して、首回りを中心に湿疹が出てきました。

画像6

先生のお話によると、アトピー性皮膚炎の湿疹の状態には2種類あり、全体的にカサカサになる湿疹の場合は投与中止してもそのまま軽快状態が続くことが多いようですが、わたしのように点々とブツブツした湿疹が出るタイプの場合は投与中止すると、約3ヶ月かけて症状が再燃することが多いそうです。わたしの場合、投与中止約2ヶ月後に上の写真のように悪化しました。

◆ デュピクセント注射 投与再開 (2020年2月)
その後も改善の気配がなく、先生の判断でデュピクセント投与を再開することとなりました。

◆ デュピクセント注射 投与再開 約3ヶ月後 (2020年5月現在)
現在は2週間に一度の注射を続けています。ステロイド剤を使用することなく、ほとんど保湿のみできれいな皮膚の状態を維持しています。乾燥するとかゆみが出るので、ヘパリン類似物質油性クリームと白色ワセリンを併用して保湿に励んでいます。

画像7

湿疹がひどかったときに赤くなっていた箇所は、現在は皮膚が白くなっていますが、時間が経てば改善するそうです。

これはサブ効果でもあるようですが、脱毛症も改善して髪が生えてきました!短い毛がぴよぴよとたくさん伸びてきています。

次に投与を中止する際は、様子を見ながら徐々に投与間隔を空けていくようですが、しばらくはまだ治療が続きそうです。

血液検査の経過

スクリーンショット 2020-05-09 1.42.23

IgE値を見ると、悪化前には297だったのが、悪化後に数値が上がっているのがわかります。デュピクセントの投与開始後、下がってきています。

好酸球数・TARC・LDHは投与開始後、多少の波はありつつ徐々に下がってきていますが、投与中断後に上昇しました。

「中断2週後」となっている9/25はデュピクセント治療を続ける場合は投与するはずの週ですので、まだそこまで悪化していませんが、その後徐々に悪化していきます。

デュピクセント投与を開始した頃の状態に近くなった頃、投与を再開。その後すぐに数値がよくなっています。

皮膚の状態やかゆみの程度で見る経過と、血液検査の経過がほとんど一致しています。症状だけではなく、数値を見ることで安心して治療を受けることができます。

さいごに

最初にデュピクセントを注射してから約1年が経ちましたが、まだ治療途中です。医療費補助のおかげで治療を続けられることに感謝しかありません。
会社員時代、なんでこんなに・・・と思いながら払っていた健康保険料ですが、いまとなっては自分だけでなく日本中のみなさんが払ってくださる健康保険料のおかげで治療を受けることができています。かゆみに大きく煩わされることなく快適に生活できることがとてもありがたいです。ありがとうございます。

いまアトピー性皮膚炎や喘息で苦しまれている方が、少しでも快適に暮らせますように。

最後にもう一度お伝えしておきますが、私は医療関係者ではなく、いち患者であり、デュピクセントを使用して大きな効果を実感している一人です。デュピクセントが販売開始されてからまだ約2年。近所のクリニックでは扱っていない場合も少なくないと思いますので、大きな病院に相談されることをお勧めします。

お読みくださりありがとうございました。少しでも参考になれば幸いです。

生きづらさを抱えながらも何とか生きてきてやっと「元気に楽しく生きる!」という目標ができました。同じように生きづらさを抱えた人に届けられるよう、いただいたサポートは今後の活動に大切に使わせていただきます。