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デザイナーの 「好き!」を極める。「宇宙」と「地球」のくらしを繋ぐクリエイティブ開発


〜宇宙きぶん スペースシャンプーシート〜

特殊な環境で活動する宇宙飛行士のQOL向上のために生まれた「突起型ドライシャンプーシート」。JAXA認定の製品としてISS(国際宇宙ステーション)にも搭載され、若田宇宙飛行士も絶賛されました。この製品もっと広く「本当に価値が分かる人に届けたい!」 「ドキドキワクワクまで届けたい!」という熱い想いで宇宙好きのインハウス・クリエイティブメンバーが結集し、創り上げた〈宇宙きぶん MISSION〉秘話をご紹介します。


宮澤:「宇宙きぶん」を開発したのは、花王発のオープンイノベーション・プラットフォーム組織として2021年から活動する「ファンテック Lab&Biz(ラボ&ビズ)」です。ファンテックは、複数の部署を横断する組織体で、花王の研究や技術を活かして、大量生産では見のがされてしまいがちな小さなニーズに応えるモノづくりを目指しています。通常の製品は、多くの検証項目をクリアしながら長い時間をかけて完成させていきますが、ファンテックの場合は、コンパクトなチームでスピーディに作り上げていきます。商品は小ロット生産でECでの数量限定販売となっていて、発売後の商品の反響や市場価値等を多角的に分析しながら、更なる商品づくりに活かしていきます。私は、ファンテックプロジェクトでは “やりたい!” と手を挙げたメンバーを積極的にアサインし、メンバーが思いっきりクリエイティビティを発揮できるよう、制作状況全体を俯瞰で見ながら、ここぞという時に客観的にアドバイスする立場で関わるようにしています。

鈴木:それで今回、宮澤さんにアサインされたのが私です。実は昔から宇宙が大好きで、宇宙にいつも夢とロマンを感じていて、いつか仕事で宇宙に関わりたい!と思っていました。職場で「宇宙が好き!好き!」と騒いでいたところ、このプロジェクトの話が耳に入ったので宮澤さんに会いにいって、「ぜひやらせてください!!!」とお願いしたんです。夢を叶えることができました(笑)。

宮澤:ファンテックは関わる人の思いが強ければ強いほど良いものができると思っているので、手を挙げたもの勝ちです。即決でしたね!(笑)。


宇宙仕様のシャンプーを部屋でも使いたくなるデザインに

鈴木:「宇宙きぶん」は、コミュニケーション作成部、ファンテック事業部、開発担当のメンバーと一緒に開発しました。私は宮澤さんからデザインを任されて、「まずは自分自身が納得して、作りたいものを!」と解き放ってもらったので本当に思い切り突っ走ることができました(笑)。まずコミュニケーション担当のメンバーと先行してデザインやコピー、ストーリーの方向性を思いつくかぎりアウトプットして、周りのメンバーを巻き込みながら決め込んでいった感じです。いわゆる〈宇宙モノ〉は、世の中にたくさんあります。それらをフラットに並べて比較しながら、アイデアや表現の新規性、独自性、また理屈抜きに「ワクワク」するか?を確認し合いながら進めていきました。

宇宙ファンに刺さるビジュアルは何かを探すプロセスでは、写真やグラフィックなど色々試しましたが、ECでの販売なので世界中の宇宙ファンを意識して、最終的には世界に認められている日本アニメーションを核にした表現に落とし込む事にしました。宇宙の想像をかき立てるキャラクターや場面設定を考えて、イラストレーターさんに伝え、宇宙服や部屋着にはファンテックのアポロオレンジを効果的に使うことで、統一感のある世界観を描き出しました。

今ふり返ると宮澤さんは、基本的には私たちを見守るスタンスでしたが、あるとき、「宇宙と地球をつなげてみようか」とポロッと言われたことがあったんです。その瞬間、地球から見た宇宙と、宇宙から見た地球のイメージが立ち上がって、一気にストーリーが展開していきましたね。「宇宙からお部屋まで」の具体的なシーンが生まれて、箱の構造にもつながりました。

私が面白いと思ったのは、この商品を買ってくださった方々が、それぞれのシーンの想像をさらにかき立ててくださったことです。「体調を崩してお風呂に入れないときに使いました」とか、「山登りで一泊するのに使いました」といった、私たちの想像をはるかに超えるシーンで使ってくださった声を知ると、私たちのデザインやコンセプトに共鳴してくださったように感じます。


自分の好きに出会いながら楽しく作る

宮澤:ファンテックプロジェクトでは、デザイナーには自分の「好き」をもっと前面に出していいし、もっとマニアックでいいと伝えています。マニアックな表現を昇華することで、普段の仕事では出せないキラッと光るクリエイティブの力が出ると思うからです。デザイナーにとってもファンテックは新しい表現の探索や発見があるプロジェクトです。

鈴木:今回はコンセプトをゼロから考えて、コラボレーションでつくり上げるという特別な体験ができました。集まったメンバーはアイデアに対して常に「NO」ではなく「YES」なんです。肯定しつつ一番いいものを絞っていって、精緻化していくというやり方で、可能性を広げ合うことができたと実感しています。この会社にいると、私の好きなものや得意なことがどんどんわかっていくんですが、ファンテックは特にその「好き」を伸ばしてくれたプロジェクトでした。