文学トリマー【毎週ショートショートnote】
月に一度のラブちゃんのトリミングの日、待ち時間に併設のカフェで犬友のみなさんと会って、おしゃべりするのが私の楽しみだ。
「今日は新人トリマーの芥川くんが担当なの。オーナーの親戚で作家なんだって?」
私が言うと、北山さんは顔を曇らせた。
「あいつ先月、急にいい文章を思いついたからって、うちのコロちゃんを放っておいて書き始めたのよ!ひどいわ~」
「うちも!」南さんも話に入ってきた。「シャンプーの途中に!きなこが風邪をひいたらどうするのよ!」
えーっ、ラブちゃん大丈夫かな・・・心配になった。
そのうちトリミング終了の連絡が入り、急いでラブちゃんを迎えに行く。
可愛く整っている。
ラブちゃんは無事だったので、安心してレジに向かったら、芥川くんが一冊の本を差し出した。
「僕の本もお付けしますね!」
あらサービスかしら、と思ったが甘かった。
レシートにはいつもと違う明細があった。
書籍代2000円
ちょっと!頼んでないわよ~!
(407字)
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急に思いついてしまった!今書かなきゃ!という雰囲気。
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