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右、左、右、左…どうしよう。横断歩道が渡れない。

目の前に、手の平よりも少し大きいくらいの石がある。

ひょい。

石の下に何があるのか
正直、さして興味はない。

『裏側を見ないとウズウズする病』
なのだ。

ドラクエで、洞窟を進む。
右側の道が正解だとわかると、
僕は引き返して左側へ向かう。
ボスを倒してからでは戻れないタイプのダンジョンかもしれない。左側に宝箱があるかもしれない。かもしれないを潰しておきたい。

あぁ、そうか。これはつまり
『確認してから先に進みたい病』
でもあるんだな。

信号の無い横断歩道。
右を見て 左を見て 右を見て
…いや、この瞬間に左に何か来たかもしれない。
左を見て 右を見て 左を見て
…どうしよう。永遠に渡れない。

木の吊り橋。
踏んで 辞めて 踏んで
…いや、次の1撃で壊れるかもしれない。
踏んで 辞めて 踏んで
…どうしよう。永遠に渡れない。

現実はゲームのように俯瞰にはなれない。
左右は同時に見られないし
落ちても再プレイはできない。

見えなくても、わからなくても、進む勇気
僕に必要なのは、そういう覚悟なんだな。


ファミレス。
僕は両手を膝に置き
ガラスのコップを見つめている。

「…何、してるの?」

「持ち上げないための訓練」

「???」

横断歩道を渡れる日は
あまり近くなさそうだ。

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